
福岡発のファッションブランド「ナインアール(rrrrrrrrr)」が、みかんの果皮と剪定した枝葉を染料の一部に活用した新作スウェットを発売する。販売開始は2026年1月8日。農家と連携しながら進める循環型共創プロジェクト「ハタケ ライフ カラー(hatake –LIFE COLOR)」の第3弾として展開する。
廃棄されてきた果皮と枝葉を、衣類の価値へ
「ハタケ ライフ カラー」は、野菜や果物のうち食用に適さない果皮や剪定枝を農家から買い取り、染料の一部として活用する取り組みだ。企業、農家、生活者が協働し、資源が循環する仕組みを構築することを目的としている。
今回の「みかんスウェット」では、福岡の丸茂農園で廃棄されてきたみかんの果皮と剪定枝葉を使用。天然由来の染料と化学染料をブレンドする「ハイブリッド染色」を採用することで、草木染めが抱えがちな再現性や堅牢度の課題に取り組み、日常着としての実用性を担保した。
染色後に残る出涸らしは、農業高校監修のもと堆肥化され、再び畑へ還元される。原料調達から製品化、そして農地へ戻るまでの循環を一つのプロジェクトとして設計している点が特徴だ。
9つの「R」を軸にしたブランド思想
「ナインアール」は、「ファッションが生み出す優劣をなくす」ことをミッションに掲げるブランド。Refined、Real、Rational、Reset、Radical、Reactなど、“R”を頭文字とする9つの価値観を中核に、流行に左右されない衣服づくりを行っている。
新作発売時に割引する早割制度や、受注生産を軸とした販売体制もその一環で、「流行が過ぎると価値が下がるという業界の慣習とは逆に、衣類の価値を守りながら在庫リスクを最小限に抑える仕組みを構築している」という。
今回のプロジェクトは、その中でもRecycle(資源に戻し再利用する)、Refined(洗練された素材を使用する)、Real(背景を正直に伝える)という3つの価値を体現する取り組みとして位置付けられる。国内の縫製工場や生地メーカーとの連携を深めながら、技術や文化を次世代へつなぐ役割を担っていく方針を掲げている。
メロン、桃に続く「畑から生まれる服」第3弾
同プロジェクトではこれまで、22年にメロンの皮、23年に桃の剪定枝を染料に用いたスウェットを発表してきた。第3弾となる今回は、果樹栽培の現場で日常的に発生するみかんの果皮と枝葉に焦点を当てた。
デザイン面では、袖に立体感を持たせるなど、染めの表情が引き立つ仕様を採用。単なる環境配慮型プロダクトにとどまらず、長く着続けられる一着としての完成度を追求している。