ファッション

アダストリアが自社健保設立へ意思固める 現加入健保は脱退申し入れを過去3度否決

 アダストリアは、加入する東京ニットファッション健康保険組合(宮入正英理事長、KF健保)を脱退して自社健保の設立に動こうとしたものの、2017年からこれまでに3度否決され、折り合いがつかないことから対抗手段も視野に入れる。KF健保は東京の卸問屋や卸製造業などの中小企業が中心となって設立されたが、2000年以降は全国に店舗網を広げる大手アパレル小売業なども加わったため、福利厚生サービスが組合企業のニーズと合わない場面も出ていた。アダストリアの福田三千男会長兼社長は、アパレル業界が人材確保の問題に直面する中、「保険料を収める(当社の)一人一人に寄り添うものになっているのか」と現状に疑問を示し、自社健保設立の意思を固める。自社健保設立の動機は、KF健保とアダストリアが求める健康保険の充実との相違にある。アダストリアはアパレル小売業の特性として従業員の平均年齢が若く、女性比率も高く、単身者が多いため扶養率は低い。そのため年間医療費が他の企業に比べて抑えられている。自社健保の方が保険料率を抑制でき、従業員の負担は軽くなると同社は試算する。出産時などの保険給付金も自社健保の方が手厚くできると主張する。加えて福田会長が特に問題視するのは、契約健診機関の少なさだ。「当社は健康診断の受診率が50%を切ってしまった。KF健保の契約健診機関(638カ所)は、地方の店舗で働く従業員が利用しやすい場所にあるとは限らない。自社健保の設立で契約健診機関を3000カ所に拡大して、従業員の受診率を高めたい」。同社で働く200人以上の障害者が利用できる福利厚生サービスも厚くしたいという。

 アダストリアの件についてKF健保は「取材には応じられない」としている。だが、この問題を最初に報道した「ダイヤモンドオンライン」(1月21日)について、KF健保加入企業に向けたコメントを同28日に出した。「記事内容は衣料品卸問屋と大手アパレル会社の対立構造といった一方的な内容となっておりますが、当健保組合においてそのような事実(対立)はありません。また、当健康保険組合の加入事業所である株式会社アダストリアから単一健保組合設立に向けた脱退申し出があったことは事実ですが、この申し出については既に2020年2月20日に開催された組合会において議決が行われ、脱退は認められないという結論となっています」と報告している。

 アダストリアは17年以降の3度にわたってKF健保に脱退の申し入れを行ったが、否決された。

 KF健保は中小企業から大手上場企業まで500社以上が加盟する。加入者約8万6000人のうち、アダストリアの従業員が約1割を占め、年間27億円の保険料を納めている。

 アダストリアが訴えるミスマッチは、全国に店舗網を持つファッション小売業にほぼ共通する。パルグループホールディングス(HD)は長年加入していた大阪ニット健康保険組合を脱退し、18年10月に自社健保を設立した。加入者約5000人のパルグループHDは、大阪ニット健保の最大の企業だった。

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