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村上隆が語る審査の裏側 若手デザイナーの登竜門「2020 ウールマーク・プライズ」で「リチャード マローン」「ボーディ」が受賞

 ザ・ウールマーク・カンパニーは2月17日、若手デザイナーの登竜門「2020 インターナショナル・ウールマークプライズ(2020 INTERNATIONAL WOOLMARK PRIZE 以下、IWP)」の決勝戦をロンドンで開催した。

 大賞にアイルランド出身で、今回唯一のウィメンズブランドとしてファイナリストに選出されたリチャード・マローン(Richard Malone)の「リチャード マローン」が選ばれ、今回新設された「カール・ラガーフェルド賞」にはニューヨークを拠点にするエミリー・アダムス・ボーディ(Emily Adams Bode)のメンズブランド「ボーディ(BODE)」が選ばれた。優勝したマローンは20万豪ドル(約1500万円)、「カール・ラガーフェルド賞」のボーディは10万豪ドル(約750万円)をそれぞれ獲得した。

 決勝戦に進出したファイナリストは、LVMHプライズやアンダム賞などの有名コンペのファイナリストに選ばれた実績のある実力派の若手10組で、「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のアーティスティック・ディレクターを務めるデザイナーデュオによる「ボッター(BOTTER)」、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」で経験を積んだサミュエル・ロス(Samuel Ross)による「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL)」なども優勝を有力視されていた。

IWP優勝の決め手は”透明性”

 今回の審査は、サステナビリティーへの取り組みが重視され、素材の調達から商品の製造工程までを知らせるプラットホーム「プロヴェナンス(Provenance)」が取り入れられるなど、透明性がカギになった。優勝した「リチャード マローン」は天然素材や天然染料、再生繊維にこだわりながら、ウールやコットンなどの素材の原料を育てられた農場からトレース可能にしたほか、南インドの手織りの職人や、ロンドンで働くパタンナーやテーラーとの公平な取り引きを示すために一部工賃も公開。ファイナリストの中で最も先進的だったトレーサビリティーへの取り組みと、独自のアバンギャルドなブランドの世界観を両立させていたことが評価された。「ボーディ」は、19〜20世紀のアンティークのキルトやシルク、デッドストックのワッペンなどを使用したウエアを披露。20-21年秋冬コレクションを対象に審査され、全ブランドがメリノウールを使った新作も取り入れた。

 審査員は「ディオール(DIOR)」のメンズ・アーティスティック・ディレクターのキム・ジョーンズ(Kim Jones)やアーティストの村上隆、名物ジャーナリストで「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」エディター・アット・ラージのティム・ブランクス(Tim Blanks)、英「ヴォーグ」編集⻑のエドワード・エニンフル(Edward Enninful)ら9人が審査を行った。

村上隆が語る審査の裏側

 初めてIWPの審査員を務めた村上隆は「私はアーティストの立場からファッションの傍観者として見ているが、今回はエッジが切れたデザインやセンスを選ぶのではなく、サステナビリティーをいかに深く考えているかが審査の根幹となり、時代の大きな変化を感じた。それは私が見てきたカニエ・ウェスト(Kanye West)やヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の気楽で、エンジョイフルなストリートファッションとは大きく異なるもの。中にはトレンドとしてのサステナビリティーを追っていたデザイナーもいたが、優勝した『リチャード マローン』は、業者から生地を選ぶのではなく、素材の元である土からプレゼンテーションを行っていた。地道なことを真面目にやりながらも、アバンギャルドな作風があってその振り幅にも可能性を感じた」と評価した。

 日本からIWPのアンバサダーとして決勝戦に出席した冨永愛は「どのデザイナーもパワフルなコレクションを発表していたが、今まで以上にサステナビリティーがファッションで重視されていることを目の当たりにし、大きな時代の移り変わりを感じた。素材のルーツを知ること、生産の透明性や職人の手仕事が再評価されていくことはとてもいい動きだと思う。私は今『エシカルライフスタイルSDGsアンバサダー』としても活動しているが、ファッション業界の中でのポジティブなサステナビリティーへの流れを今後も多くの人に発信していきたい」と語った。