ファッション

今、ビンテージサッカーウエアが熱い 「4BFC」オーナーが語る市場の今とレアアイテム3選

「ワールドカップ 2026」の開催もあり、近年ファッションシーンで存在感を高めているサッカーウエア。22年頃から定着した“ブロークコア”のトレンドを経て、今やサッカーの枠を越え、街着やフェスウエアとして親しまれている。

なぜ、サッカーウエアはここまで支持を集めるようになったのか。国立競技場近くに構えるフットボールセレクトショップ、「4BFC(フォービー・エフシー)」の運営を担う森田俊樹共同オーナーに、ビンテージサッカーウエアの魅力と市場の今について聞いた。

幼少期の思い出と、独自のコミュニティーの誕生

「4BFC」はフットボールセレクトショップ「ベーネ(BENE)」、フットボールカルチャーマガジン「シュウキュウ(SHUKYU)」、フットボールチームデザイナー「シティボーイズ FC(CITY BOYS FC)」、フットボールメディア「フットボール&イングリッシュ(FOOTBALL&ENGLISH)」の4者共同で運営している店舗だ。世界各国のサッカーウエアや雑誌、アパレル、雑貨など、ビンテージから最新のものまで、森田オーナーの審美眼でセレクトしたアイテムをそろえるほか、展示やイベントなど、多様な形でフットボールの魅力を発信している。

同店の森田オーナーはプロを目指すほどのサッカー少年だったが、高校時代に怪我でその道を断念。その後はファッションへの関心から文化服装学院へ進学し、在学中から世界各国を旅しながら写真撮影とフットボールをする生活を送った。帰国後、企業でデザインやバイイングを経験し、19年のコロナ禍直前に独立。自身のサッカーウエアをSNSで紹介し始めたのが、イタリア語で“良い”を意味する「ベーネ」の起点となった。

そんな森田オーナーの原点は幼稚園時代に祖父母からもらった、イングランドのクラブチームのユニホームにあるという。「祖父母が海外土産として買ってきてくれるユニホームやビデオ、雑誌を通じて、小さなころからサッカーカルチャーに触れていました。あるとき、欲しかったマンチェスター・ユナイテッドFC(Manchester United FC)ではなく、別の青いユニホームをもらったことがあって……。それから、欲しいものは自分で『確実に手に入れたい!』と強く思ったのが、サッカーウエア収集の始まりでした」と振り返る。

“ブロークコア”がもたらした購買層の変化

ビンテージフットボールウエアの人気は、06年前後にコアなサッカーファンの間で最初の盛り上がりを見せた。それがファッションシーンへと波及したのは、コロナ禍の20〜21年頃。さらに、22年からの“ブロークコア”トレンドが拍車をかけ、一気にマス層へと浸透し、街中やフェスでよく見かけるようになった。

「『ベーネ』では、立ち上げ当初からフットボールの“外側にいる人たち”に魅力を伝えることを重視してきました。現在、来店される10代後半〜30代前半の多くは、純粋なサッカーファンというより、ファッションや音楽のカルチャーの延長としてウエアを求めてきてくれます」と森田オーナー。

インフルエンサーによる発信の影響力も大きく、モデルの柴田ひかりさんがプライベートで来店し、YouTubeなどで発信したことで女性層の来店も急増したそうだ。「若い世代には新鮮なストリートウエアとして、上の世代には90年代の空気感をまとった懐かしいアイテムとして映っています」と分析する。

価格を押し上げる「音楽」と「ストーリー」の相乗効果

現在、市場では特定のアイテムが著しく高騰している。その価値を決定づけるのは、デザイン性に加えて「音楽をはじめとする周辺カルチャーとの結びつき」だ。代表例が、マンチェスター・シティ(Manchester City)の熱狂的サポーターであるロックバンド、オアシス(Oasis)の存在。彼らの世界的再評価と現在のチームの強さが重なり、当時のオリジナルアイテムは市場で10万円前後で取引されることもあるという。

「ユニホーム以上に、当時のアウターや練習着、ニットといったアイテムの方が高値がつくケースも増えています。例えば、96年にオアシスが歴史的なライブを行った際、ロッカールームにあった『アンブロ(UMBRO)』製の練習着をリアム・ギャラガー(Liam Gallagher)が着用した、という背景を持つウエアです」。こうしたストーリーを持つプロダクトは、激しい争奪戦の的となるそうだ。

また、企業ロゴのデザイン性も大きな魅力だ。「ウォーカー(WALKERS)」や「ドリトス(DORITOS)」といったお菓子メーカーのロゴや、ウェストハム・ユナイテッドFCのように、かつて「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」がスポンサーを務めていたチームのウエアなど、ファッションブランドとの意外なつながりを持つアイテムも若い世代から支持を集めている。

森田オーナーが所持する非売品サッカーウエア3選

サッカーウエアに詳しく、「収集癖がある」という森田オーナーに非売品のレアなサッカーウエアを3つ教えてもらった。

“ハイバーニアンFC”のアウェイユニホーム

まず紹介するのは、スコットランド東部の都市・エディンバラを本拠地とする“ハイバーニアンFC”が、1996〜98年シーズンに着用していたアウェイユニホーム。デザイン性が高く、ファッションアイテムとしても存在感を放つ1枚だ。

「気に入っているポイントは、ビールブランド『カールスバーグ(CARLSBERG)』のスポンサーロゴと、イギリスの老舗スポーツブランド『マイター(MITRE)』製であること。世界中にはたくさんのチームユニホームがありますが、パープルをベースにグリーンとホワイトを組み合わせた配色はとても珍しい。また、アウェイユニホームはホームユニホームに比べて生産数が少なく、市場にもあまり出回らないため、非常にレアな1枚です」。

さらに、このユニホームにはカルチャーとの接点もあるという。「1996年には、エディンバラを舞台にしたイギリス映画『トレインスポッティング』が公開されました。作中には主人公たちがこの“ハイバーニアンFC”を応援していることが分かるシーンも登場します。そうした背景を知った上で試合や映画を見ると、また違った楽しみ方ができると思います」。

“リヴァプールFC”のニットセーター

2つ目は、イングランドの名門クラブ“リヴァプールFC”のニットセーター。1980年代に製造されたもので、フットボールアイテムでは珍しいニットアイテムだ。保存状態も非常によく、一目惚れしたという。

「ニット製品の生産が盛んなイギリスらしさを感じられるアイテムです。『アンブロ』の小文字ロゴや、リヴァプールの街の象徴であり、クラブエンブレムにも使われている“ライバー・バード”の刺しゅう、そしてボーダーラインのバランスが気に入っています」。

“マンチェスター・ユナイテッドFC”のプルオーバージャケット

最後は“マンチェスター・ユナイテッドFC”のプルオーバージャケット。1993〜95年ごろに選手の練習着として使われていたもので、サッカーウエアではなかなか見かけないインパクトのある総柄プリントが印象的だ。

「このモデルは生産数が非常に少ないんです。この年代以降は、コットン製のアウター自体がほとんど作られなくなりました。印象的な柄やシルエットはもちろんですが、化学繊維が主流のフットボールアイテムの中では珍しいコットン製で、長年着込むことで生まれた色落ちや風合いも大きな魅力だと思います」。

着ている人に「それ売って」と交渉することも!?

これらの希少なビンテージアイテムを、森田オーナーは主にロンドンで買い付けしている。プレミアリーグのシーズンに合わせて年間計4カ月ほど現地に滞在し、現地の熱狂的なコレクター同士のコミュニティーに入り込んで在庫を譲り受ける。「ときには街中で格好いいウエアを着ている人に直接声をかけ、『それ売ってください』と、交渉することもあります(笑)」と、驚きの買い付け方法も教えてくれた。

一方で、市場の過熱に伴いフェイク品も増加している。「本物のビンテージには、生産工場や選手支給用、一般用など、それぞれの仕様において構造的なパターンはほぼ決まっています。生地の質感に加え、縫い目の形やタグのコードなど特有の仕様があるため、違和感にはすぐ気づく。だからこそ、購入するならオンラインではなく、オフラインがおすすめです。アイテムに直接触れて、細かくチェックするのが一番です」。実物のディテールを確認して購入することが重要だそう。

また、仕入れにおける森田オーナーの基準は厳しい。「100枚のユニホームに出合っても、買い付けるのは1〜2枚ということもある。服としての形状や素材感が優れていることは大前提として、特定の試合での勝利やアーティストの着用といった『カルチャーの文脈』が重なり合っているものを厳選するようにしています」。

競技の枠を超え、「匂い」でフットボールの魅力を表現

ワールドカップなどのビッグイベント後、この熱狂をどう維持し、次のカルチャーへとつなげていくのか。森田オーナーが見据えるのは、ウエアの枠を超えた新しいライフスタイルの提案だ。「実は今、ベトナムでオリジナルのキャンドルとお香の制作を進めています。一見共通点が見当たらない“サッカー”と“フレグランス”ですが、世界中のスタジアムで感じた熱気や空気感を、僕なりに『香り』というプロダクトで表現したいのです」。将来的には、集めたアーカイブのサッカーウエアを公開する展覧会も実施したいそうだ。

次なるトレンドについて問うと、「ワールドカップ優勝国の90年代前半〜半ばのゲームシャツや、大国相手にジャイアントキリングや番狂せを起こすような、マイナー国のウエアも注目度が高まりそうです」と回答。特に90年代のプレミアリーグを席巻した「アンブロ」製プロダクトの価値は、今後さらに高まると予想する。大会のドラマがアイテムの価値に直結するフットボールならではの力強さは、これからもファッションシーンに新たな刺激を与えるだろう。

店舗詳細

▪️「4BFC/BENE」

住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷1-21-5 4F/B
営業日:金曜日、土曜日、日曜日、祝日
営業時間:13:00〜20:00

> 公式インスタグラム

PHOTOS:MAIKO NAKAMURA

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

百貨店の「売る力」とは何か 有力7店舗の店長を直撃

「WWDJAPAN」7月20日号は、夏恒例の百貨店特集です。コロナ明け以降、百貨店のビジネスモデルが少しずつ変化しています。キーワードは「売る力」。デジタルの力も活用しながら、一人一人の顧客に向けて最適な提案を行い、関係性を深める。顧客一人当たりの年間消費額を上げる。あるいは百貨店でしか提供できない体験コンテンツを作り出す。特集では各エリアを代表する7店舗の店長のインタビューなどを通じて、百貨店の…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。