ビューティ

デパートで「ダイソー」コスメ異例の完売 企画担当者に聞く“いい意味で100均に見えない”モノづくり

100円均一ショップ「ダイソー(DAISO)」のコスメが盛り上がりを見せている。ビューティブランドが軒並み値上げを図る昨今、ワンコイン価格でコスメが手に入るとあれば、注目度が高まるのも必然だ。アフターコロナの中でマスクを外す人が増加したことも相まって、売り上げが大幅に伸びている。特に韓国風コスメブランド「コーウ(COOU)」は今年2月の発売開始から欠品が続き、一時は「売っているところを見たことがない」と嘆く声がSNSにあふれた。商品開発の旗振り役は、コスメ部門の企画責任者であるチーフバイヤーに、2021年12月に就任した小林 奈穂氏(32)だ。

「ダイソー」きってのヒットメーカー

小林氏は大創産業に新卒入社後、「ダイソー」の店舗配属を経てキッチン用品やキャンプ用品のバイヤーを歴任。“ちょこっとまな板”や“メスティン”(※キャンプグッズの一つ。アルミ製の飯ごう)などの人気商品を次々と企画・開発し、社長賞や「グッドデザイン賞」を多数受賞した社内きってのヒットメーカーだ。現在担当するコスメ部門でも1400以上のSKUを1人で担当し、そのすべてに目を通すという徹底ぶり。自他ともに認める“コスメオタク”なのかと思いきや、小林氏は「コスメは人並みに好き」と控えめ。コスメバイヤーになって初めて使用するアイテムも多かったため、日々自分自身で試し学びを新商品の開発に生かしているという。

100均コスメの勝ち筋

「消費者目線」と「売価に対する価値」を常に意識するという小林氏。彼女が企画したコスメは、どれもいい意味で100円には見えない。例えば、冒頭に挙げた韓国風コスメブランド「コーウ」のアイシャドウ(200円)には11種類もの色が入っているし、クッションファンデ(300円)にはパフだけでなく鏡も付いている。容器デザインやブランドの書体を洗練させたり、そもそもプチプラコスメでは入手しづらい大粒のラメパレットやクッションファンデを商品化させたりした。その結果、「コーウ」は1ヶ月分がわずか1週間で売り切れるほどの人気商品となった。「ダイソー」が2月にテナントに入った東武百貨店池袋店では、オープン日に商品を探すため走って店を訪れた客が続出したという。百貨店で100均コスメが完売する異例の事態だった。

「ダイソー」コスメ購入者の属性は多種多様だ。試しやすい価格から、コスメ初心者のエントリーアイテムになりやすい。「100均なら買ってみよう」「失敗しても100円なら許せる」という心理が働く。 “ついで買い”も発生しやすい。日用品を購入する目的で来店した客が、コスメ売り場へ足を伸ばすケースも多い。それゆえ、安価なコスメを求める若年層以上に、実は「ダイソー」のメイン顧客である30〜40代の女性との親和性が高い。最近では男性客も散見され、その理由について小林氏は「百貨店やバラエティーショップよりもハードルが低いのではないか」と推測する。

ユーザーのメイクに関する知識やスキルも千差万別。初心者でも使いやすいようにと、商品の使用方法をパッケージに記載している。ドラッグストアやバラエティーショップのようなテスター設置をせず、百貨店のようなビューティアドバイザーを店頭に配置しない。そのため、アイメイクのグラデーションやハイライトを使った陰影メイクの作り方などを、いかにわかりやすく説明できるかがキモになる。

一方、課題はベースメイクや基礎化粧品をどう売るか。目元や口元周りのポイントメイクには顧客の抵抗感が少ない一方で、より広い肌面積に塗布するアイテムは「100円だから大丈夫なのか?」と品質面で不安を抱かれやすい。小林氏は、「プチプラだからといって、商品の使用感や処方を犠牲にすることはない」と話す。コストカットは梱包資材などの工夫が大きい。パッケージを紙製にしたり説明書きをモノクロ印字にしたりすることで価格を抑える。「ダイソー」は物流も自社でまかなっており、そこで浮いたコストをさらに価格に還元できる。加えて同社は、基本的にはPB商品の協業先は非公開だが、コスメ商品だけは唯一メーカー名を開示し、透明性を強調する。「多くの人に使っていただくために、お客さまの抵抗感をなくしたい」。

小林氏の夢は、フルメイク可能な品揃えのブランドを「ダイソー」に並べること。種まきは少しずつ花開き、今や“ダイソーコスメ”のハッシュタグがSNSに誕生するまでとなった。「私の新作を待ってくれる人がいる」と大きなやりがいを感じている。

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