かつては“何もしない時間”と軽視されていた睡眠が、いま“最も戦略的な時間”として再評価されている。脳や身体の回復だけでなく、記憶の定着や学習効果の向上、ホルモンバランスや代謝の調整など、睡眠の役割・効能がさまざまな研究から明らかになっている。充実した睡眠時間をサポートするアイテムやデバイスも多数登場しており、市場は拡大の一途をたどっている。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月12日号からの抜粋です)
厚生労働省は2024年2月、「睡眠指針2014」を約10年ぶりに改訂し、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を公開した。それによれば、慢性的な睡眠不足は、肥満、高血圧、糖尿病、うつ病、さらには死亡率の上昇と関連する。経済協力開発機構(OECD)諸国の中で日本人の平均睡眠時間は最も短く、特に中高年層では深刻な課題となっている。
そうした健康面での懸念はもちろんだが、良質な睡眠は仕事のパフォーマンスを上げることにつながると、より効率よく深い睡眠を取ることに関心が集まっている。
従業員のストレスチェックが制度化される中、企業も睡眠に着目する。伊藤忠商事は3月、新設した女子寮全97室に「ニシカワ(NISHIKAWA)」の“[エアーコネクテッド]SXマットレス”(20万9000円)を導入した。「社員の睡眠環境を最善にするため」だという。同マットレスは無料の睡眠アプリ「グーモ(goomo)」との連携で、その人の睡眠を分析・可視化でき、よりパーソナルな睡眠アドバイスなどが得られるようになっている。勤務時間中の仮眠「パワーナップ」の効果も注目されており、米グーグル(GOOGLE)や三菱地所などで仮眠のための環境が整備されている。
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