
イタリアのスーパーカーブランド「ランボルギーニ(LAMBORGHINI)」を擁するアウトモビリ・ランボルギーニは3月19日、2025年の決算として、いずれも過去最高値となる、納車台数1万747台、売上高32億ユーロ(約5894億円)を発表した。21年以降、過去最高の納車台数を更新し続ける同ブランドは前年、ウラカンの後継にあたる“テメラリオ”を投入し、現行量産3モデルすべてをハイブリッド化させた。こうしたブランドの成長やハイブリッド戦略を読み解く上で欠かせない存在は、18年に登場し、販売台数の中核を担い続けているスーパーSUV“ウルス”だ。本記事では、同車のPHEVモデルで24年に発表された“ウルスSE”に試乗し、主力のPHEVモデルを通じて「ランボルギーニ」が提示するハイブリッド像に迫った。
攻撃的かつ理知的な
エクステリア

SUVカテゴリーの中でもトップクラスのサイズが放つ堂々たる存在感に、直線的なキャラクターラインを随所に折り込んだボディーは、走り出す前からその性能を予感させるほど攻撃的だ。

先代にあたる“ウルスS”などで見られたフロントボンネットのパーティングラインや左右に連なるパーツ、リヤのナンバープレート周辺の造形を見直し、全体の構成要素を整理した。闘牛の尻尾の曲線に着想を得たデイライトは、ヘッドライトユニットの輪郭に沿って発光することで余計な視覚情報を付加しない。この意匠からも、情報量を削ぎ落とす方向性でフェイスリフトがなされたことが読み取れる。
電動化によって開口部を縮小するメーカーが増える中で、先代以上に強調されたフロントグリルの大きさは、モーターを得てもなお奥に潜む大排気量エンジンの存在を想起させる。
先代譲りの攻撃性を維持しつつ、デザインの余白を持たせたことで、どこか理知的で端正な印象も加わった。わずかに青みを帯びたパールホワイトの“ビアンコ・サフィルス” の外装色は、静ひつな顔つきとの相性も良い。エンジンの力強さに、電動化による賢さを併せ持つ走りの特性を直感的に感じられるエクステリアだ。
「操る喜び」への期待感
インテリアは有機的な曲線の使用を控え、六角形やYシェイプといった伝統的モチーフを随所に採用。外装同様に直線基調のデザインとしつつ、“FEEL LIKE A PILOT”をテーマに心をくすぐる要素を散りばめた。

ミサイルの発射スイッチのようなエンジンスタートボタンは「ランボルギーニ」お馴染み。その周辺にはリバースギアのみを贅沢に割り当てた大ぶりのパームレストに、左右には、航空機のスラストレバーを思わせる“タンブーロ”(イタリア語で“太鼓”)と呼ばれるレバーが備わり、いずれも見た目通りの「ガチャ」という心地よい手応えを味わえる。ハザードなどのボタンもトグルスイッチ風のせり出したデザインに刷新し、こちらも「カチッ」と節度感のあるフィードバック。電動化を進めたモデルといってモニターにボタンを集約したりせずに、「操る喜び」への期待感を煽る造形を保ちながら、その完成度をさらに高めた。
ロマンあふれる造形に囲まれるドライバーズシートは、さながらモビルスーツのパイロットになったかのような感覚すら覚える。それでいて子供っぽいわけでなく、あくまで上質な演出として内装に調和し、高いユーザビリティさえも両立している点が見事だ。
静けさと激情のコントラスト

同モデルは、4.0L V型8気筒ツインターボエンジンと、25.9kWの高電圧バッテリーを車体に搭載する。「ランボルギーニ」はこれらを「2つの心臓」と例えて巧みに組み合わせる。走行モードは“ストラーダ”“スポルト”“コルサ”に加え、“ネーヴェ”などのオフロード系をそろえる。これに“ハイブリッド”“リチャージ”“パフォーマンス”といったバッテリーに関わる制御モードを掛け合わせ、状況に応じた特性を作り分けた。
カバーを開け、エンジンスタートボタンを押す。「……」。拍子抜けするほどに静かだ。同モデルは、充電が十分であれば、始動時にエンジンが目を覚ますことはない。最大出力192PS、最大トルク483Nmに達するモーターは、それのみで最大時速は130km、航続可能距離は60kmに上る。一般的なセダンやSUVを軽々と従えているのと同義で、遠出をせず、自宅に充電ポートさえあれば、理論上エンジンを使わずに運用できるスペックを備える。“ストラーダ”モード選択時に可能なEV走行では、エンジンの存在を感じることなく車内は静けさに満ちあふれ、加速はスムーズだ。23インチの大径ホイールに似合わないほど路面からの突き上げは最小限で、大きな凹凸に対しても嫌な硬さは感じない。深夜の始動や住宅街での走行にも配慮しやすく、静かな車内では同乗者との会話をゆったり楽しめる点は、ブランド随一の都市型モデルとして、さらなる利便性を獲得したと言えそうだ。
“ハイブリッド”モードでは、2つのパワートレインを駆使してエネルギー効率を最大化する。高速域などではエンジンが目を覚ますが、意外にも介入はシームレスだ。ブランドらしい排気音も聞こえ始め、運転を楽しみながら、燃費性能も両立してGTカーとしての性能を最大化させる。
“スポルト”モードを選択すると、キャラクターが大きく変化する。起動直後に乾いた低音が響き渡り、アクセルレスポンスやハンドリングはタイトに、サスペンションも固められる。ワインディングではSUV特有の腰高感を一切感じることなく、クーペにも劣らない路面に張り付くような走行フィールを味わえる。トルクベクタリング機構をより賢く刷新した効果もあり、安心して踏んでいけた。走行速度に関係なく響かせるブリッピング音は、「ランボルギーニ」らしい主張も感じられる要素であった。
高速の合流や追い越しなどの場面では、ステアリングに収まる“プッシュトゥパス”ボタンの出番だ。 レース用の“コルサ”モードと“パフォーマンス”モードを掛け合わせ、走行における潜在能力を瞬間的に解き放つ10秒間のブースト機能である。「踏め!」と促されるかの如く回転数とエンジン音が一気に高まり、振動が全身を伝う。アクセルペダルを踏み抜くと、高回転を積極的に保ちながら、2.5トン以上の巨体が停止から100km/hまで3.4秒で到達する。車内外にも響き渡る轟音や加速G、鋭い変速ショックは、安易に公道で使うべきではないことを瞬時に悟らせるほどだ。先ほどまで穏やかに佇んでいた存在が、一転して闘牛場へと引き出された暴れ牛のように本性を表す。その変貌ぶりは、バッテリーを積んでいることを忘れさせるに十分だった。
2つの心臓に宿した
2つの生命体
EVを取り巻く環境に逆風が吹く中、「ランボルギーニ」が提示したハイブリッド像は明確だ。PHEV化によって環境性能や燃費性能、市街地での扱いやすさを高めながらも、“暴れ牛”に振り回されるかのような高揚感は健在で、電動化によって犠牲になった要素は見当たらない。彼らが謳う「2つの心臓」とは、モーターとエンジンの共存を指すと同時に、それぞれの特性を失うことなく独立して宿る「2つの生命体」を示唆する比喩でもあった。「電動による静けさ」と「内燃機関の激情」の両極を自在に行き来する。その激しいコントラストにこそ、彼らが提案するハイブリッドの核心がある。
◼️車両情報
“ウルスSE”
車両本体価格:3465万円
駆動方式:4WD
パワートレイン:PHEV(4.0L V型8気筒ツインターボエンジン+1モーター)
トランスミッション:8速AT
エンジン最高出力:620PS/6000rpm
エンジン最大トルク:800Nm/2300〜4500rpm
モーター最高出力:192PS
モーター最大トルク:483Nm
システム合計最大出力:800PS
システム合計最大トルク:950Nm
全長×全幅×全高:5123×2022×1638mm
PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA