ファッション

「オーデマ ピゲ」がミラノで新作発表イベントを開催 APハウスや新作から考える名門の現在地

スイスの高級時計マニュファクチュール「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」は、業界最大規模のウオッチフェア「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA)」に先駆け、2024年最初の新作発表イベントを開催した。「オーデマ ピゲ」は21年、「エーピー・ソーシャルクラブ(AP SOCIAL CLUB)」と銘打った独自のイベントをスタート。24年はイタリア・ミラノが舞台となった。

今回、スイスの名門マニュファクチュールである同ブランドが、ミラノを新作発表の地に選んだのは、同時期に新たな「AP ハウス ミラノ(AP House Milan)」をオープンしたからだろう。

「AP ハウス」というのは、「伝統」「テクノロジー」「コンテンポラリーデザイン」を組み合わせ、ブランドの豊かな体験ができる販売拠点。これはあくまでも私感になるが、「オーデマ ピゲ」のオーナー、或いはそう遠くはない未来のオーナーといった“AP アディクト”たちが、まるで自分の家のように寛ぎながら、「オーデマ ピゲ」の世界観を五感で感じる特別なサロン、と筆者は捉えている。六本木にある日本の「オーデマ ピゲAP ハウストーキョー(AUDEMARS PIGUET AP HOUSE TOKYO)」と同様、アポイントなしでフラッと立ち寄ることはなかなか叶わないが、公式サイトのブティックページから訪問予約をリクエストすることは可能だ。

イベントなどで貸し切っている日もあり必ず予約できるとは限らないが、なるべく早く訪問理由を明確にしてリクエストすることで、このエクスクルーシブな空間を訪れるチャンスは誰しもに与えられている。

アニバーサリーイヤーに向けて 
女性向けモデルを貫く名門マニュファクチュールの戦略と哲学

「オーデマ ピゲ」が24年のテーマとして掲げたのが「フォルムと素材」。
今回のイベントでは、20型もの新作を発表した。コレクションの内訳は“ロイヤル オーク”が12モデルと過半数以上を占め、大きなサプライズとなったアメリカ出身のシンガー・ギタリストであるジョン・メイヤー(John Mayer)とのコラボレーションモデルや、独自の新素材「サンドゴールド」を用いたモデルなどで、絶対的アイコンがそのクリエイションによって無限大にも感じられる可能性を示唆。

積極的に研究開発(R&D)に挑み続ける名門マニュファクチュールの、ある意味「凄み」さえ感じられる圧倒的なウオッチメイキング同様に、鮮烈な印象を残したのは37mm以下のフェミニンなモデルの数々だ。34、37mm径のシンプルなオートマティックモデルには、色使いやダイヤモンドセッティングで華やぎを授けるとともに、フライング トゥールビヨンを搭載したハイコンプリケーションでも、37mm径にバゲットカットダイヤモンドをふんだんにあしらったジュエリーモデルを展開した。

今後、さらに積極的に女性ユーザーを意識したモデルを強化していくというグローバル戦略を具現化した新作だが、そこには「オーデマ ピゲ」の「多様性を重んじる」という確かな哲学が宿っている。「時計の多様性」と「時代の多様性」──女性が社会で活躍する時代だからこそ、女性向けモデルのサイズやデザインのバリエーションを増やしていくことは、この名門マニュファクチュールにとって使命であり、それによって高級時計市場全般において女性向けモデルはさらなる活況を見せていくに違いない。

創業150周年というアニバーサリーイヤーを来年に控え、24年は「オーデマ ピゲ」がドラスティックな変化を遂げる1年となる。1月には長年にわたりブランドを率いてきたフランソワ-アンリ・ベナミアス(Francois Henry Bennahmias)に代わり、イラリア・レスタ(Ilaria Resta)がCEOに就任。

また、年内には新社屋が完成する予定で、年間生産本数の増加が期待されている。

現在も、世界的にアイテム全般が入手困難な「オーデマ ピゲ」だが、その戦略からも、企業としてのフィロソフィーからも、女性用モデルに関しては多少なりとも手に入れるチャンスが増えていくだろう。

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