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パリのニッチフレグランス「ヒーリー」 マイケル・ジャクソンの陶製彫刻から着想した香りとは?

 パリ発フレグランスメゾン「ヒーリー(HEELEY)」が今春、約1年半ぶりとなる新作「ヒーリー オードパルファン ブラン プードル」を発売した。同メゾンは2017年に発売した「メゾン キツネ(MAISON KITSUNE)」とのコラボ香水が新たなファン層を獲得。今夏にはメゾン初の旗艦店をパリのパレ・ロワイヤルにオープンする予定だ。パウダリーなホワイトムスクの香りが男女を問わず人気を集めている、新作オードパルファン「ブラン プードル」について調香師のジェームス・ヒーリー(James Heeley)に話を聞いた。

WWD:「ブラン プードル」のテーマは?

ジェームス・ヒーリー調香師(以下、ヒーリー):前作は「メゾン キツネ(MAISON KITSUNE)」とコラボして日本のユズ湯から着想した香水を作りました。新作では真逆の香りを作りたいと思いました。というのも、ナチュラルでライト、フレッシュな香調が、僕が作る香水の個性の1つとしてトレードマークのようになっていますが、新たな面を探したかったのです。数年前にロシアのハイファッション・マガジン「ガラージュ(Garage Magazine)」からの依頼で、雑誌の付録用に香りを作ったことがありました。爪でこすると香りが弾けるマイクロカプセルを紙に印刷したんです。それが今回の「ブラン プードル」のもとになりました。着想源となったのは陶製の彫刻です。ニューヨークの現代美術家のジェフ・クーンズ(Jeff Koons)の作品の中に、歌手のマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の膝に彼のペットのチンパンジーの“バブルス”が腰かけている作品があるのですが、その像から香りのイメージを膨らませました。

WWD:具体的にどんな香りですか?

ヒーリー:その作品から受けた印象を再現するために3つのアイデアを使いました。その像は床に座っていて、周囲を小さな花が囲んでいます。そこからスミレやジャスミンなどのフローラルノートを取り入れました。陶磁器の純白のパウダーを表現するためにパウダリーなホワイトムスクを使いました。一番難しかったのはチンパンジーの“バブルス”の表現で、ジャコウネコの分泌物から採れるシベット(霊猫香)といわれる香料にたどり着きました。それは糞尿のようなニオイなのですが、クラシカルな香水ではとても重要な香料で、官能性や肉感を表現するものです。フローラルノート、ホワイトムスク、シベットのバランスと、バニラとサンダルウッドを最後に加えることで香りが完成しました。まさに、フランスの陶磁器をほうふつさせるような香りです。

WWD:マイケル・ジャクソンがモチーフのアート作品が着想源というのは、意外性があり面白いですね。

ヒーリー:マイケル・ジャクソンと“バブルス”の像からさらにイメージを膨らませて、1980年代の音楽シーンのムーブメント、ニューロマンティック(排他的で退廃的なムードを持ったテクノミュージック)からもインスパイアされました。ロックバンドのヴィサージ(Visage)の男性シンガーが顔を白く塗っていたあのイメージです。シンセサイザー・ミュージックは科学や未来を感じさせるのにロマンスが溢れています。ジェンダーやスタイルもミックスしたカルチャーで、当時は華やかに着飾って毎晩クラブに出かけていたんです。

WWD:「ブラン プードル」はどんな人やシーンに合うと思いますか?

ヒーリー:香水の中には夏に合うものや冬に合う香りというのもありますが、「ブラン プードル」は1年を通して使いやすいと思います。すごく特徴があったり、強い香りだったりするわけではなく、肌に長い時間とどまるので毎日使うのにとても適しています。香り方は王道のフレンチスタイルですが、香り自体は非常にモダンでコンテンポラリーなものです。柔らかくて温かみのある、本物の肌のような香り。まるでお風呂上がりのような。女性らしい香りですが、香水にはルールがないのであえて男性が使うのもユニークでかっこいいと思います。