6月に逝去したエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES、以下ELC)のレナード・A・ローダー(Leonard A. Lauder)元名誉会長の追悼式が9月30日(現地時間)、ニューヨークのリンカーン・センターで行われた。同氏の影響力と関心領域の幅広さを反映し、ビューティ業界の他、ファッション、アート、小売り、医療、社交界などから1300人以上が参列し“ビューティ界のレジェンド”を偲んだ。
幅広い分野をけん引した故ローダー氏は、6月に逝去してから数カ月がたった今もなお、人々を惹きつける力は健在だった。この夜、同氏の人生とレガシーを祝福するため多くの人が集まった。ELCの幹部をはじめ、トリー・バーチ(Tory Burch)、マイケル・コース(Michael Kors)、ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)、ヴェラ・ウォン(Vera Wang)らデザイナー陣、メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)の マックス・ホライン(Max Hollein)館長、俳優のキャンディス・バーゲン(Candice Bergen)、社交界や慈善活動で知られるジュリア・コック(Julia Koch)、マリー・ジョゼ・クラヴィス(Marie-Josee Kravis)、リジー&ジョナサン・ティッシュ(Lizzie & Jonathan Tisch)夫妻などが出席した。
NYリンカーンセンターにデザイナーなどが集結
キャンディス・バーゲンは「彼はニューヨークで最も紳士的な人だった」と語り、マイケル・コースは20年前にハワイで感謝祭を過ごした際、ブラックフライデーにサプライズ訪問をしようと誘われた思い出を披露。「最後に会ったのもここリンカーンセンターだった。体調が万全でなくても、美しいものを見たいと来ていた。人、アート、演劇、音楽を愛し、まさに唯一無二の存在だった」と述べた。
ダイアン・フォン・ファステンバーグは「私の記憶はレナードの母親であるエスティから始まる。とても親切にしてくれた。レナードと弟のロナルドは“女性の美を讃える”というエスティの信念を体現している」と回想した。トリー・バーチは「世界で誰よりも貴重なビジネスの助言をくれた」と語り、ヴェラ・ウォンは米国乳がん研究基金(BCRF)のイベントで黒一色の装いをしていた際、ローダー氏から「今日はピンクを忘れたの?」と笑顔で声を掛けられたエピソードを紹介した。
ビューティ界からアート界までが功績を称える
ELCのステファン・ド・ラ・ファヴリー(Stephane de La Faverie)CEOは「彼は何をすべきかを直接は指示せず、進むべき方向を導いてくれた。今も私たちを導いている」と語った。同社のタラ・サイモン(Tara Simon)=アメリカ地域プレジデントは「女性を力づけ、活躍の場を広げてくれた」と述べたほか、アルタ ビューティ(ULTA BEAUTY)のケシア・スティールマン(Kecia Steelman)CEO、ジボダン(GIVAUDAN)のジル・アンドリエ(Gilles Andrier)CEO、オーストラリアの美容小売りメッカ(MECCA)のジョー・ホーガン(Jo Horgan)創業者らが、その影響力を証言した。
米美容誌「アリュール(ALLURE)」のリンダ・ウェルズ(Linda Wells)初代編集長は「彼のおかげで仕事を得た」と感謝し、ハースト(HEARST)のフランク・ベナック(Frank Bennack)元CEOは「ビジネスリーダーらしからぬ思いやりを持っていた」と評した。
アートと慈善活動でも功績を残したローダー氏は、2013年にメトロポリタン美術館にキュビスムの絵画や彫刻を80点以上寄贈したほか、ホイットニー美術館(The Whitney Museum of American Art)の発展やアルツハイマー病、乳がん研究支援にも尽力した。
「ダイヤモンドのように多彩な人」
式典の最初のスピーカーとして登壇した長男のウィリアム・P・ローダー(William P. Lauder)氏は「父は世界をビジネスと好奇心を通じて理解しようとした。旅や文化交流を愛し、世界中の人々とつながっていた」と語った。次男のゲイリー・M・ローダー(Gary M. Lauder)氏も「父はダイヤモンドのように多彩な人だった」と讃えた。
式典はルイ・アームストロング(Louis Armstrong)の「この素晴らしき世界」が流れる中、ローダー氏の生涯を綴った写真と映像のモンタージュから始まり、最後は海軍時代を偲んだ「錨を上げて」の演奏で締めくくられた。妻のジュディ・グリックマン・ローダー(Judy Glickman Lauder)氏は「彼は人生そのものに恋していた」と述べ、弟のロナルド・S・ローダー(Ronald S. Lauder)氏は「ビジネスマンとしての顔と友としての顔を持ち、どちらでも人を大切にした」と追悼した。