パリでは常にどこかでファッション関連の展覧会が行われています。今行くなら、グラン・パレで開催中の「空へ、海へ、彼方へ(VOLEZ VOGUEZ VOYAGEZ―ルイ・ヴィトン」展でしょう。
「空へ、海へ、彼方へ(VOLEZ VOGUEZ VOYAGEZ―ルイ・ヴィトン」展。会場では長蛇の列ができた
1854年の創業から現在までのメゾンの歴史を辿る内容なのですが、単に「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のアーカイブを見るのではなく、その商品が生まれた社会的な背景や風俗を含めて知ることができるので面白いです。
会場につくと長蛇の列。日曜日だったこともあり、親子連れの姿も目立ちます。パリで開かれるこういった展覧会でいつも思うのは、来場者はそのブランド好きの人だけではなく、実に幅広い老若男女だということ。昨年開かれた「ジャンポール・ゴルチエ」展も数時間待ちの人気でしたが、並んでいる人は尖ったゴルチエ・ファンよりもむしろ、ファッション的にはごく普通の人が多かったです。
ファッションの展覧会って、服やバッグやジュエリーそのものを見るというより、その背景にある風俗やルーツ、時代の流れを伝える内容が多いから好奇心を満たしてくれるんですよね。
会場内ではヘッドフォンを着用して、日本語の解説を聞きながら観覧します。で、「ルイ・ヴィトン」のルーツを辿る旅、どこから始まると思います?

なんと、木、でした。
創業者ルイ・ヴィトンは1835年、14歳の時に故郷のスイス国境にほど近いアルシェ村を離れて、パリで荷造り用木箱製造兼荷造り職人の見習いになりました。木材はトランク製造の要であり、同時にルイの故郷の森林風景を想起させるものだったそうです。頑丈な木のトランク。その原点があるから、後にアーティストの絵画やビジネスマンの書類など、その人にとって大切なモノを入れて運ぶ安全・安心なバッグとして成長してゆくのだと分かります。
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アフリカ、アジアへの冒険旅行では探検隊の日用品を「ルイ・ヴィトン」が運んだ
大切なモノを大切に運ぶトランク。その存在は冒険者たちのお共として認知されてゆくようになります。1924年から25年にアンドレ・シトロエンが結成した探検プロジェクトに参加します。探検用自動車でのアフリカ、アジアへの冒険旅行では探検隊の日用品(ティーセットとか洗面道具とか)を「ルイ・ヴィトン」が運びました。過酷な冒険旅行とティーセット。その言葉のアンバランス感は今まさに話題の“グランピング”に通じるモノがありますね。
乗り物の発達と連動して、新しいデザインを生み出してきた
「ルイ・ヴィトン」は乗り物の発達と連動して、新しいデザインを生み出してゆきます。船、自動車、汽車、そして飛行機。例えば自動車ならオープンカーが主流の時代には、車の座席にすっぽりと収まるクーラーボックス、寝台車の旅なら座席の下に滑り込ませられるバッグなど。当時の女性が汽車や車とポーズをとる写真を見ているだけで楽しいですが、その隣のバッグのサイズや形には意味があると知ると一層楽しいです。
絵画や化粧品、楽器などとの関係性を探る展示
展覧会の後半は、「余暇の時間」と題して、絵画や化粧品、楽器などと「ルイ・ヴィトン」の関係性を探っていました。特に印象的だったのは絵画を運ぶ頑丈なトランク。そこには顧客であったアンリ・マティス(大好き!)の名前なども挙がっていて、時にアーティストたちは商品開発を一緒にするパートナーでもあったそうです。こんなストーリーを聞くと、村上隆やリチャード・プリンス、ダミアン・ハーストといったアーティストたちとのコラボレーションが単にビジネスのための協業ではなかったとわかってきます。
出口で大きなポスターがもらえます
この展覧会は無料です。これもまた、ブランドビジネスの一環と言えばそれまでですが、乗り物の変化がバッグの形状の変化と連動していることを知るのは面白いですし、それ以上に例えば「冒険旅行にいかにティーセットを随行させるか=冒険旅行中であってもお茶は優雅に飲むべし」を真剣に考えるところに文化が生まれるのだな、と知ることができます。
開催は2月21日まで。日本にも来るといいな。
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