
パリス・ヒルトン(Paris Hilton)、ケイティ・ペリー(Katy Perry)、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)、ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)、リタ・オラ(Rita Ora)ーー名だたるハリウッドセレブから絶大な指示を得るネイルアーティスト、ブリトニートーキョー(Britney TOKYO)が、日本で初のアート展「Stay Wild!」を、8月11日まで伊勢丹新宿本店で開催中だ。赤、青、黄色など、ビビッドな色合いでデザインされた会場には、ネイルアートのように立体的なモチーフが配された大きなキャンバス、手書きの模様が配された招き猫、ざらつきやでこぼこ感がユニークな岩塩を使用した作品など、150点もの作品がならぶ。

成田亜由美=伊勢丹新宿本店 第1MDグループ 美術営業部 新宿アートギャラリー セールスマネジャー兼バイヤーに、今回のポップアップの背景を聞いた。「紆余曲折ありながらもアメリカで成り上がってきた彼女の姿はまさに、現代の“アメリカン・ドリーム“を体現するに等しい。伊勢丹の顧客にも若くして起業する人が多く、そういった人にとってもブリトニーさんのご活躍や作品は共感されるだろうと思い、今回話を持ちかけた。ネイルの素材をアートに活かした彼女の作品は、まさに現代アート。彼女にしか作れない作品だと思い、ぜひたくさん作ってほしいと依頼した」。2年ほど前に決定したという本ポップアップ。その後、約1年半で全ての作品を手掛けたという。
2005年からロサンゼルスを拠点に活動し、数々のセレブリティーからの指名、MOMA美術館とのコラボレーションやアメリカン・インフルエンサー・アワード受賞など、ネイリストとしての頂点とも思えるキャリアを持つ一方、「ネイリストは通過点」と語る彼女。その真意とは。
「当たり前にやらなくちゃいけないことをやっただけ」
ブリトニートーキョーの仕事術
PROFILE: ブリトニートーキョー/ネイルアーティスト、ポップアーティスト

渡米後に働き始めたネイルサロンで、自身が担当したネイルをSNSに投稿していたところ、有名セレブリティーから依頼のDMが届くように。今やセレブですら予約が取れない超人気ネイリストとなった彼女に、仕事への向き合い方を聞いた。
WWD:自身が思う強みと、仕事でのモットーは?
ブリトニートーキョー(以下、ブリトニー):私のいちばんの強みは、“運の強さ“。そして仕事で大切にしていることは、いつでも“Get ready”の状態にしていること。撮影の前日には基本的にお酒を飲まないですし、急に大量の素材が必要になった時に備えて素材はとにかく豊富に揃えておくーーいきなりやってきた依頼でも応えられるように準備しています。
こういった仕事への向き合い方は、ネイリストになった当時から変わっていないと思います。学校で出た宿題をやるのと同じで、“今やらなくちゃいけないことを今やる”を、当たり前にやり続けること。私はただ、その“当たり前”をやってきただけなんです。特に今は情報やトレンドの周期が早いSNS時代。今思いついたアイデアを今日発信しなかったら、明日は他の誰かがやってしまうかもしれない。だからこそ、“今”というスピード感はとても大事。
WWD:今ネイリストを目指している人にアドバイスをするとしたら?
ブリトニー:とにかく“基礎が大切”。私は日本の認定校に通っていたおかげで基礎をしっかり学んだからこそ、今の自分につながっているんだと実感しています。そしてこれはよくアシスタントにも言うのですが、外に遊びに行くこと。ゼロから新たなものを作ることはみんなができることではありません。練習も大事だけど、外に行って人に出会ったり、面白いものを見てインスピレーションを得ることで、新たな何かを作るヒントになると思います。
WWD:言語や文化の壁をも越えるコミュニケーション力の秘密とは?
ブリトニー:ファッションです。今も英語はあまり得意ではないんですが、昔から私が着ている洋服を見たセレブから「どこで買ったの?」「どのブランド?」と聞かれ、会話が広がることが多くありました。依頼してくれるセレブたちの中には「私服で来て!」と言ってくれる人も多くいて、とてもうれしいです。そして何より美容の仕事ですし、やっぱり身だしなみには気を付けたい。自分が着た時、そして他の人が見た時、ワクワクするような服選びを意識しています。
新たな道のスタート地点「Stay Wild!」
ネイリストからポップアーティストへ

華々しいネイリストとしてのキャリアを持ちながらも、「幼い頃から画家になるのが夢だった」という彼女。“Stay Wild”“Stay Wired”“Formless Grace”“Flow”“Wabi-Sabi Reloaded”“Awakening”“Kawaii & Beyond”“Unwrapped”と8つのセクションで構成される日本で初の展示「Stay Wild!」は、開催初日から多くの作品に“ご成約済み“の札が下げられ、8月9日はライブペイントも実施する。「やっとスタート地点!」と語る彼女は、小さな爪にアートを描くネイリストから、大きなキャンバスに描くポップアーティストへと自分の道を突き進む。
WWD:展示タイトル「Stay Wild!」の由来とは?
ブリトニー:日本にいたときは、周りの人と違うと“ハレモノ“扱いをされてしまうことも多く、生きにくさを感じてたんです。その後アメリカに移住して、人の良いところを見つけるような文化に「自分もワイルドに生きて良いんだ!」とうれしい発見ができ、“Stay Wild!”が私の座右の銘になりました。今回の個展に来てくれた人にも、私の作品を見てハッピーな気持ちになって帰ってもらえたらいいなって思います!
とはいえ、アメリカで生活する中で「日本っていいな」って思うことはたくさんあります。食べ物、物の色使い、“空気を読む“ような感覚ーーすてきだと思います。日本にいた時は当たり前で気づかなかったけど、日本の商品パッケージってかわいいと思うことも多いです。
WWD:今回の作品には塩を使った作品がよく見られました。
ブリトニー:人の手に触れる仕事だからか、私って結構“引き寄せがち“なんです。だから施術の時も自分は手袋をはめたり、日頃から盛り塩をしたりして、浄化するように心掛けています。世界各国の塩を集めていて、今回のアートにも使いたいなって思うようになりました。色々な国の塩を染色して、作品に取り入れています。
また、今回は私のラッキーカラーである“赤”も作品にたくさん取り入れています。赤は力が出るし、仕事モードにしてくれるーー自分のスイッチを“オン“にしてくれる色。このポップアップでは、見に来てくれた人が浄化されて、パワーアップして帰ってくれたらうれしいです!
WWD:画家としてのキャリアがスタートし、今目指すものとは?
ブリトニー:おごらず、謙虚に、やるべきことをやる。ネイリストという職業は私にとって通過点。だけど、ネイルがあったからアートにつなげることができました。まだまだスタート地点だけど、いつかネイルより画家としての比重が多くなって、アートの仕事だけで生きていけるようになりたいです。
私は欲張りなんです。どんな状況だって、1人の人間としてやりたいことを全てやりたいんです。近い将来に自分は、MOMA美術館やルーブル美術館に作品を展示して、12年後にはアーティストとしてラグジュアリーブランドからのコラボレーションオファーが届いて商品を出すんだって信じてるーーそこにいくまでの過程でどんな楽しいことが起きるんだろうって、すごくワクワクしています。
1 / 7
■ブリトニートーキョー アート展 「Stay Wild!」
日程:~8月11日
時間:10:00〜20:00 ※8月11日は18:00終了
※8月9日14:00〜はライブペイントを実施
会場:伊勢丹新宿本店 本館6階 催物場
住所:東京都新宿区新宿3-14-1
入場料:無料
PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA