REPORT
リミックス世代ならではのさらなるダダイズムを望む
森川マサノリ・デザイナーはかつて、「僕らは、リミックス世代。“元祖リミックス世代”と呼ばれる上の世代が決してミックスしない、もしくは『敢えて』ミックスしてきたジャポニスムさえ、自然に取り入れることができる」とコメント。異なるものを組み合わせることで新たな魅力を見出す芸術「ダダイズム」を語源とするブランドのデザイナーとしての自信をのぞかせていた。2016年春夏の「クリスチャン ダダ」ウィメンズ・コレクションは、そんな強みを発揮したスタイルだ。
「バラード」と銘打ったコレクションは、メンズより、また、世間一般が思う「クリスチャン ダダ」よりロマンティックだ。マキシ丈のワイドパンツ、アコーディオンプリーツのロングスカートなどがキーアイテムのコレクションは、レースやチュールが目白押し。ハイカラーもしくはラッパ型スリーブのシャツや、ネックピースが、ドラマティックなムードをさらに掻き立てる。
しかし、そんなロマンティックをベースに、必ずなんらかの違和感が潜んでいる。例えばプリーツのスカートやマキシパンツは、時折ハードなレザーで成形。ボトムスとは対照的にコンパクトなトップスはオリエンタルムードにあふれ、マオカラーのチャイナジャケットやクジャクの羽根の刺しゅうなどがチラホラと現れる。足元は、厚底サンダル。パイソン柄で切り替えたり、トリプルストラップだったり、シャークソールだったり。ロマンティックをベースにある時はロックやパンクのムードをにじませ、ある時は世界を股にかけた。そのリミックス感覚はアクセサリーにさえ現れている。インスピレーション源は、森川デザイナーのかつてのデート。鎌倉に行き、中華街でご飯を食べた、ワイドパンツを履きこなしていた彼女との思い出だ。
欲を言えば、せっかくのリミックス感覚なのだから、今後はより自由な感覚でモノ作りしても良いのでは、と思う。和洋折衷のコレクションは、一見すると多種多様だが、ベースはロマンティックと限定的。そこに加えたのもオリエンタルやストリートなど、数あるテイストの中のごく一部。リミックス世代の可能性を狭めていると言えなくもない。
もっと進化するだろうし、毎日ファッション大賞の新人賞・資生堂奨励賞を受賞した彼には、それを期待したい。
