フォーカス

オーガニックコスメブランドが取り組む環境対策 CO2排出削減に向けてグリーンエネルギーへの転換進む

 「WWDビューティ」の5月28日号では、毎年恒例企画「オーガニック・ナチュラルコスメ特集」をお送りした。2015年に国連機関で「SDGs」と「パリ協定」が採択されて以降、サステナビリティへの関心は年々高まっている。そこで今号は、持続可能な農業生産法の一つとされるオーガニック(有機栽培)原料を用いる化粧品ブランドに取材し、製造から販売までサプライチェーン全体で取り組む環境対策にフォーカスを当てた。

 世界が抱える環境問題はさまざまあるが、地球全体の気候を大きく変える気候変動を引き起こす地球温暖化は優先すべき課題とされている。16年に発効し今年が実施初年となる「パリ協定」でも、CO2をはじめとした温室効果ガス排出削減の長期目標として、気温上昇を2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を継続することが盛り込まれている。

自然エネルギーの活用

 石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料は、燃焼させてエネルギーを得る際に大量のCO2を排出することから、オーガニック化粧品を展開する企業でも“エネルギー供給の低炭素化”あるいは“電源の非化石化”を進める動きは活発だ。メイクアップブランドの「ナチュラグラッセ(NATURAGLACE)」や国産オーガニックスキンケアの「チャント ア チャーム(CHANT A CHARM)」を製造・販売するネイチャーズウェイは昨年、名古屋にある本社と工場で使用する電力を自然エネルギー(再生可能エネルギー)100%由来の電気に切り替えた。

 また、エスティ ローダー グループの「アヴェダ(AVAEDA)」も早期に再生可能エネルギーの活用に乗り出した。アメリカ・ミネソタにある本社の屋根に太陽光パネルを試験的に設置したのは12年のことだ。今では、本社敷地内の約1万4500平方メートルの広さに2900の太陽光パネルを設置して、38キロワットのオフィス電力をまかなっている。主要工場においては、06年から100%風力発電で製造。さらに電力使用による温室効果ガス排出量を、風力発電会社からのクレジット購入により米国内でオフセット(相殺)している。

製品輸送時のCO2排出量削減

 これらの企業はエネルギー供給源を見直すほかにも、さまざまな視点からCO2排出量削減に取り組む。ネイチャーズウェイでは省エネルギー推進のため、整理整頓、清掃を徹底して製造不良発生件数を削減することに努めている。製造工程ではいったん加熱乳化を行いその後冷却するという一般的な化粧品の製法を避け、処方設計の工夫により一部製品を非加熱で製造する。また、工場、本社、物流倉庫間の輸送に、排ガスを25%削減するトラックを導入し、オンラインショップではCO2発生量の少ない紙を緩衝材に使用している。「アヴェダ」では製品を各国に輸送する際、空輸よりもCO2排出量の少ない船便の使用が基本だ。

 輸送時の環境負荷には多くのブランドが注意を払っており、スイス生まれの老舗ブランド「ヴェレダ(WELEDA)」では、一部の製品でボトルをガラス瓶からプラスチックに変更した。海洋プラスチックごみが問題視されている中で、なぜ?と思えるが、重量が軽いプラスチックの方が輸送時のCO2排出を含め環境負荷が少ないと判断してのことだ。同ブランドは現在スイス、フランス、ドイツなどの重要拠点のオフィスおよび製造工場において、太陽光発電、風力発電などを中心とした100%グリーンエネルギーを使用。事業活動全体で総合的に負荷を低減する選択を模索している。

植林でカーボンオフセット

 植林によるCO2削減に取り組む企業もある。ビーバイ・イーが展開する国産エシカルヘアケアの「凜恋」は、10年からボトル売り上げ1本につき1円を森林の増加や環境保全などを行う団体に寄付している。20年5月時点で累計植林本数は1523本になり、年間のCO2吸収量16.8トンを実現した。

 森林の減少は地球温暖化の要因となるもので、森林開発による大規模プランテーションで生産されるパーム油を使わないなど、原料調達に配慮することで地球温暖化対策に取り組んでいる企業も多く見られた。

環境配慮は投資対象に

 今回の特集で取材した環境経済学の専門家、馬奈木俊介・九州大学大学院工学研究院教授によれば、欧米では石炭火力発電によるエネルギーを使う企業への融資を行わない取り決めがあり、環境スコアを上げようとしない企業は融資対象から外すという流れになっているという。上記のように、日本の企業を含めて多くのオーガニック関連企業が環境保全に対応した取り組みを行っているにも関わらず、それが周知の事実とは言い難い。今後、サステナビリティを意識した事業展開を加速していく中で、融資を受ける場面も出てくるだろう。そうしたことも踏まえ、企業は自社で取り組んでいる環境対策をどう“見える化”し、社内外に発信していくかも課題となりそうだ。

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