ファッション

「ディーゼル」のショーからランウエイが消えた ミラノの街を舞台にみんなでエッグ・ハント

いま最も注目を集めるデザイナーの1人、グレン・マーティンス(Glenn Martens)による「ディーゼル(DIESEL)」は、ミラノ・ファッション・ウイークの初日、全く新しい方法で2026年春夏コレクションを発表した。それは、ミラノの街全体を舞台にした「エッグハント」だ。イースター祭りで庭や公園に卵を隠すこのゲーム。「ディーゼル」の場合、透明の卵形のカプセルに入っているのはお菓子ではなく、最新コレクションをまとったモデルたち。ファッションの民主化に取り組むグレンの「ディーゼル」からは、ついにランウエイすらもなくなった。

このエッグハントは誰でも無料で参加でき、参加者たちは事前に渡された地図を頼りに街中に隠された卵を探す。それぞれの卵に付いているQRコードをスキャンするとハント完了だ。街には55体の卵が設置され、最も早く見つけた人には景品が贈呈される。一位にはコレクションのルックが景品だったという。グレンはプレスリリースに、「コレクションは全ての人が同時に発見することができる。ファッションはゲームであり、誰もが最前列で楽しむべきです」と綴る。

夜19:30。参加者たちはミラノ中央のベッカリア広場に集められた。そこからスタートし、参加者たちは各々散らばり、ハントに出かけた。街を歩くと、「あっちにも1つあったよ!」と互いにヒントを出しながら、人混みをかけわけ必死に走り回る若者たちの姿があちらこちらにあった。卵が設置された「ディーゼル」店舗の前には、エッグハント参加者たちが大勢詰めかけていた。

自らのことを「究極の飽き性」と自称するグレンは、発表方法しかり、コレクションの中身でも人を飽きさせない。

リサイクルポリエステルを用いたサテンデニムで仕立てたノースリーブのバイカージャケットやエプロントップは、メタリックな光沢を帯びながらグラデーションでフェードし、どこか近未来的。一方、レトロな小花柄に、架空の毛皮を思わせるプリントを重ねたルックや、動物の骨格を模したネックレスやブレスレットも登場。なめし工場から調達した副産物レザーをあえてラフにカットしたスカートは、生々しい生き物感がある。デニムにブレザーを重ねたり、チェック柄のスーツにロングコートを羽織るテーラードルックもある。近未来と原始、人工と自然、相反するさまざまなな言葉が頭に浮かんだ。

観客はミラノの夜の街を舞台に、そんな超実験的クリエーションを詰め込んだ最新ルックを追いかけ、発見し、そして同時に楽しんだ。

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