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「無印良品」の“われしいたけ精神” エディターズレター(2020年11月25日配信分)

※この記事は2020年11月25日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「無印良品」の“われしいたけ精神”

 WWDジャパン11月9日号の「無印良品特集」を担当しました。あらためて「無印良品」の40年の歴史を振り返ると、サステナビリティが叫ばれるようになるずっと前からさまざまな取り組みをしてきたことが分かります。特に食品にその傾向が顕著です。1980年12月の第1弾商品として発売した「われしいたけ」は、無印の思想を象徴したような商品といえます。

 当時、干し椎茸は日常使いする人が減っていました。理由の一つが高い価格でした。均一な大きさの干し椎茸をパッケージするのが当たり前だったのを、「無印良品」では形や見栄えにこだわらず、不ぞろいなものや割れたものを弾く選別工程をやめることで買いやすい価格を実現しました。欠けていようが、不ぞろいだろうが、味に変わりはない。食品ロス(廃棄)を減らして買いやすい価格を実現する。そんな合理的な考えが消費者の支持を得ます。

 このロスを減らす考えは脈々と受け継がれています。

 いま定番商品になっている「不揃いバウム」(バウムクーヘン)も、見た目がイマイチという理由で弾かれてきた焼きムラや凹凸、変形した部分も使っています。不ぞろいを採用したことでスティック状の食べ切りサイズにし、価格も150円(税込)に抑えています。

 フリーズドライにしたイチゴをチョコレートで包んだ「不揃いチョコがけイチゴ」も同様です。名前の通りイチゴの粒の大きさがバラバラ。一般的な菓子メーカーだったらやはり均一にするでしょう。

 「無印良品」を運営する良品計画は近年、農業分野へ関心を強めており、店舗の近隣で採れた野菜を販売したり、農家との協業を模索したりしています。金井政明会長は弊紙のインタビューで、農家から規格外の野菜や作りすぎてしまった野菜を買い取って加工食品や冷凍食品に使う構想を述べていました。

 食品だけでなく衣料品でも“われしいたけ精神”ともいうべき商品を出しています。「再生ウール」を使った衣料品やインテリア製品は、ウール素材の製造工程で出た余り糸や切れ端を利用したもので、資源を無駄にせず商品化しています。

 今年「無印良品」の食品の取り組みで話題になったのは、春に発売して今も品薄が続く「コオロギせんべい」でした。こちらは食品ロスではなく、近い将来に予想される食糧危機への対策です。

 世界人口の急速な増加によって、人間の重要な栄養素であるタンパク質の供給が足りなくなることが予想されます。牛、豚、鶏などの家畜を増やすことも限界がある。そこで栄養価が高くて環境への負荷が少ない昆虫食が世界的に注目を集めています。コオロギの飼育にかかるエサや水は家畜に比べて圧倒的に少なく、100グラムあたりのタンパク質の量はずっと多いからです。とはいえ、いきなり昆虫をそのまま食べるのは抵抗があるので、コオロギをパウダー状にしてせんべいに練りこんだのが「コオロギせんべい」です。私も何度か食べましたが、えびせんのような味で、酒のつまみにぴったりだと思いました。

 今では規格外の野菜や食材を用いた食品自体は珍しくありません。でも「無印良品」が先駆けの一つだったことは確かです。「コオロギせんべい」は物珍しさもあって品薄になっていますが、近い将来、昆虫食がスタンダードになるかもしれません。

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