フォーカス

ドン・Cに聞くストリートとスニーカーカルチャー「今は誰でもウェルカムな時代」

 カニエ・ウェスト(Kanye West)の元ツアーマネージャーだったドン・C(Don C)は、自身のブランド「ジャスト ドン(JUST DON)」や、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)と共に運営するセレクトショップ、RSVPギャラリーなどを手掛けている。現在のファッションシーンでメキメキと存在感を増すアーバンカルチャー(ヒップホップなどブラックカルチャーの総称)を代表する一人だ。スニーカー事情にも詳しく、今年「ジョーダン ブランド(JORDAN BRAND)」とコラボし、自身のシグネチャーモデル“エア ジョーダン レガシー 312(AIR JORDAN LEGACY 312)”シリーズを発表した。「WWDジャパン」12月3日号で特集した「コンプレックスコン(ComplexCon)」で、スピーカーを務めたドン・Cにストリートとスニーカーカルチャーについて聞いた。

WWD:「コンプレックスコン」についてどう思う?

ドン・C:この規模でコミュニティーを一堂に会することができるイベントは重要だと思う。実際に誰かと会ってネットワーキングしたり、何かに参加したりできるし、今やカルチャー系のコンベンションといえば「コンプレックスコン」だ。出店するブランドには、つまらなくならないよう毎年工夫してクリエイティブになって欲しい。前回までと比較して有名ブランドがあまり出店していない。それがいいことなのか悪いことなのかは今の段階ではわからない。

WWD:スニーカーは「コンプレックスコン」のキーワードの一つだが、なぜみんなスニーカーに引きつけられるのか?

ドン・C:スニーカーはストリートカルチャーの基盤となるものだからね。多くのキッズにとって、最初に手にするコレクターズ・アイテムなんだ。例えば「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「グッチ(GUCCI)」なんかはあまりに高価で、とてもじゃないけど手が出ない。でも「ナイキ(NIKE)」と「オフ-ホワイト」のスニーカーなら110ドルだし、150ドルも出せば“エア ジョーダン 1(AIR JORDAN 1)”が買えて、しかも「バレンシアガ」の“トリプルS(TRIPLE S)”を履いている奴と同じぐらいかっこよくなれる。僕も子どもの頃、高価なアイテムは買えなかったけど、スニーカーなら集められた。そのうちトレードすることを覚えて、違う地域には地元にないカラーがあるとわかってトレードするようになったんだ。だから、スニーカーは重要なものだし、僕たちの文化の基盤なんだよ。

WWD:知らない人とも、スニーカーを通じて交流できるということ?

ドン・C:まさにその通りだよ。僕の好きなカルチャーはスニーカーとスポーツなんだけど、どちらも人を団結させるんだ。バックグラウンドが違う人間同士でも、“エア ジョーダン 1”やコービー・ブライアント(Kobe Bryant)が好きだという共通点があることでつながれる。スニーカーカルチャーで誇りに思うのは、非暴力を広めているところだね。暴れたりしたら手に入らないと知っているから、みんなちゃんと大人しく列に並ぶ。それにスニーカー・ヘッズは金が必要だから、ビジネスセンスを磨く場にもなる。3足買って2足は売る、といった工夫をするようになるんだ。

WWD:現在のメディア・インフルエンサーの多くがアーバンカルチャー(黒人を中心としたファッションやヒップホップカルチャーなどの総称)出身なのはなぜ?

ドン・C:今の世の中がメルティングポット(人種的・文化的な多様性がある状態)だからだよ。昔、企業は僕たちを鼻であしらっていたし、彼らが一方的に影響を与える側だったけれど、その壁はもう破られた。僕たちの声を代表する人間が現れている。発信することは、前みたいに独占的じゃなく、誰でもウェルカムな時代なんだ。今年1番大きな出来事は、パリで行われた(「ルイ・ヴィトン」での)ヴァージル・アブローのショーだと思う。3000人のキッズを招待したんだ。だから、どうやってゲストリストに載せてもらうかという話じゃなく、みんなリストに載っていて、みんなVIPだった。今はそういう時代だし、この方向性で今後も成長していくと思う。

WWD:カニエやヴァージルとも仕事をしているが、彼らから学んだものは?

ドン・C:もう数えきれないぐらい、いろんなことを学んだよ。すぐには思いつかないぐらいたくさんあるけど、友情や誰かとリレーションシップを結ぶことのいいところは、自分にはない部分、苦手な部分を学べるし、逆も然りっていうことだね。僕の性格も、友達とかと「そんなふうにしちゃダメだ、こうした方がいい」みたいに話したりして形成されていった。それと、インクルーシブであることがとても大事。例えば、見下されたり排他的な扱いをされると、自分も誰かに無意識にそういうことをしてしまったりする。そういう意味で、カニエとヴァージルは「いつでもウェルカムだ」と迎え入れてくれたし、そうすることを教えてくれた。自分が持っているリソースを他人とシェアすることの大切さというのかな。

WWD:いろんなことに関わっているけど、自己紹介するときは何と言っている?肩書きは?

ドン・C:肩書きは関係ないよ。「イージー(YEEZY)」で働いていた時、カニエは肩書きは関係ないという考え方だった。小さな組織だと、いくつもの役割をこなさなくちゃならない。そこから組織が成長していくと、今度は仕事を割り振る役割も必要になるけど、僕は今自分で事業をやっているから、基本的には自分で何でもやる必要がある。だから、僕はCEOでもあるけれど、アシスタントやインターンでもあるんだ。トイレ掃除やゴミ捨てだってするしね(笑)。肩書きにこだわる人もいるけど、僕は逆に肩書きを持たないことにしてるんだ。誰かに肩書きを聞いたりもしないな、関係ないから。それより、まず名前と、何者なのか。つまり、その人がどんなことに興味があるのかに興味がある。肩書きなんて変わるものだしね。今はCEOでも、数年後にはインターンに仕事くださいって頼んでるかも知れないんだし(笑)。いい人間でいることが何より大事だよ。