ルイーズ・トロッターによる新生「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」がついにベールを脱いだ。日常に根差した実用性と美を持ち味とする彼女が、ブランドの象徴であるクラフトをどう昇華させるのか注目が集まるなか、その答えとして披露された76体のルックは、観客の期待をしのぐ完成度で最高のデビューを飾った。
白いランウエイの会場は、まっさらなスタートを予感させた。ファーストローには、ブランドの創業地であるヴェネト州を象徴するムラーノガラスの椅子が並び、柔らかな光を穏やかに反射している。
トロッターがまず向き合ったのは、ブランドを象徴する編み込み技法“イントレチャート”。共同創業者レンツォ・ゼンジアーロの掲げた「ソフト・ファンクショナリティ(柔らかな機能性)」という理念をベースに、この伝統技法を新たな解釈で随所にちりばめた。
ファーストルックは、テーラリングで洗練させたPコート。レザーのロープで結んだ大ぶりのトグルをあしらい、ラペルの内側からはさりげなく“イントレチャート”が覗く。続くルックでも端正なコートやジャケットの袖や襟に“イントレチャート”を加え、控えめながらも手仕事の確かなぜいたくを漂わせた。カラーパレットは、ブラック&ホワイトにチョコレートブラウンなど、トロッターらしく知的でクール。ともに“イントレチャート”に引かれて職人と共にその可能性を追求したが、前任のマチュー・ブレイジーがアーティスティックに子どものようなピュアな感情を爆発させた一方で、トロッターはリアルに大人が毎日袖を通したくなる日常に寄り添う繊細さで人々を魅了する。
職人との協業は、中盤以降、複雑さと華やかさを増していく。リサイクルガラス由来のグラスファイバーをムラーノガラスのような色彩で彩って毛皮のように活用したスカートにはシンプルなグレーのニットを合わせたり、同じ素材のトップスには洗いをかけた下着のようなレイヤードスカートをスタイリングしたりしてクラフツマンシップと日常を交差。バッグ&シューズにも“イントレチャート”を多用し、職人と、歴代のデザイナーたちに敬意を示す。ファッションショーのBGMは、英国人アーティストでアカデミー賞受賞監督のスティーヴ・マックイーンが手がけた。ニーナ・シモンとデヴィッド・ボウイ、それぞれが歌う「Wild Is The Wind」をマックイーンがひとつの「デュエット」として再構築したもの。音楽にも“イントレチャート”的発想を組み込んだのだという。ショーが幕を閉じたとき、観客の表情には確かな満足感があった。ブランドのDNAと過去の遺産に敬意を払いながらも、トロッターは明確に自身の美意識を刻み込んだ。「ボッテガ・ヴェネタ」は今、新たなフェーズへと踏み出した。
トロッターは、「“イントレチャート”は、『ボッテガ・ヴェネタ』における言語のような存在。2つの異なるレザーが織り合わさると、より強く、より良いものが生まれます。それは、さまざまな場所で、さまざまな人々が絡み合うのと同じ。個々の物語が絡み合い、社会がより良くなるように願っているかのようです」と話し「今回のショーは、『ボッテガ・ヴェネタ』の旅路であり、ブランドの人生そのもの。私は『ボッテガ・ヴェネタ』を生きている人間として語りたい」と決意をにじませた。
ボッテガ・ヴェネタ ジャパン
0120-60-1966