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“ウルトラライトハイキング”が変える登山カルチャー 登山人口若返りで山の楽しみ方に変化アリ!

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 登山をとりまくカルチャーや市場が変化している。短パンにローカットスニーカー、薄い生地のザックといった、一昔前なら「山を舐めるな」「危ない」と言われたようなスタイルの若い(20〜40代)登山者が増えており、ここ数年でムーブメントになっている。こうした登山のスタイルは“ウルトラライトハイキング(以下、UL登山)”と呼ばれ、自身で軽量のギアやウエアをDIYし、ブランド化する動きも活発だ。フリマサイトではそうしたガレージブランドの商品が高値で売買され、ガレージブランドやUL登山店が地方の山間で行うイベントにはファンが数百人規模で集う。「WWDJAPAN」は5月8日号で、UL登山のカルチャーや代表的なブランドを紹介。ファッションやビューティ業界にとっても、コミュニティー作りなどヒントになる部分は多いはずだ。同特集の記事を先行公開する。

「そもそも“UL登山”って何ですか?」
教えてくれる人:土屋智哉/「ハイカーズデポ」オーナー

Q.1 “UL登山”と通常の登山スタイルの違いは?

 UL登山とは、「超軽量な荷物でハイキング(登山)を楽しむ方法論のこと。具体的には、テント泊で、水・食料を除いたザックの重量を4.5キログラム以下にすること」と、東京・三鷹のUL登山専門店「ハイカーズデポ(Hiker’s Depot)」の土屋智哉オーナーは話す。山と縁遠い人にはイメージがわきづらいだろうが、この4.5キロ以下という基準はそう簡単ではなく、実現のためにテントではなく屋根のみの小さなタープ、ガスストーブでなく簡易なアルコールストーブ、雨蓋や背面パッドがないシンプルな作りのザックなどが選ばれる。軽量化のためにはアイテムを1つずつ細かく計量し、1つのアイテムを何通りにも活用するといった工夫が必要だ。また、荷物が軽くなることで頑丈な登山靴ではなく、ローカットのトレイルランニングシューズを履くといった選択肢も出てくる。

 「体への負担を減らすための軽量化と、山へ持ち込む荷物を減らすことでより濃密に自然を体験しようという思想としての軽量化、この2つがUL登山の軸になっている。要は道具をシンプルにして自然とまっすぐ向き合いましょうという考え方」だ。入門者は「ごついザックでなく薄い生地のザックでいい、登山靴でなくスニーカーでいいといった、ビジュアル的なインパクトや新しさ」に引かれて、軽快でスタイリッシュなUL登山に興味を持つというケースが多そうだが、UL登山について調べるうちに背景にあるフィロソフィーや自然への向き合い方を知り、より深くハマっていくということが少なくない。

Q.2 “UL登山”の発祥や歴史は?

 米国には“3大トレイル”と呼ばれる長距離トレイルがある。西海岸を縦断する約4200kmのパシフィック・クレスト・トレイル(以下、PCT)はその1つ。「1980年代後半に、レイ・ジャーディン(Ray Jardine)という人物がPCTなどで数カ月にわたるハイクを何度も行い、軽量化のための試行錯誤を重ねた。92年にその方法論を『PCTハイカーハンドブック』という本にまとめ、一部の長距離ハイカーに熱狂的に受け入れられた」。これが今に続くULの原点だ。ただし、アウトドア関係者などからは「『道具を軽くするなんて危ない』といった反発も多く、既成概念を壊すものとして摩擦は大きかった」。

 その後もULの考え方は「米国で異端とされる時期が続き、大手メーカーは無視。共感する個人がガレージメーカーとしてギアを自作していた」という。状況を変えたのが、2012年に発売されたシェリル・ストレイド(Cheryl Strayed)のベストセラー小説「ワイルド」だ。PCTを歩いた自伝的内容で、リース・ウィザースプーン(Reese Witherspoon)主演で14年には「わたしに会うまでの1600キロ」として映画化。「PCTや長距離ハイクへの注目が一般層からもぐっと高まり、大手メーカーやメディアもULを許容する流れになった」。今では大手メーカー各社もUL志向のギアを企画・販売している。

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