持続可能な社会の実現に向け、社会性と製品性の両面を評価するソーシャルプロダクツ・アワード(以下、SPA)はこのほど、2025年度の受賞製品を発表した。本年度のテーマである「令和6年度能登半島地震からの震災復興につながる商品・サービス」の大賞には石川県能登町でブルーベリーを栽培するひらみゆき農園のジャム「ごろごろ果実の能登ブルーベリー」が受賞。毎年共通の「自由テーマ」である「生活者が『持続可能な社会』づくりに参加できる商品・サービス」は、企業(三本珈琲、国分首都圏)・市民(鎌倉エシカルラボ)・行政(鎌倉市)が協働で展開する珈琲豆「鎌倉焙煎珈琲 フェアトレードかまくらブレンド」が賞を勝ち取った。
SPAは東日本大震災をきっかけに持続可能な社会の実現に向けて2012年にスタート。対象は生活者が購入可能なソーシャルプロダクツで、食品や住宅、旅行、金融製品などジャンルを問わない。審査員が製品・サービスの社会性、製品性、ストーリーを応募書類と実物から審査する。大賞、優秀賞、生活者審査員賞、環境大臣特別賞、審査員特別賞、ソーシャルプロダクツ賞を年度・自由テーマごとに選定する。
年度テーマで大賞を受賞した「ごろごろ果実の能登ブルーベリー」の平美由記ひらみゆき農園代表は「ブルーベリーは生で出荷できる時期が6〜8月と短い。それ以外でもブルーベリーを味わってほしいとジャムを17年から手がけている。ブルーベリーは、年間で1トン8000キログロムの収穫量があるが、そのうち約4割が規格外になる。それを活用して作っている。農園は高齢化が進んでいるが、私たち若手メンバーが産地を守っていきたいという思いが評価されてうれしい」とコメントした。
自由テーマの大賞「鎌倉焙煎珈琲 フェアトレードかまくらブレンド」の岩渕泰行・三本珈琲品質管理室課長兼研究・開発室は、「2050年に気候変動によりアラビカ種のコーヒー栽培適地が現在の50%にまで減少するという“コーヒーの2050年問題”がある。価格が高騰したり、美味しいコーヒーが飲めなくなったりすることを解決するための一つの手段として、全国に販路を持つ国分首都圏、鎌倉市のサポートにより24年8月にフェアトレード認証農園から調達したコーヒー豆を発売した。コーヒーを1杯飲むことで鎌倉市の緑地保全にも貢献できる仕組みも作っている。こうした3者連携に評価を得られた」と語った。
年度テーマ・自由テーマの生活者審査員賞には伊藤園のとろみつきのユニバーサルデザイン緑茶飲料「とろり緑茶」、ウテナの高知県北川村のゆずの種から抽出したオイルを配合したヘアケアシリーズ「ゆず油」シリーズが受賞。優秀賞は自由テーマのみで、デンソーの地域情報サービス「ライフビジョン」が選ばれた。年度テーマ・自由テーマの環境大臣特別賞に加賀木材の能登ヒバの端材を使用した100%天然成分のエッセンシャルウォーター「ノトヒバカラ エッセンシャルウォーター」、スリーピングトーキョーの国産有機大豆100%を使用した大豆ミート「ラベジ オーガニック」。ソーシャルプロダクツ賞はトヨクモの緊急時の安否確認から対策指示まで一括で活用できるシステム「安否確認サービス2」、ヘアサロンU+のカラーリング剤のプラスチックキャップをアップサイクルしたヘアブラシ「トク」などが獲得した。
中間玖幸SPA専務理事は「授賞式は毎年開催しているが、そこでは伝えきれない思いがあった。今回初めて製品の背景を発信できる場としてプレゼンの機会を設けた。社会全体にその思いが伝わることを願っている」と語った。