ファッション

「中川政七商店」が地元・奈良に複合施設 4月オープン

 奈良を拠点に全国に60店舗を展開する生活雑貨の中川政七商店は、奈良市内に初の複合商業施設「鹿猿狐(しかさるきつね)ビルヂング」を4月14日に開業する。人気の観光エリア、ならまちにある「遊 中川 本店」に近接し、3階建てで延べ床面積は約706平方メートル。趣のある街並みに調和した瓦屋根と現代技術を駆使した繊細な鉄骨造、開放感のあるガラス窓が特徴だ。

 新施設のコンセプトは「路地を巡り出会う、触れ、学び、味わう奈良」。買い物や飲食、ワークショップなどさまざまな体験型コンテンツを提供する。

 1・2階には「中川政七商店 奈良本店」が渋谷店に続く旗艦店として入る。全国800以上の作り手と生み出した工芸品や食品など、同店限定品を含めたオリジナル商品約3000点をそろえる。奈良の作家や職人の作品を販売するコーナーや、ゆっくり本を読めるスペースも用意する。「遊 中川 本店」は中川政七商店の一部として店内をリニューアル。茶と菓子を味わえる喫茶「茶論」のほか、同社の300余年の史料をアーカイブ展示する「時蔵」、手つみ・手織り麻のモノ作りを学べる「布蔵」など歴史に触れられる構成になっている。

 1階には中川政七商店とともに「鹿猿狐ビルヂング」の名前に由来するテナントが出店する。一つめは人気スペシャルティコーヒー店「猿田彦珈琲」が関西に初出店する。代表の大塚朝之氏は「地方に出店するタイミングをはかっていたときに中川(政七)会長に誘われた。奈良にはスターバックスが3軒あるが、少しだけ風穴を開けられたらと思う」と話す。二つめは、2年連続でミシュランガイドの1つ星を獲得した東京・代々木上原の人気フレンチ「シオ」がすき焼きなどのコース料理を提供するレストラン「きつね」を初出店する。オーナーシェフの鳥羽周作氏は「日本のハレの日の食事の象徴だったすき焼きを解釈し直して、新しいすき焼き文化を作りたいと思った。建物も最高だし、新しい文明開化の象徴みたいな店にしたい」と意欲を燃やす。

 最上階には、興福寺の五重塔を望める同社初のコワーキングスペース「じりん」を設ける。奈良をスモールビジネスのメッカに育てるためのまちづくりプロジェクト「N.PARK PROJECT」の拠点にする。まちづくりを志す人同士の交流や事業創出の場とし、経営講座やトークイベンドなど事業者の活動を支援するプログラムを開催する予定だ。

 同施設を開業する狙いについて、中川政七商店の千石あや社長はこう語る。「奈良は観光客数では全国6位だが、1人あたりの消費金額は全国最下位。宿泊は大阪、食事は京都へと取られ、地元にお金が落ちにくい現状がある。そのため奈良の事業者にフォーカスしてスモールビジネスが成長、継続していく支援を進めてきた。その動きを加速させる拠点として位置付けている」。

 同社が取り扱う工芸品は地域と密接につながっている。伝統産業の復活には、産地自体の活性化が欠かせない。「ここで産業観光を実践し、モデルケースにしたい」と千石社長。日本の工芸を永続させるための成功事例を作る。

橋長初代(はしなが・はつよ)/流通ライター:同志社女子大学卒。ファッション専門誌の編集を経てフリーランスのライターに。関西を拠点に商業施設、百貨店、専門店、アパレル、消費トレンド、ホテル、海外進出などの動向を「WWD JAPAN.com」「日経クロストレンド」などに寄稿。取材では現場での直感と消費者目線を大事にしている。最近の関心事は“台湾”と“野菜づくり”と“コロナ後のファッションビジネス”。「リモート取材が浸透すれば、もっと取材先を広げていきたい」

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