スウェーデンのH&Mヘネス・アンド・マウリッツ創業家一族による非営利財団、H&Mファウンデーションが、第6回「グローバル・チェンジ・アワード」の5組の受賞者を発表した。同アワードは「ファッションを地球によい影響を与えるものに変革する」ことを目的に、“ファッションのノーベル賞”を目指して同財団が2015年にスタート。第4回では、廃棄のないパターンメーキングなどに取り組む川崎和也主宰のシンフラックスも受賞している。
今回受賞したのは、英国の「BioPuff by saltyco」(農地化された土地を修復すると共に、水鳥の羽根のダウンに代わる植物素材を生産)、スウェーデンの「BIORESTORE」(古着や使用済み衣類を新品に近しく洗いあげる洗濯のソリューション)、インドの「CottonAce by Wadhwani AI」(小規模綿農家に向けに開発した、AIを活用した農薬削減とそれによる支出抑制のプログラム)、中国の「Re:elastan」(ポリウレタンとポリエステルの混紡繊維をリサイクル可能にする技術)、米国の「Rubi」(温室効果ガスを原料とするレーヨンとリヨセルの生産)の5組。
【受賞者のプレゼンテーションから】
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英国「BioPuff by saltyco」
泥炭地や湿地が大量に農地転用されたことで、湿地に吸収されるはずだった温室効果ガスが放出されていることに注目し、環境再生型農法で土地を修復。修復のために植えた植物を由来とした中綿素材を作ることで、水鳥の羽根のダウンの代替とする
スウェーデン「BIORESTORE」
古着や使用済み衣類を新品に近しく復元する洗濯ソリューション。酵素とミネラルを配合した洗剤が水とセルロース繊維に反応し、生化学的なプロセスで繊維の毛羽立ちなどを抑える
インド「CottonAce by Wadhwani AI」
インドの小規模綿農家に向けてアプリを開発。アプリに害虫の写真をアップすると、AIが画像を解析し、農薬をいつ、どれだけ使うのが最適かを指示する。それにより過剰な農薬使用を抑えるとともに、農家の支出削減につなげる。実証実験では農薬の使用量を約25%削減できたという
中国「Re:elastan」
ポリエステルとポリウレタンの混紡繊維のうち、ポリエステルだけを水を使わない低刺激の化学処理で分解し回収。ポリウレタンは糸状のまま残すことで、両素材ともにリサイクル可能とする
米国「Rubi」
温暖化を引き起こす大気中の炭素を生体触媒を用いて安定化させ、木材パルプからレーヨンやリヨセルなどを作る際の原料と同じ、ポリマーに変える技術
5組には賞金100万ユーロ(約1億3500万円)が分配されるほか、H&Mファウンデーション、アクセンチュア、スウェーデン王立工科大学、ミルズファブリカ(the Mills Fabrica、香港の素材メーカーを母体とするサステナビリティ関連のイノベーションカンパニー)などによる1年間のメンタープログラムが提供される。
受賞アイデアが業界全体のイノベーションにつながることを目指し、H&Mファウンデーションは受賞アイデアに対し知的財産権などは一切保有しない。受賞者はH&M以外も含め、さまざまなブランドや企業とパートナーシップを組むことが可能となっている。