ビューティ

出店が相次ぐセミセルフ型ショップ “気軽さ”を維持しながらもブラッシュアップは必須

 化粧品業界の好調な波は百貨店に留まらずセミセルフ型ショップにも広がっている。その勢いを表すかのように、今秋は新規出店が相次いだ。そしてこの勢いは2018年も継続し、出店に攻勢をかけるショップや話題の大型施設への出店を控えるショップもある。いまセミセルフ型ショップに求められているものとは一体何か。加速する出店の背景に迫った。

 三越伊勢丹ホールディングスが展開する「イセタン ミラー メイク&コスメティクス」は、10月18日に新丸の内ビルディング店、同月29日には首都圏外で初となるekie広島店をオープン。そして来年3月には東京ミッドタウン日比谷に「イセタン ミラー」史上最大級の店舗が登場する。「ここまでコスメ業界全体が盛り上がっているのは、女性の社会進出が大きい。そして近年はSNSの波及によりセルフィーが浸透し、顔写りに重きが置かれるようになったこともある」と坂井優香・百貨店事業本部中小型店事業部 イセタンミラー・新業態営業部マネージャーは語る。世の中に物があふれていても、自身が美しく健康でいないと何事も楽しむことができないという“かえのきかない自分という資産”に投資するという価値観に多くの女性が行き着いたということも、ビューティや食の売り上げが長らく右肩上がりに表れていると分析する。こうした背景から、お客が「美しくなりたい」というニーズが高まり、その思いをサポートするために出店が増えているという。そして美と健康という概念から、メイクで気になる部分を隠したり取り繕ったりすることよりも、人間味がにじみ出るような素の美しさを求める声が増えており、ニーズの高いアイテムとしてカラーメイクは2ケタ伸長が続いているが、「最近はスキンケアの伸長率が高い」と話す。先行投資として若年層からもスキンケアやベースメイクのニーズが増え、スキンケアは「エスト(EST)」「THREE」、ベースメイクは「イヴ・サンローラン・ボーテ(YVES SAINT LAUREN BEAUTE)」「アディクション(ADDICTION)」などが人気。

 東京ミッドタウン日比谷店は、周りにホテルが多いことからグローバルなお客も取り込めると期待している。「日比谷は大人が多く集まる街なので、幅広い層を取り込んでいきたい。美をトータルでプロデュースする店舗として、『イセタン ミラー』では初となるショップインショップ形式のテナント区画を設けている。ブローを行える『メイク オーバー バー』や、美容機器を扱う『シックスパッド(SIXPAD)』『ヤーマン(YA-MAN)』、『アッカカッパ(ACCA CAPPA)』『シロ(SHIRO)』をショップインショップの形で提案する。また、初出店ブランドとして「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」「M・A・C」「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」「エピステーム(EPISTEME)」「エステダム(ESTHEDERM)」を導入。さらにスキンケアの充実を図りスキンケアブランドを複数そろえる。その他、ネイルやリップ、フレグランス、ナチュラルアイテムの編集も構え、標準店舗の約5倍である約670㎡の広さに、ラグジュアリーブランドを核とした約40ブランドの多彩な製品をそろえる。

新店を開けるたびにニーズのあるチャネルと実感

 エフ・ジー・ジェイが手掛けるビューティセレクトショップ「フルーツギャザリング」は、10月6日に東京スカイツリータウン・ソラマチ店をオープンした。17年は、大阪のくずはモール本館ハナノモール1階の店舗増床リニューアルを皮切りになんと6店舗をオープン。現在18店舗を展開しているが、2020年までに30店舗・売り上げ70億円を目指しているという。全国の条件がいいディベロッパーには積極的に展開していくという目標は当初からの考えであり、18年は3月1日に天王寺ミオ、3月21日には新静岡セノバに新店をオープンするなど勢いは止まらない。「東京スカイツリータウン・ソラマチ店もいいスタートを切れている。オープン後すぐの3連休は館のポイントアップデーとも重なり多くの集客ができた。セミセルフ型ショップが誕生してまだ5~6年で、新規チャネルという位置付けではあるが、新店を開けるたびにニーズが確実にあるチャネルだと感じている」と出合寛幸・取締役執行役員FG事業本部長は語る。

 現在、「フルーツギャザリング」の既存店ベースの売り上げは前年2ケタ増。ここまで成長を続けている理由について、「セミセルフ型ショップは駅ビルや商業施設への出店が多い。そして百貨店だけでなくさまざまなチャネルでコスメを購入する女性が増え、仕事帰りや休日の生活導線にそれらの施設が含まれることからセミセルフが選択肢に入るようになった。『フルーツギャザリング』のMD構成や価格帯、店舗の見せ方などはやや若年層よりのため20~30代がボリュームゾーンではあるが、幅広い層から利用されている」。広い客層から受け入れられるのは、「フルーツギャザリング」の特徴であるMDの幅の広さにつながっている。「ラグジュアリーブランドから知る人ぞ知るというブランドまで製品がそろっている。“あれもこれも、あんな風にこんな風に選びたい”といった、いまの女性が求める買い方が一つの店舗に詰まっている守備範囲の広さが強みだ。さらに、お客さまが気軽に立ち寄り、店舗を出るときにはきれいになっているということをかなえるための、スタッフのメイクアップ技術を磨く研修や勉強会を頻繁に行っている。外部講師による、メソッドに基づいた独自の美しさに導くテクニックやアドバイス、さまざまなコスメの可能性を提案できるのはもう一つの強みだ。そして、お客にさらなる選択肢や可能性を広げる提案をしたいという考えから、「この勢いに乗りながら、百貨店のラグジュアリーブランドの取り扱いも増やしていきたい。また、高価格帯のプレミアムラインの導入も考えていく。今後も、セミセルフへの気軽さや楽しさは維持しつつ、見せ方や見られ方を格段にレベルアップしていく」と意気込む。

コンサルティングサービスの強化

 高島屋グループのファッションプラザ・サンローゼは10月25日、セミセルフ型ショップを刷新し、「タカシマヤ コスメティックス ミリオン・ドアーズ」として流山おおたかの森S・Cに1号店をオープンした。国内外の約20のコスメブランドを集め、初年度売上高は2億5000万円を目指す。同社は、2012年に「ミリオン・ドアーズ タカシマヤコスメティックス」を展開していたが、「5年間におよぶ店舗運営で培ったノウハウを基盤として、化粧品のセールスにおけるコンサルティングやカウンセリングの必要性や人的スキルの重要性についてあらためて認識を持ち、その点を強化した」と広報担当。名称を「タカシマヤコスメティックス ミリオン・ドアーズ」に改め、セミセルフスタイルのセレクト型コスメティックショップとして「入店しやすい」「親しみがありながらも上品」「高島屋のコスメフロアのスピンオフ」といったストアコンセプトで展開する。あわせて、「次世代顧客のために百貨店化粧品へのエントランス機能を果たしていく」のも狙いの一つだ。

 売り場面積155平方メートル内には、「シャネル(CHANEL)」「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」「SHISEIDO」「ポーラ(POLA)」「THREE」などグローバルブランドからナチュラルブランド、雑貨など約20ブランドがそろう。商品構成比はベースメイク30%、スキンケア30%、カラーメイク28%、ボディー・ヘアケア・香水10%、雑貨など2%。「メイクアイテムがクローズアップされる中、顧客との継続的な関係を築く上で、カウンセリングの重要性に着目した。セミセルフ本来の魅力であるブランドの垣根を越えた、選べる・試せる“気軽さ”に加え、肌測定器を備えたカウンセリングカウンターを設置するなど、よりお客様のニーズに応えるためのコンサルティングサービスを強化する。また、タカシマヤカードが同率付与されるシームレスなサービスの提供により、髙島屋グループのシナジー効果をあげていく」。今後、18年春をめどに2号店を都内に開設予定で、20年までに10店舗体制を確立する。

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