ファッション

多感な時期に光を当てる「ドリス ヴァン ノッテン」 制服から始まる自己発見の旅

学校を卒業した青年が故郷から都会へと旅立つストーリーを通して、大人になるという概念を探求した2026-27年秋冬メンズ・コレクションから約1カ月半。ジュリアン・クロスナー(Julian Klausner)による「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」はウィメンズでも多感な時期に光を当て、実際の学校の体育館を舞台に、アイデンティティーが形成されゆく過程を描いた。

出発点は、昨年9月のウィメンズショーの翌日、チームと今回の会場となった体育館を訪れたこと。そこで目にした学生たちの姿から、「学生時代を振り返るという感覚が、どれほど皆に共通する普遍的なものなのかを考えた」という。そして「服が自己発見の過程にどれほど重要な役割を果たすか」について話し合ったジュリアンは、世界中で着られている「制服」に目を向けた。

ファーストルックは、プレッピーなムード漂うデザインをロングシルエットで仕立てたダッフルコート。その後もネクタイを締めた白シャツをはじめ、紋章やパイピングがあしらわれたブレザー、バーシティジャケット、プリーツスカートのようなキルトスカートなど、学生服を想起させるアイテムが軸となった。

そしてジュリアンは、学生たちが個性を加えるために制服をカスタマイズするように、さまざまな要素を織り交ぜていく。今季を印象付けたプリントの一つは、「美と生命の儚さがあり、そのもろさがティーンエイジャーの感情に重なると感じた」と話す1680年代のフランドル静物画。写実的な果物や花をそのままプリントするだけでなく、まるで拡大しすぎたかのようにピクセルでも描く。そんなプリントだけでなく異なる色と技法を用いた刺しゅうでも表現されたピクセルは、「若い頃はある種の混乱があり、周囲の世界を完全には理解できないこともある」という考えを反映したもの。また、シャツのカフスや胸元、端正なテーラードコートにあしらわれた金の装飾的な刺しゅうが華やかさを演出する一方で、フェアアイル風のニットは先のメンズに通じる愛着やノスタルジックなムードを醸し出す。

素材はウールやダッチェスシルクから、伝統的なゴブラン織などの花柄ジャカードや現代のワードローブに欠かせないデニムまで。黒やネイビー、茶色を中心とした落ち着いたカラーパレットは、鮮やかな赤や青、オレンジ、ネオンイエローで彩りを加える。コラージュするように異質なものを組み合わせるアイデアは、デザインにも見られ、テーラリングにバーシティジャケットのネックラインのリブをあしらったり、袖をニットで切り替えたり。異なる時代や文化を感じるビンテージライクなジュエリーや、10代の反抗心を映し出す無骨なブーツがスタイルを完成させる。

そんな多種多様な要素を折衷しながらも絶妙なバランス感覚で一つにまとめ上げるジュリアンの才能は、創業者のドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)に通じるところだ。内部昇格によって、クリエイティブ・ディレクターに就任してから1年。紛れもなく「ドリス」なスタイルを継承しながらも、本人が手掛けていた頃と比べると、はっきりとした色使いやより多くの装飾的要素、直接的なセンシュアリティーの表現、まだ成熟しきっていない若々しさ、そしてメンズとウィメンズで似た出発点から始めるアプローチは、ジュリアンによる「ドリス」らしさになりつつある。

「私は今でも非常にワクワクしていて、スタジオと一緒にとても楽しく仕事をしている。それは、まるでたくさんの可能性が目の前にあるような感覚だ。私もチームとやり取りを重ねながら、皆の熱意を保ちたい。ドリスが得意だったように、皆に挑戦を与え続けることも自分の役割の一つだと思っている」。そう話す彼は、ドリス時代から長年働いている社内のチームや生地メーカー、インドの刺しゅう職人たちがそろう恵まれた環境と豊かなアーカイブを生かしながら、これからも服への愛にあふれる物語を紡いでいってくれるだろう。

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