ファッション

ほぼ誰も知らないスウェーデン発の新ブランドを発掘 若手クリエイターを後押しするイベントで

 スウェーディッシュ・ファッション・カウンシル(Swedish Fashion Coucil)は、スウェーデン・ストックホルムで、「ストックホルム・エクスペリエンス(Stockholm [X]perience)」と題したイベントを11月9〜10日に開催した。同イベントは、2019年まではストックホルム・ファッション・ウィーク(Stockholm Fashion Week)として実施していたイベントをリニューアルしたもので、名前や内容を刷新し、次世代を担うスウェーデンのクリエイターたちに焦点を当てる。

 イベントは、ファッションを含む文化的な体験の提供を目的とし、2日間のプログラムではボルボ(Volvo)傘下の高性能車開発メーカー、ポールスター(Polestar)によるパネルディスカッションや、ミュージシャンのモナ・マスルール(Mona Masrour)のライブをスウェーデン最古のシアターで行った。日本のビオトープ(BIOTOP)やドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)で取り扱われているジュエリーブランド「オール ブルース(ALL BLUES)」は、ストックホルムの若者の間で人気のクライミングジムにゲストを招待した。フレグランスやレザーグッズを扱う「バイレード(BYREDO)」は、ノーディスカ・コンパニー百貨店(Nordiska Kompaniet)で開催中のポップアップで朝食会を開くなど、ユニークなプログラムが目白押しだった。

 ゲストは、各国の「ヴォーグ(VOGUE)」「エル(ELLE)」のライターに加え、「フェイス(The Face)」や「システム(System)」といったカルチャー誌の欧米のプレスを中心に、約50人が参加。スウェーディッシュ・ファッション・カウンシルのジェニー・ロゼン(Jennie Rosen)CEOは、「傑出した革新力や、持続可能性への幅広い知識、卓越した創造性がスウェーデンの強み」とし、「ファッションの世界でスウェーデンの地位を高めていきたい」と話した。同イベントは今後、年に2回開催予定。充実した内容と体験型イベントへの参加者の反応が良く、欧州のファッション祭典の一つとして成長する可能性を感じた。現地で出合った魅力的なフレグランスとファッションのブランドも、そう考えた理由の一つである。

自国の文化を香りで表現
UNIFROM

 ハイサム・ムハンマド(Haisam Mohammed)が2020年に創設した「ユニフロム(UNIFROM)」は、アルコール不使用のオイルベースのフレグランスを提案する。ムハンマドは、東アフリカにルーツを持つスウェーデン生まれの移民。スウェーデンは欧州の中でも移民・難民を多く受け入れてきたため、全人口の2割が外国生まれで、多様性に富んだ自国の文化的側面をフレグランスで表現する。「高層マンションの階段の吹き抜けで、ブランドのコンセプトが生まれた。そこには国際色豊かなスパイスやお香、個人の感情に結びついた各家庭特有の香りが混ざり合い、多様性をたたえるスウェーデンのアイデンティティーを感じた」とムハンマドは回想した。

 フランス・グラース製の香りのバリエーションは5種類。グリーンバニラとサフランや、スエードレザーの香りを調合したブリス(Bliss)、イチジクとココナッツにサンダルウッドを加えた爽やかな甘い芳香のカシス(Cassis)、リンゴとサンダルウッドにシーシャのスモークを調合して夏の日没をイメージしたマグリブ(Maghrib)、ルバーブとイランイランにわらと没薬を混ぜたエキゾチックなリンボ(Limbo)、マテと四川胡椒とシナモンといったスパイスをブレンドをしたダウン(Dawn)のフレングランスオイルの他に、お香とキャンドルといったホームフレグランスもそろえる。イベントでは、フレグランスの香りにインスパイアされた料理をゲストに提供した。

デビュー1年の新鋭デザイナー
HODAKOVA

 イベントでフレグランスのローンチイベントを行ったのが、21年10月デビューのファッションブランド「ホダコヴァ(HODAKOVA)」だ。デザイナーのエレン・ホダコヴァ・ラーソン(Ellen Hodakova Larsson)は、スウェーデン繊維学校(The Swedish School of Textiles)を19年に卒業後、22年春夏シーズンにファーストコレクションを発表した。繊維廃棄物と古着を使ったアップサイクルのブランドで、コンセプトは“伝統を再考する”こと。

 会場には、彼女の卒業作品であり、ファーストシーズンから作り続けている、レザーベルトを編んだバッグやドレス、使い古された腕時計やブラジャーをつなぎ合わせたドレスなどを展示し、紙で作ったウエアをまとったダンサーのパフォーマンスも披露した。脱構築的な手法を用いたハンドクラフト感のあるアヴァンギャルドな雰囲気で、スーツジャケットやスカート、ニットのカーディガンなど、ひねりを利かせたクラシックなアイテムで構成。コマーシャルピースは品質が良く、完成度も高かった。価格帯は、ツイストしたTシャツで約3万8000円、スーツジャケットで約16万5000円で、ロンドンのセルフリッジ百貨店(Selfridge)とラグジュアリーECのエッセンス(SSENSE)で取り扱われている。

“体を美しく飾る”手作り服
JADE CROPPER

 「ホダコヴァ」と同じく、Z世代のデザイナーであるジェード・クロッパー(Jade Cropper)は、ギャラリーでプレゼンテーションを行った。クロッパーはベックマンズ・カレッジ・オブ・デザイン(Beckman’s College of Design)を卒業した20年に、自身の名を冠したブランドを立ち上げた。既存の生産方法からの脱却を掲げ、スウェーデン国内で回収した廃棄布と古着を使い、ストックホルムにあるアトリエにてハンドメイドで洋服を制作している。強みは、エレガントなクチュールピースとストリートのエネルギーによって生まれる、独創的な世界観。ドレープやバイアスカットの手法で、“体を美しく飾るウエア”をコンセプトとし、フェミニニティを大胆に表現する強い女性像を描く。

 デビュー当初は受注生産のDtoCビジネスモデルに取り組み、昨シーズンからホールセールを開始した。価格帯はメッシュのトップスが約5万円で、カットアットを施したミニドレスが約9万円。現在はラグジュアリーECのファーフェッチ(Farfetch)のみで販売しており、自社ECを間もなく開設予定だ。Y2Kスタイルの同世代のブランドとの差別化は今後の課題だが、注目すべきストックホルム発ブランドの一つである。

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