「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、TwitterやFacebook、Instagram、そしてTikTokをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。今回は、数週間前からユーザーが急に増えだした新SNS「ボンディー(BONDEE)」のお話。
ソーシャルエディター津田:最近、話題になっている新SNS「ボンディー」は、シンガポール発のテックスタートアップのメタドリーム(Metadream)という企業によって作られた、メタバース上で友人とコミュニケーションがとれる新感覚のSNSです。InstagramやTwitter、TikTokなどでポップでかわいいアバターや部屋の投稿などを目にする機会も多く、同アプリのユーザーがじわじわ増え始めていることがわかります。それは私の周りだけではなく、しっかりと数字にも表れており、1月末に発表された無料アプリランキングでは複数の地域でGoogle Play、App Storeともに1位を獲得していました。アプリ内では、顔のパーツや服のコーディネートなどを自由に組み合わせて、アバターを自分好みに作成することができたり、アバターが暮らす部屋の家具や小物、壁紙などを好きに配置して模様替えすることができます。また写真の投稿やチャットなど、他のSNSでもお馴染みの機能も標準装備されています。私がTwitterで見つけて面白いなと思った使い方は、絵を描いている人がアプリ内の自分の部屋を利用して開催したバーチャル展示会。メモをキャプション代わりに壁一面に作品を展示していて、これなら写真の展示やコミケなどもできるのでは?と様々な可能性を感じました。開催側は訪問者も見ることができるし、そもそも友達承認しないと部屋を訪れることはできないので、"数十人限定公開"としてチケット購入と引き換えにQRコードを付与すれば、有料の個展にできます。
アプリ内の家具や服についても、一部のアイテムには「Limited free trial」と書かれているので、今後はブランドのアイテムなどが有料で出てくる予感!まだまだ機能が増えそうです。
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記者村上:私は、とりあえずアバターを作り、その後はヨットで大海原を公開中(=放置中)ですが(笑)、2週間くらい前はかつての「クラブハウス(Clubhouse)」を思わせるくらい、「アカウント、持ちました!」をお知らせするストリーズ投稿が目立ちましたね。すごーく簡単かつ乱暴に言えば、「あつまれ どうぶつの森」のスマホ版みたいな印象を持ちました。「あつ森」もいろんなブランドが参画したので、「ボンディー」でも、そんなムーブメントが芽生えるかもしれません。業界のメタバース初心者には、それなりにオシャレなスキン(=洋服やアクセサリー)で装いメタ空間でコミュニケーションできるので、今後のデジタル・コミュニケーションを考えるきっかけとしても良さそうです。
とはいえ、上述の「クラブハウス」のように一過性のブームで終わってしまう可能性もありそう。その辺り、津田さんはどう考えますか?
津田:確かに「あつ森」っぽいですよね。航海でお宝を探すモードなんかは少し「ポケモン GO」にも似ています。メモを貼ったりステータスで一言つぶやけたりするのはTwitterのようだったり、部屋に写真を貼ったり短い動画を投稿できたりするのはInstagramのようです。既にある色んなSNSの良いところをハイブリッドさせた感じがします。
現状だとアプリのローンチ以降、大幅なアップデートがされている様子はないので、このままだと一過性のブームで終わってしまうと思います。スマートフォンアプリは皆、本当に飽きるのが早いですしね。もう少しテンポ良く新機能や新モードを追加したり、日替わりアイテムを投入したり、航海モードにもう少しゲーム要素を持たせたりできると、アプリユーザーも飽きないでしょう。
「フォートナイト(Fortnite)」や「エーペックスレジェンズ(APEX LEGENDS)」などの世界でヒットし続けているメタバースゲームは、その辺りがしっかりしています。1~2週間に1回はアップデートが入るんです。なのでまず最初の変化として、有料スキンを早く実装してほしいです。数百円程度で売られていたら速攻で買ってしまうユーザーは一定数いる気がします。私もその1人で、オンラインゲームの「フォートナイト」でも「バレンシアガ(BALENCIAGA)」を着て戦っている人間なので(笑)。
「ボンディー」はグループチャットにメンバーを追加する際のアニメーションや、グループチャットのアイコンの戦隊モノみたいなポーズなど、一見気付かないような細かい遊び心が散りばめられています。個人的には好きなので、生き残って定着するアプリになって欲しいです。
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村上:スキンの追加は手っ取り早くアプデ感を感じさせるし、それこそ誰もが持っているスマホの中のプラットフォームだから市場はめっちゃデカそうですよね。ただ反面、やっぱりスマホは小さな世界なので、ブランド側にとって「視認性が高く、アバターに着用させることで高揚感を得られるスキンが開発できるか?」は、ハードルの1つになりそうです。津田さんの「バレンシアガ」はどんなデザインか分かりませんが(笑)、メタバースの世界で売買されるスキンは「ナイキ(NIKE)」や「グッチ(GUCCI)」など、誰が見ても瞬時にわかるアイコンがあったり、そのアイコンを全面に押し出したりしているブランドの商品です。買う側の、誰もがわかるアイコニックなスキンをアバターに着せたいという思いの現れでしょう。となると、拡大してもiPhone上では3、4cmの「ボンディー」は、再現性とか視認性においてビハインドを背負っていますよね。
とはいえ、初期設定のスキンは、なかなかファッション性が高く、というか私好みで(笑)、我ながら私らしいアバターが完成したと思っています。広大な「ボンディー」のメタバースの世界で、サファリハット&ショートパンツ、虎柄のスニーカーでダンスを踊っているアバターがいたら、それは私です(笑)。ぜひ、声をかけてくださいね。
次回は、バズるコスメの共通点は“美味しそう”?ネーミングの重要性についてセッションします。