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“究極”の名に偽りなし 「ベントレー」“コンチネンタルGTスピード”試乗記

最大出力782PS、最大トルク1000Nm、0-100km/h加速3.2秒。「ベントレー(BENTLEY)」の"コンチネンタルGTスピード"が並べた数字は、もはやスーパーカーのそれだ。しかし同モデルは圧倒的なスペックを備えるだけでなく、「究極のグランドツアラー」とすらも謳う。2024年にフルモデルチェンジを経て、4代目となる最新型"コンチネンタルGTスピード"の26年モデルに試乗し、都市の中での佇まいを写し取りながら、その素性を確かめた。

獣の力強さを優雅に描く


丸みを帯びた流麗なボディーには、単なる折り目でなく、つまみ上げてエッジを際立たせたような力強い曲線を随所に配した。全長約4.9m、全幅約2.2m(ミラー開)の堂々たるサイズを、2ドアクーペという贅沢なパッケージに落とし込んでいる。全高は約1.4mと、クーペとしてはやや高めの数値。対面して真っ先に感じたのは、大型サルーンにも通じる余裕と風格だった。

デザインモチーフに掲げたのは「静かに座す⻁」。豊かに張り出したリアフェンダーが、優雅に休む獣の折り畳んだ後ろ脚を思わせる。肉食獣をモチーフとしながら、獰猛さをテーマに押し出すことはない。あくまで品格と威厳を醸し出すその表現は「ベントレー」ならではだ。

2003年に登場した第1世代以来、約20年に及ぶ歴史で最も大規模な変化を伴った現行“コンチネンタルGT”シリーズ。その象徴的なディテールの一つがヘッドライトだ。先代モデルまでの片側2灯式から、楕円形の片側1灯式へと変更した。見た目は獲物を睨みつける獣の眼のようであり、水平に切れ込むデイライトは、疾走した軌跡に残る眼光の残像のようにも映る。同意匠はブランド最新のデザイン言語で、6月に発表した新型“フライングスパー”にも継承した。

中でも目を引くのは、宝飾品を思わせる灯火類内部の緻密な造形だ。一文字テールライトなどの流行を横目に、リアに堂々と配したテールランプは、点灯すると深紅の光が内部で複雑に屈折し、さながら煮えたぎるマグマのような有機的な輝きを放つ。機械的な構造を意識させないほどの作り込みは、同ブランドのクラフツマンシップを体現する見どころの一つだ。

優雅に走りを語る
クラシックな室内空間


試乗車の室内は、合計約6000万円の車両に相応しく豪華絢爛。全体を青色で統一し、ピアノブラックのセンターコンソールや、緻密なローレット加工を施した金属加飾が輝く。わずかに青みがかったグレー“ブルネル”を基調に、エクステリアと同じくアクセントには鮮やかな“キングフィッシャー”を採用。シート背面には精緻なステッチとパンチングでキルティング模様を描いた。ドアトリムからダッシュボード一面を覆う青色のカーボンパネルは、「ベントレー」のビスポーク部門であるマリナーが手がけるオプションで、ラグジュアリーな世界観の中に、パフォーマンスモデルとしての象徴的なマテリアルを違和感なく溶け込ませている。

特筆すべきは、電動化時代にあってもなお、「ベントレー」が古き良きクラシックな世界観を守り続けていることだ。センターコンソール中央に配したアナログ時計や、丸型の送風口“ブルズアイ”、その開閉を操作する“オルガンストップ”など、1950年代から受け継がれる意匠は健在。タッチ式ディスプレーに操作系を集約するトレンドもある中、センターコンソールにも物理スイッチを多く残したのも、評価すべきポイントだ。

「究極のグランドツアラー」を現代で名乗る以上、いくらクラシックな世界観を追求したとしても、機能性まで過去のものでは意味がない。同モデルでは12.3インチのタッチ式ディスプレーを標準装備して、ナビゲーションやApple CarPlayとAndroid Autoのワイヤレス接続、360度カメラ、リフターなど思いつく限りの先進装備を集約する。加えて、オプションの“ベントレー ローテーション ディスプレー”を選べば、パネル自体が上下に回転し、タッチ式ディスプレーのほか2種類のパネルへと変わる。外気温計、コンパス、ストップウォッチを埋め込んだパネルで所有感を味わったり、あるいはパネルのみの面に変え、シームレスに連なるインストルメントパネルでスタイリッシュな空間を演出したりするのも良い。

今やどの新型車を覗いても、内装の主役は一様に大きなディスプレーだ。同モデルの内装は、本来トレードオフの関係にあるデジタルテクノロジーとノスタルジーを斬新なアイデアで共存可能にした、興味深い例だろう。

「最強」かつ「極上」

同モデルは、“ウルトラ パフォーマンス ハイブリッド”と名付けられたプラグインハイブリッドシステムを備える。先代まで搭載していた伝統のW12エンジンに別れを告げ、4.0L V8ツインターボエンジンに190PSを発生する電気モーターを組み合わせた。結果、システム合計での数値は記事冒頭で挙げた通りの圧倒的な数値を実現し、同シリーズの最高級グレード“マリナー”と共に「ベントレー」現行モデルで最強スペックを誇る。

スムーズな走り出しは、BEVそのもののフィーリングで、耳に届くのは空調の作動音だけ。高い静粛性が身を包む。アクセル開度を最大75%までかつ、140km/h 以下の速度であればバッテリーのみで走行できてしまう。日本の公道における最高速度が軽く収まる速度域な上に、バッテリーのみの航続距離は81km(WLTPに基づく計測)に上る。“コンフォート”モードでは、路面の継ぎ目やうねりを余裕あるストロークで受け止め、ステアリングもゆったりと穏やかだ。数あるハイパフォーマンスカーの中でも、同モデルの快適性は群を抜いて高い印象で、徹底した遮音対策とモーター走行の静粛性も合わさり、血の気の多いスペックからは考えられないレベルにある。そんな「極上の乗り心地」に身を委ねて淡々と距離を重ねられるのも、グランドツアラーとしての大きな魅力の一つ。しかし、同モデルの本領は、呑気に流すだけでは味わいきれない。

走行モードを“スポーツ”にして内燃機関を叩き起こす。心地よい微振動とともに、「ドロドロ」としたエンジンサウンドが響き始める。とはいえキャビン内は静粛に保たれ、排気音も必要以上に主張することはなく、通行人の視線を嫌に集めるような演出とは無縁だ。アクセルを踏み抜くと、2000回転から1000Nmの最大トルクを発生し、約2.5tの巨体が瞬時に加速する。しかし、実際の車速に対して車内に伝わる緊張感は驚くほど薄い。V8の野太い咆哮はキャビン内にも響き、アクセルオフすると、「バババッ」と品の良いバブリング音を奏でる。それらのサウンドが主役となることなく、あくまで優雅なクルージングに彩りを添えるBGMとして徹するあたりが巧みな演出だ。

印象的だったのは、ラグジュアリーで上質な乗り味を土台としながら、外界と隔絶しない絶妙なチューニングだ。特に“スポーツ”モードでは、その名に違わぬ引き締まったサスペンションに、路面状況やタイヤのグリップ感などドライバーに必要な情報を過不足なく伝える。一方で、荒れた路面や継ぎ目を越える際の角の立った衝撃を巧みに丸め込み、ロードノイズや不快な突き上げも見事に遮断する。

同モードでの旋回では、重量級GTであることを忘れさせる身のこなしを魅せる。ノーズは軽快かつ素直に向きを変え、ステアリングフィールはダイレクトだが、細かな修正舵は必要としない。過敏さは抑えられ、ドライバーの意思に対して、描く走行ラインは忠実だ。駆動用バッテリーをリアに内蔵することによって、前後重量配分を49対51と、同シリーズで初めてリアヘビーとなった改良の影響が大きいだろう。

欠点は存在するのか

ただ上質で快適なグランドツアラーを目指しただけなら、モーターのみでの静粛かつ滑らかな走りだけでも、その目的は十分に果たせている。しかし、「ベントレー」が添えたのは、物事の終着点を意味する「究極」の文字だ。

“スピード”というグレード名ならではの圧倒的なパフォーマンスを実現しながら、ブランドのラグジュアリーな世界観を逸脱することはない。先進安全装備や運転支援機能も、もはや声高に主張するまでもなく備え、狭い住宅街での使い勝手にも隙はなかった。快適性、速さ、操縦性、実用性、それらをまとめ上げる美しいスタイリング。どれ一つとして妥協はなく、少なくと5日間に及ぶ試乗期間中、実用上の欠点は見いだせなかった。新型“コンチネンタルGTスピード”は、現代のグランドツアラーというカテゴリーにおける、一つの到達点と呼ぶにふさわしい一台だ。


◼️車両情報
"コンチネンタルGTスピード"(26年モデル)
外装色:“エクストリームシルバーサテン”
車両本体価格:4175万円(27年モデルは4259万円)
試乗車価格:5985万1318円
全長×全幅×全高:4895×2187(ミラー開)×1397mm
ホイールベース:2851mm
車両重量:2459kg
駆動方式:AWD
パワートレイン:プラグインハイブリッド(4.0L V型8気筒ツインターボエンジン+モーター)
トランスミッション:8速DCT
エンジン最高出力:600PS/6000rpm
エンジン最大トルク:800Nm/2000〜4500rpm
モーター最高出力:190PS(140kW)
モーター最大トルク:450Nm
システム最高出力:782ps
システム最大トルク:1000Nm


PHOTOS:DAISUKE TAKEDA

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