加納節雄の個展「無常 MUJO」が9月28日まで東京・表参道で開催中だ。多数の作品の中から、「MUJO シリーズ」「浮世絵シリーズ」「PINK シリーズ」などを展示。大阪・関西万博で要人らをもてなすため迎賓館に飾られた作品「蔦唐丸」も一般公開する。また「PINK シリーズ」については初めてエッセイを書き下ろし、これまで語ることのなかった「無常」の思想を一つの物語としても紹介する。
加納氏は日本を拠点に、日本美学の根底にある「無常」の世界を、世界や未来へ伝えるために創作活動を行う。江戸絵画の世界的蒐集家でもある。襖サイズの絵を約1日で描き上げ、画業歴6年にして1300点を超える作品を生み出す同氏は、「ちんたら描くと絵の時間が止まってしまう」と語る。「絵を描くときは基本的に、ストーリーや登場人物を作り、頭の中で活劇させて、『かっこいい』と思った瞬間を描く」という。「世界中を回ってみて、共通言語は『かっこいい』だけだと思った。理屈を考えて、『これはいいもの』『悪いもの』から入ると、本質からは離れてしまう。僕の作品では、子どもからおじいちゃん・おばあちゃんまで、みんなが『かっこいい』と思うものを追求している」と続ける。
襖サイズの和紙キャンバスに5色の水性インクのみを使い、下書きなしに描くという表現方法も特徴的だ。「裕福な子どもは油絵の具を買ってもらえるかもしれない。でも例えば、アフリカに住む子どもたちはどうだろう?描こうと思ったときからハンディーがあるのはいけない、と思った。『誰にでも手に入る紙と水性インクがあれば、絵が描ける』というメッセージを届けたい」と話す。
そして同氏の作品には、タイトルがない。「タイトルは、見る人からしたら大きなお世話。タイトルに『猫』とあっても、見る人が『犬』だと思ったら『犬』だから。一般的には5〜10mくらいの距離で見えるものにタイトルをつけているが、100〜200m離れていても見えるものは、実は“自分の中にある絵”だと思う。見る人それぞれの想像力で、作品を感じてほしい」。
2023年に発表した「PINK シリーズ」は、「無常の円環」を描いた。モノクロの絵を際立たせているフレームのような部分のピンク色について、「人間が生まれたときと死ぬときに見る風景の色は恐らくピンクだと思い、この色を採用した。XやYは染色体を表している」と生と死を軸にした表現であることを明かす。「同シリーズは現在も描き続けている」といい、今後の発表からも目が離せない。
■加納節雄 個展「無常 MUJO」
日程:9月25〜28日
時間:11:00〜19:00 ※最終日は17:00まで
場所:LA COLLEZIONE UNO
住所:東京都港区南青山6-1-3