「グッチ(GUCCI)」は9月22日、デムナ(Demna)新アーティスティック・ディレクターが初めて手掛けたコレクションのルックブックを公開した。デムナは、“ラ ファミリア(La Famiglia)”(イタリア語で「家族」の意)と題した写真家キャサリン・オピー(Catherine Opie)による一連のポートレートを通して、「グッチらしさ」を再解釈。37のキャラクターを生み出し、その豊かな個性と独自の美意識を浮かび上がらせることで、ブランドの多彩な側面を描いている。
例えば、ウィメンズの“Incazzata” (イタリア語で「腹を立てている」の意)はゴールドの“GG”ボタンをあしらった1960年代風の真っ赤なショートコートで情熱的な気性を映し出し、“La Cattiva”(イタリア語で「悪女」の意)はクロコダイル模様のレザージャケット、セミフレアスカート、ロングブーツを軸にしたオールブラックのスタイルでファム・ファタールのような凛としたエレガンスを体現。メンズの“Direttore” (イタリア語で「責任者」や「監督」の意)は端正なスーツスタイルにティアドロップサングラスや大ぶりな腕時計を加え、“Figo”(イタリア語で「男前」の意)は素肌の上に黒のバイカージャケットを羽織り、“ホースビット”の金具をあしらわれたジーンズやスニーカーを合わせている。
デムナがルックのスタイリングや仕草を通して表現したのは、「気取らない余裕と計算された無頓着さ」と解釈するイタリア流のエフォートレスなエレガンス「スプレッツァトゥーラ(sprezzatura)」。デザインはマキシマリズムとミニマリズムの間を行き来する。またブランドの伝統を受け継ぐ“グッチ バンブー 1947”や“ホースビット”ローファー、“フローラ”プリント、“GG”パターンなどシグネチャーアイテムやモチーフも再解釈し、随所に取り入れた。
デムナが語る新たな挑戦
デムナは、ブランドの原点を物語るようにトランクから始まるルックブックを「小さな一歩」とし、「私はまだ『グッチ』のビジョンを定義しているわけではないが、それを築き上げる基盤は整っている。私の再解釈を通じて『グッチ』に対する理解と認識をリセットしたい」とコメント。さまざまなキャラクターを作った理由については、「『グッチ』では、アティチュードも重要。これらの人物は皆自信に満ち、独自の視点を持っている。そして、ファッションを愛し、服を愛しているんだ。私にとって、これらの原型は全て『グッチ』の人々、つまり将来のグッチの顧客を表している。彼らはそれぞれ、このコレクションの中に自分に関係のある何かを見つけられるだろう。一つのシルエットや一つのアイテムで、好きか嫌いかだけの状況ではない」と説明する。
そしてミニマリズムへの挑戦を認め、「私にとってとても新しく、非常に刺激的な試みだ。というのも、デザインにおいて取り組むのが最も難しい美学であり、私はそれを現代的な手法で表現したいから。トム・フォード(Tom Ford)時代の作品に多くのミニマリズムの参照を見出し、非常に大きなインスピレーションを得ている。この先もそれを発展させていきたいと思う」と述べた。
デムナによる初のランウエイショーは2026年2月に開催予定。ただし、今週行われる2026年春夏ミラノ・ファッション・ウイーク期間中の9月23日夜にはイベントを開き、スパイク・ジョーンズ(Spike Jonze)とハリナ・レイン(Halina Reijn)が監督した短編映画「ザ タイガー(The Tiger)」を披露する。また、9月25日から10月12日まで、ミラノ、東京、パリ、ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドン、北京、上海、シンガポール、ソウルにある10店舗で、今回発表したコレクションを限定販売する。