「ブランドを守ることが非常に重要なカテゴリーだ。売り上げを求めすぎて価値が毀損するのは避けなければいけない」――。アシックスのは廣田康人会長は、2025年12月期の決算説明会でそう語った。ブランドとは急成長中の「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」を指す。
2026年12月期(26年度)の業績予想で「オニツカ」の売上高を前期比11%増の1520億円とした。2ケタ増収ではあるが、23年度の40%増630億円、24年度の58%増954億円、25年度の43%増1365億円といった高成長を踏まえると、一服感が否めない。26年度の成長ドライバーの役割は、「オニツカ」と同じくファッションスニーカーとして人気の「スポーツスタイル」(“ゲルカヤノ14”など)に譲る。「スポーツスタイル」は45%増の2050億円を計画する。
「オニツカ」の売上高の半分を占める日本市場では、26年度の伸び率を8%増に抑える。25年度は64%増だった。
拡販に慎重なのは、同社にとって「オニツカ」が虎の子ともいえる優良事業だからだ。主力のランニングシューズに売り上げ規模こそ及ばないが、25年度のカテゴリー利益率(営業利益率に相当)は37.7%と極めて高い。
創業精神とDNAを引き継ぐ「オニツカ」は、「日本発のラグジュアリー・ライフスタイル・ブランド」を標榜し、高付加価値を追求してきた。今年1月には創業者・鬼塚喜八郎の故郷、鳥取県に専用工場オニツカイノベーティブファクトリーを開所したばかり。今後もブランド価値を高めるため、供給量は緻密にコントロールする必要がある。
販売は直営店および直営ECのみで、国内の直営店は43店舗。ブランドの性格上、出店先も厳選し、むやみには増やさない。人気沸騰によって東京や大阪の繁華街の店舗は常に大勢の訪日客でごった返しており、当面の課題は混雑の緩和にある。大型店を増やすなどして、少しでも落ち着いた売り場環境を作る考えだ。
「オニツカ」のけん引役が訪日客であることは間違いない。アシックスの日本における25年度のインバウンド売上高は474億円(うち「オニツカ」415億円)だった。内訳は中国116億円(前年比52%増)、米国76億円(同180%増)、フィリピン43億円(同43%増)、台湾34億円(同135%増)、韓国30億円(同2%増)、その他175億円(同117%増)で、中国に集中することなく分散している。昨年末からの中国人客減少によるダメージも吸収できると見る。