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男性と女性、それぞれが脱ぐべき“重たい鎧” スタイリング企業の多様性を考えるイベントで業界人が語る

 パーソナルスタイリングサービス「ソージュパーソナル」を手掛けるモデラートはこのほど、ダイバーシティー(多様性)を考えるイベント「BLESS THE DIFFERENCE」を開催しました。“ジェンダーバイアスにとらわれない世界を、アートとパーソナルサービスを通して描く”というテーマのもと、インスタレーションアートのとともに、ポーラ ザ ビューティ銀座店でのパーソナルスタイリング・メイクの体験会を実施。インスタレーション会場では、性別も人種も分からない人々が、その心の中さえも読み取れない表情で整然とウォーキングする映像が投影されていました。まっすぐに遠くを見据えて歩く彼ら(彼女ら)は、迷いもなく、新しい道を突き進んでいるよう。モデラートの市原明日香・代表は、「見る人それぞれに感じ方を委ねるアートが、多様性の考え方とフィットしました」と説明します。

 同展の記者発表会では、そんな“多様性”をテーマに、ジェンダーやパーソナルサービスに造詣の深いスタートアップ経営者の方々を迎え、トークセッションが催されました。モデレーターを務めたのは、軍地彩弓gumi-gumi最高経営責任者(CEO)兼「ヌメロ・トウキョウ」(扶桑社)エディトリアル・アドバイザー。ミレニアル世代の女性たちに向けたクリエイティブスクール「SHElikes」を手がける中山紗彩最高経営責任者(CEO)、出張料理サービス「シェアダイン」の井出有希・代表、オーダーメードスーツ「ファブリックトウキョウ」の森本萌乃プランナー、女性に特化した転職支援サービス「LiBzCAREER」を運営するLiBの松本洋介CEOという、まさに多種多様な方々が登壇し、多様性に寄り添うパーソナルサービスの新潮流について、それぞれの意見を交わしあいました。

 正直な話、「女性のための~」という枕詞がついた企業の方が多いので、なんだかんだ女性が主語のトークが進むのだろうとタカをくくっていたのですが(笑)、その考えは松本CEOの一言で吹き飛びました。彼は「ジェンダーというと女性に目を向けがちですが、男性だって当事者なんですよ」とピシャリ。「女性が働きやすい環境って実は、ジェンダー問わず、誰もが働きやすい環境なんです」。育児や介護など、誰かを支えながら働くスタンスは女性だけのものではなく、男性にだって起こりうる時代。さらに「今、個人の価値観の方が早くインクルージョン(包摂・包括)され始めている。男性も『稼がないと』『働いて養わないと』といった“男らしさ”のバイアスに悩んでいたんです。そんな男性たちも肩の力が少し抜けて、少しずつ変わり始めている。でも、まだ成功モデルが追いついていない」と続けます。転職市場では、結婚や子育てといったライフステージの変化や、これからの人生設計を見据えてキャリアを考える女性の悩みに目が向きがちですが、実は、男性は男性で重たい鎧を背負っている。市原代表も「ソージュ」にスタイリング相談に来る消費者について「女性の服装の悩みを解決したい、という思いからスタートしましたが、管理職クラスになると男性からの問い合わせも多いんです」と明かします。そもそもジェンダーバイアスって、女性だけが主語じゃない。男性だって自己表現に悩んでいる。すでに自分にバイアスがかかっていた、と恥ずかしくなった瞬間でした。

 そして男性の鎧の象徴とも言える、スーツ。パーソナルオーダーを手がける森本プランナーは、「心にも体にもフィットするスーツを、ファッションとして届けたいという思いで作っています。この夏、試験的にメンズのパターンを使ったウィメンズのスーツ企画も始動しました」。特にジェンダーやマイノリティーといったワードには触れずに発信していたそうなのですが「自身の性に悩んでいるというお客様からも反響をいただいていて。そんな方々に選択肢を増やせたことにやりがいを感じています」と、新たな役割にも気づいたそう。「メンズ仕立てのジャケットはトレンドアイテムの一つ。男女が共通のシルエットの洋服を着ているというのは、今季のコレクションでもポイントでした」と軍地アドバイザーも共感していました。

 ゴールドマン・サックス(GOLDMAN SACHS)など外資の金融会社でキャリアをバリバリ積んでいた井出代表は、育児でお子さんの偏食に直面し、食の悩みに寄り添う出張料理サービスの「シェアダイン」を創業しました。専門性の高いシェフが悩みを聞き出し、最適な料理を、その家庭のキッチンで作ってくれるという画期的なサービスです。「日本には、人に作ってもらうことに罪悪感を感じる考え方が依然として存在します。でもパーソナライズすることで得られるメリットは、かなり大きい。もっと理解を深めてもらい、気軽に頼める文化を作りたいです」。“家事も育児も自分がやらねば”という女性の重たい鎧もいつか脱げるように。そっと寄り添いサポートしてくれているんですね。多様性を認める働き方が一層“世の中ゴト”になるには「身近なロールモデルがもっと増えないと」と話すのは、ウェブデザイナーやマーケターなどの養成カリキュラムを用意し、自分らしく働くことを応援する「SHElikes」の中山CEO。「これまでは『管理職などで活躍している女性は、家庭を犠牲にしている』というイメージがどうしても拭えなかった。でも今は、肩の力が少し抜けて『目の前にいる大事な人を幸せにしたい』というシンプルな動機で、仕事と家庭を両立する女性が増えているのも事実。そんなポジティブなオーラを持っている人がSNSで発信している姿を見て、ミレニアル世代にも響き始めています」。

 “ボーダーレス”など“〇〇レス”についての考え方の浸透が、先進国の中でまだまだ遅いことも指摘します。軍地CEOは「大人よりも、若い子たちの方がジェンダーのバイアスが全然かかっていないと思んですよね。私たちも、もっと身近な人たちと話し合うことが大切かなと」とコメント。正解はないと思うけれど、いろいろな人とたくさん話すことで荷をおろすこと。「それが、生きたいように生きられる社会に繋がる、ハッピーの一歩なのかなと思います」(軍地CEO)。

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