PROFILE: 伊東治彦/ユナイテッドアローズ ヴァイスプレジデント アウトレット本部 本部長 兼 経営戦略本部 副本部長

ユナイテッドアローズ(以下、UA)は、全国にアウトレット店舗を28店舗展開している。25年3月期の「アウトレット他事業」の売上高は前期比9.1%増の237億円。そのほとんどをアウトレットが稼ぎ出しており、グループにおける存在感は大きい。プロパー店舗との運営の違いやアウトレット事業の価値について、伊東治彦アウトレット本部長に聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月19日号からの抜粋です)
アウトレット店舗もプロパー店と同様に、立地や規模によって客層は異なり、求められる商品も変わる。そのため、店舗ごとに細かく商品構成をきめ細かくカスタマイズしているという。伊東本部長いわく、「御殿場や軽井沢、神戸三田などでは、比較的高単価の商品が動く。逆に住宅地型の南町田などでは、普段使いに適した価格帯の商品を厚くしている」。
「グリーンレーベル リラクシング(以下、GLR)」事業本部長を経て、22年から現職に就いた伊東本部長。コロナ明けとともに、リアルの買い物の価値が見直される中、アウトレット店舗の役割も変化していると考える。「もちろん最優先のミッションは在庫商品の消化だが、それだけではない。今では普通のショッピングモールと同じように、“楽しさ”や“発見”を求めて足を運ぶ方が増えている」。
こうした中で、アウトレット店舗を「UAの魅力を知っていただく場」と位置付け、新客との接点を意識した店作りに取り組む。フックになっているのが、2013年にスタートしたアウトレット専売レーベルの「ア デイ イン ザ ライフ(以下、ADITL)」だ。店舗によっては品ぞろえの6〜7割を占め、アウトレット店舗を運営する上で欠かせない商品群となっている。
「ADITL」の商品開発は、メンズ/ウィメンズ、ドレス/カジュアルで分かれた計4つの専任デザインチームが担う。アウトレット特有の色・サイズの偏りを補完する役割もあり、ベーシックなデザインが多い。価格帯は、同社ブランドの中では比較的値ごろな「GLR」の7割程度。お値打ち感を求めるアウトレット客を意識する一方、ジャケット&パンツのセットアップやきれいめTシャツなどを豊富にそろえ、“UAらしさ”を盛り込む。

アウトレットは「もうひとつのフラッグシップ」
また、アウトレット店舗の特徴が、モールの集客力による圧倒的な来店客数だ。「とにかく忙しい。人手も不足する中で、お客さまにストレスを感じさせないオペレーションが問われる」。店頭は色やサイズを常に切らさないよう、「売れたら即、補充するくらいのスピード感と効率性が欠かせない」と伊東本部長は語る。一部店舗では、プロパー店に先駆けてセルフレジを導入。会計にかかるスタッフの負担を軽減し、レジ待ち時間の短縮にも効果が出ている。
それでも「UAの看板を掲げている以上、接客の質は当然意識している」と伊東本部長。「アウトレットの現場では、いつ、どんな商品が入荷するか読めない。スタッフには幅広い商品知識と対応力が求められる」。実際、アウトレット店舗からは接客ロープレコンテストの上位入賞者を多数輩出している。「目指すのは、お客さまに『また来たい』『UAっていいな』と思っていただくための空間。その意味でアウトレット店はプロパー店舗と並んで、UAにとってのもうひとつの“フラッグシップ”だと捉えている」。