「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」に移籍した当初、ルイーズ・トロッター(Louise Trotter)は、「このブランドは、デザイナーにとってキャンディーボックスのような存在!」と話し、卓越した職人技を駆使して新しい洋服やバッグ&シューズを生み出すことに明らかに興奮していた。だからこそこれまでは、その職人技を多用し、ドラマティックなランウエイピースを作るという誘惑にハマりすぎてしまっていたのかもしれない。彼女が生み出す洋服は、(ランウエイピースはメッセージ性を重視するため、「着る・着られる」という評価軸に縛られなくても良いという考え方もあるが)時に「重たすぎる」と評価されることもあった。
だが今シーズンは、そんな意見を消し去るほど。ルイーズは、「少し『アンダーン(作り込みすぎない、こなれた)』な雰囲気を目指した。洗練されたスタイルと、よりオーガニックなスタイルの間を追求した」と、意図的に職人技をシリアスに表現しすぎないことを意識したかのように語る。ゆえに今シーズンは、引き続き職人技を駆使するが、デビュー以来の2つのコレクションと比較すると、明らかに軽やか。ルイーズは、メゾンのアイコンである「イントレチャート(レザーの編み込み)」の魅力を拡大解釈しながら、イタリア・ヴェネツィアの色彩を取り入れることで、実用主義者としての本領を発揮した。
春から夏へと移ろう季節を思い
軽やかなクロシェ編みを多用
思い描いたのは、春から夏への季節の移行。ウエアではリネン、バッグではラフィアを用い、軽量化を図る。さらにウエアでは、クロシェ編みを多用。まるでクモの巣のように糸を繊細に操り、透け感豊かなドレスなど生み出している。サマーニットは、引き裂いたグログランのリボンを手編みしたものだ。
そこにハリのあるウールから、ドレープするシフォンのような素材までを駆使して、「イントレチャート」に依存しない洋服を加えた。引き続き縦のラインを強調したテーラリングは、装飾を削ぎ落とした分、これまで以上にシャープに映る。シャツのボリューム感も抑え気味だ。目の覚めるようなパープルから淡いパステルまでの色使いは、色鮮やかなガラス工芸が名産のヴェネツィアを意識している。ドラマは、フリンジから生み出した。腰に巻いたスカーフから垂らしたり、バブルスカートには渦を巻くように配したり、ストローバッグのフリンジはバカンスのムードを盛り上げる。
バックステージでルイーズは、「私たちはクラフトを重んじるメゾン。クラフトこそが、私たちのロゴ。今シーズンは、軽やかさと着心地を実現しつつ、『ボッテガ・ヴェネタ』ならではの素晴らしい手仕事の要素も兼ね備えた技法を追求することに力を注いだ」と話す。