三條場夏海がディレクターを務めるウィメンズブランド「ガジェス(GAJESS)」が、新たにジュエリーラインをローンチした。これまでアパレルを中心に“シンプルな中に艶がある女性像”を提案してきた同ブランドが、なぜ今ジュエリーへと領域を広げるのか。
ブランドの裏テーマである“On Stage”と、三條場自身が愛してやまないクラシック音楽への思いを込めたジュエリーラインの誕生。その背景には、リピート率60%を支えるブランドづくりと、「憧れ」と「リアル」の両立を模索してきた彼女の試行錯誤があった。
クラシック音楽を“ジュエリー”に落とし込む
WWD:なぜこのタイミングでジュエリーラインを立ち上げたのか?
三條場夏海ディレクター(以下、三條場):元々「ガジェス」は華美なジュエリーに頼らず、女性自身の艶やかな肌や曲線を美しく見せるアパレルアイテムやスタイルを提案してきました。そのため、当初はジュエリーを作る考えはありませんでした。
ブランドの根底には“On Stage”というテーマがあります。幼少期からピアノや吹奏楽、ダンスなど、ステージに立つ経験を通じて自己肯定感を育んできた私自身の実体験から生まれた言葉で、「今を生きる女性に、ポジティブでアクティブに輝いてほしい」という思いを込めています。
WWD:その思いは洋服で表現できなかったのでしょうか。
三條場:洋服でクラシック音楽を表現しようとすると、どうしても非日常的なドレスに寄ってしまいます。一方でジュエリーは、人生の節目や思い出と共に身に着け続けられる存在。女性の人生の歩みに寄り添う「お守り」のようなアイテムとして、ジュエリーならブランドの価値観を日常に落とし込めるのではないかと考えました。
WWD:三條場さんはクラシック音楽との関わりも深いそうですね。
三條場:雑誌企画をきっかけにクラシック音楽業界とのご縁が生まれ、現在は「霧島国際音楽祭」のPRや演奏家のスタイリング、ビジュアルプロデュースなどにも携わるようになりました。「「ガジェス」とクラシック音楽には、伝統的で変わらない価値を持つという共通点があります。
WWD:今回のジュエリーローンチにあたり、オリジナル楽曲の制作に世界的フルート奏者の上野星矢さんを起用されています。
三條場:「霧島国際音楽祭」でご一緒したことがきっかけです。上野さんは確かな実力に加え、品格と艶やかなムードを併せ持つ方。その佇まいが「ガジェス」の世界観とも重なりました。
また、フルートは華奢な見た目に反して非常に多くの息を使う楽器です。その息遣いが生み出す躍動感や艶っぽさにも、ブランドとの親和性を感じました。
五線譜をモチーフに、人生を重ねるジュエリー
WWD:ジュエリーにも音楽的な要素を落とし込んでいる。
三條場:ジュエリーラインのメインとなるのは、五線譜リングシリーズです。就職や結婚など、女性が人生の変化と共に、自分の歴史を指に重ねて紡いでいく様子を、五線譜に音符が乗ってメロディーを奏でていく過程に見立てました。
アイテムには、それぞれ楽器や音楽用語のディテールを忍ばせています。例えば、ピアノの黒鍵と白鍵が美しく連なる様子から着想を得た“Sergei Ring”(4万4000円)、強さを意味する音楽記号の“f(フォルテ)”と、ハープの美しいカーブからデザインした“Emmanuel Hoop Earrings”(6万3800円)などを用意しています。
WWD:中でもおすすめは?
三條場:ピアス“Lorraine Bar Diamond Earring”(5万8300円)です。耳たぶを挟むような唯一無二のデザインで、見る角度によって表情が変わるユニークなピアスに仕上げました。これは耳に当ててみて初めて魅力が伝わるので、ポップアップでぜひ実物を見ていただきたいです。
WWD:素材にラボグロウンダイヤモンドを採用した理由は?
三條場:アパレルアイテムとの価格帯のバランスです。「ガジェス」の主力アイテムであるジャケットが約6万円代という中で、高額になりすぎないようにファインジュエリーとして楽しんでもらえる価格設定を目指しました。
WWD:製品のビジュアルも「ガジェス」らしい。
三條場:よく見かけるジュエリーブランドの広告は、静寂で美しいイメージがありますが、今回「ガジェス」はその逆を目指しました。というのも、ジュエリーは身につけて本来の輝きを発揮するもの。パソコンを打つ手元や、髪を耳にかける瞬間など、日常の動きの中で輝くジュエリーを表現したかった。
熱狂的コミュニティーの拡大と今後のビジョン
WWD:「ガジェス」の現在地と、今後の戦略について教えてください。
三條場:おかげさまで公式オンラインストアでのリピーター率は約60%と、ファンの皆さまに支えられています。ブランドの主力は、スカートやパンツ、ジャケットを展開する“テイラーシリーズ”で、サイズ展開を広げたことで新しいお客さまも、男性客も増加しました。
今回のジュエリーは、アパレルよりも気軽に手に取っていただけるエントリーアイテムになると期待しています。そして、今後は既存のお客さまに喜んでいただけるVIP向けディナーやドレスアップイベントなどの体験価値を高めつつ、新規顧客の獲得が課題です。
WWD:具体的には?
三條場:ブランドの世界観と、実際にお客さまが求めるリアルな着こなしとのバランスについて考え直しています。2023年プレ・フォール・コレクションでは、ブランドの根幹を体現するためにパリでルックを撮影しました。エッジの効いたスタイリングでブランドのアイデンティティーは完璧に表現できた一方、「買いにくい」という声もあり、お客さまを少し置いてけぼりにしてしまった実感もあったんです。
WWD:そこからどのように軌道修正を行ったのでしょうか。
三條場:シーズンの合間にわかりやすく日常に落とし込んだルックをシンプルに並べて見せる投稿をスタートしました。それが新規顧客の獲得と、売り上げに直結したのです。“お客さま目線に立ち返る”という大切さを改めて実感しました。
もちろん、パリでのルック撮影が無駄だったわけではありません。ブランディングのために必要だったシーズンです。これからは、ブランドのイメージを強く打ち出す「憧れ」の提案と、お客さまに寄り添う「リアル」な提案を、意識的に行き来していきたいと思っています。
WWD:最後に、三條場さんご自身の目標を教えてください。
三條場:いつか「ファッションとクラシック音楽業界をつないだのは三條場だ」と言われるような存在になりたいです。クラシック音楽業界には素晴らしい方がたくさんいますが、ファッションやビューティの楽しみ方にはまだ伸びしろがあると感じています。その魅力をもっと届けていきたい。
そして最大の夢はオーケストラの生演奏に合わせて、「ガジェス」のランウエイショーを開催すること。いつか必ず実現させたいですね。
ポップアップ情報
大阪
期間:7月3〜5日
場所:ATELIER ECRU
住所:大阪府大阪市中央区南船場4-9-11 2階
営業時間:
7月3日 13:00〜19:00(初日のみ完全予約制)
7月4日 11:00〜19:00
7月5日 11:00〜16:00