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シャネルからH&Mまでが署名する環境保護の協定 主導するケリングのピノー会長に聞く

 「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などを擁するケリング(KERING)は、サステイナビリティーに取り組む先進的企業だ。トップのフランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼最高経営責任者は自ら旗振り役となり、企業の枠を超えて気候変動、生物多様性、海洋保護の3分野で実践的目標を達成する「ファッション協定」を主導する。同協定はシャネル、エルメス、ナイキ、アディダス、「ザラ」を擁するインディテックス、H&Mヘネス・アンド・マウリッツグループなど主要企業32社が署名する。中国本土のサステイナブルなイノベーションを表彰する「Kジェネレーション アワード」のために上海を訪れたピノー会長兼CEOが、グループインタビューで語った内容からファッション協定について紹介する。

――ファッション協定を主導することになったきっかけは?

フランソワ・アンリ・ピノー=ケリング会長兼最高経営責任者(以下、ピノー会長):ファッション協定は、2019年4月にエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領が私に依頼をしたところから始まった。大統領はフランスの企業があまりサステイナビリティーに積極的ではないことを懸念しており、またアメリカがパリ協定から脱退したこともあり、サステイナビリティーに向けた取り組みが想定よりも進んでいないことに少しフラストレーションを感じているようだった。そこで大統領は8月にフランスで開催されるG7サミットで、業界を挙げて結束すればこんなことができるというところを他国の首脳に見せたかったのだと思う。それで私に連絡がきて、ファッション業界を中心とした協定を策定してほしいと依頼された。私はある程度の規模があって影響力を持つブランドや企業に声をかけ、最初の32社が集まって署名をした。

――多くのアパレル会社が参加するよう働きかけているが、順守必須の規制ではない。将来的にこれが必須のものとなるのか?

ピノー会長:ファッション協定は、かなり野心的な目標値を設定してそれを達成するためのものだ。3つの分野で目標値を設定している。

1つ目は気候変動の危機に関するもので、現在から2100年までの気温上昇を1.5度未満に抑えるため、50年までに温室効果ガス排出量ゼロの実現を掲げている。署名した企業はそのためのアクションプランを作成し実践する。つまり、参加企業はそれぞれカーボンフットプリント(二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量)を削減しつつ、次のステップとして再生可能エネルギーに切り替えていくことになる。

2つ目の生物多様性については、エコシステムと多様な種の保存に対して、署名した参加企業はそれぞれ生物多様性に関する具体的な戦略を策定する必要があるが、素材をどこで調達しているかなどのビジネスモデルや、会社の立地条件などによって各社で異なるものになるだろう。

3つ目は海洋保護に関するもので、使い捨てプラスチックの使用を段階的に廃止したり、洗濯の際に抜け落ちて海を汚染する極小の布地粒子、マイクロファイバーの問題に取り組んだりすることで、ファッション産業が海洋に与える悪影響を削減するものだ。

ファッション協定は、これらの問題について参加企業がそれぞれ取り組んでいくものだ。

――ファッション協定の意義は?

ピノー会長:環境保護は、なかなか状況が進んでいないように思えることもある。こうしてたくさんの企業が同じ目標に向かって同時に行動すれば、より大きな影響を及ぼすことができるというのがファッション協定の利点のひとつだ。まずはそれぞれの企業が、それぞれにできることをする。それが合わさることで大きく前進できるというのが、私のビジョンだ。参加企業のCEO全員と会ったが、みんな例外なく、とても熱心な活動家ばかりだった。10月24日にはパリで初の会合がある。そこでは、ガバナンスや前述の3項目において行動計画を策定する。話すだけではなく、実践に移せるように行動計画を策定し、目標を達成するためのものだ。