フォーカス

デジコレでドタバタ対談 ニューノーマルに対応する「エムエム6」に共感、約25分間の「マルニ」に戸惑い

 2021年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが閉幕しました。ニューヨーク、ロンドンに続き、今回も“できるだけリアルタイムに近いペース”で取材を進めていきます。今回は9月25〜27日(現地時間)に開催されたミラノ・ファッション・ウイークから、話題のブランドや編集部が面白いと思ったデザイナーをピックアップして紹介。今回はメンズ、ウィメンズともにこれまでも各都市のコレクションを取材してきた「WWD JAPAN.com」の村上要編集長と大杉真心記者がリポートします。

テレビ会議風に見せた「トッズ」の心地いいコレクション

村上:「トッズ(TOD'S)」の新クリエイティブ・ディレクター、ヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)のセカンド・コレクションは、前回以上に若々しくフレッシュになったね。まずデザインを“てんこ盛り”にするのではなく、パステルからネオンまでさまざまな色の力を借りて、定番になり得るベーシックなバッグ&シューズを今っぽくまとめた姿勢が好印象です。ムービーに登場するバッグは、ほとんどがミニサイズ。シューズはキトゥンヒールやウエッジソール、それにぺたんこシューズ。今の時代感を捉えているなぁと思います。ウエアも、柔らかなレザーを多用したシンプルデザイン。

大杉:心地いい色使いでしたね。テレビ会議のような設定の映像で、モデルが近くに寄って映るので、素材の風合いやステッチの色まで伝わってきました。おっしゃる通り、バッグのサイズ感、シューズのヒールの高さに安心感がありました。特にホーボーバッグがエレガントで、仕事からプライベートまでカバーするオンオフ兼用として売れそう。インフルエンサーや歌手が登場するなど、仕掛けも面白かったですね。

村上:Zoomっぽい画面構成だったけれど、撮影場所は1カ所。メンズのプレゼンテーション会場でおなじみの場所でした(笑)。インフルエンサー的な人たちは、正直、登場しなくてもよかった気がする……。素敵なコレクションだったので洋服やアクセサリーだけに集中したかったけれど、一般消費者はやっぱりインフルエンサーを見たいのかな(笑)。

大杉:私は、デジタルフロントローのようでよいと思いました。オリヴィア・パレルモ(Olivia Palermo)やブライアン・ボーイ(Bryan Boy)、デレク・ブラスバーグ(Derek Blasberg)ら常連から、中国の俳優のリウ・ハオラン(劉昊然)、韓国の女優パク・ミニョン(Minyoung Park)まで世界中のインフルエンサーやセレブリティーが集合し、終盤にかけてパーティーのような演出になり、「遠くにいてもデジタルでつながれるよ」というようなメッセージが伝わってきてきました。

長すぎる……!「マルニ」は世界中で撮影した約25分間の映像

村上:ん~、ワタクシ、日本でも有数のフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)ファンを自認しておりますが、この24分52秒のムービーについては、彼をかばいきれないかもしれません(笑)。既存のランウエイのあり方を見直し、世界に住むいろんな人の日常風景を切り取ろうとしているのは理解したつもり。でも、それは他のブランドもみんな同じ。で、他のブランドは限られた時間内に映像をコンパクトに収めているんだから、「マルニ(MARNI)」も頑張ろうよ!!というのが正直な感想です。

大杉:長かったですね……。ミラノ、ロンドン、ニューヨーク、パリ、シドニー、上海、東京、デトロイト、LAなど世界中から、ホームビデオのようなカジュアルな撮影の手法は素敵だったんですが、途中で手ブレに酔い、内容が詰め込まれすぎていてコレクションに集中できなかったです。

村上:フランチェスコは、いろんなアイデアが次々に溢れ出るタイプだって分かっているけれど、不思議系の断片的な映像を25分つなげただけで、その多くを感じ取ってほしいというのは、なかなか難しい。日本語のパートさえ、「で、今は何が起こっているの!?」という感じでした。単純に、僕が読み取れないだけかもしれないけれど、カメラのアングルが定まらない前半部分だけでなく、これを25分見続けるのは大変でした。

大杉:東京からはモデルのモトーラ世理奈ちゃんが、ボーイフレンドでミュージシャンの佐藤緋美くん(Charaと浅野忠信の息子)の仕事現場にドッキリカメラ風に侵入するようなシーンがありましたね(笑)。こういった、地域ごとで分かる人にしか分からないシーンが多いのかもしれません。

モデルたちの自然な笑顔が溢れる、ハッピーな「MSGM」

村上:「マルニ」に比べ、「MSGM」の潔さ!同じように、いろんな世界に住む女の子のプチインタビュー集だけど、すっごく可愛かったし、ハッピーな気持ちになれた。ホルターネックのニットトップスにバルーンスカート、腰回りだけ布を寄せたコットンドレス、洗いざらしのコットンタンクにフレアパンツなど、いつもより少しシンプルだけど、まだまだ元気いっぱいな「MSGM」の洋服を着たら、こんなに素直に、自分のことを語れるようになるのかな?という想像を掻きたて、自分とブランドに対してポジティブになれるような気がします。

大杉:インタビューも「名前の由来は?」「最初に覚えたダンスステップは?」など、それぞれのルーツを引き出すパーソナルな質問で、見ている人が共感できるポイントが多かったですね。モデルたちの自然に生まれる笑顔も素敵でした。洋服も「MSGM」らしいカラフルな色と柄のゆったりとしたシルエットのドレスや、甘すぎないフリルスカートなどリラックス感があり、個性がありながらもチャレンジしやすい服がそろっていました。

ウイットを加えて、ニューノーマルに対応する「エムエム6 メゾン マルジェラ」

村上:「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」がこの週末見た中で一番面白かった。脱構築、トロンプルイユ、ジェンダーレス、体と布の関係性など、なかなか説明しづらい「マルジェラ」のアイデンティティーをすごく分かりやすく表現していたね。

大杉:はい、メゾンのトロンプルイユのテクニックをふんだんに使いながら、ニューノーマルの新たな需要を捉えていましたね。断ち切られたクロップドのシャツやジャケットなど、上半身を上品に見せるビデオ会議に対応したアイテムや、ウエストがゴムになったパンツやワンピースなどワンマイル感覚のものが印象的でした。

村上:例えば、横に切った2枚の写真を上下に貼り合わせた写真のムービーを1カット入れるだけで、その後続く脱構築ルックの特徴が一発で分かるようになっている。「メゾン マルジェラ」よりもくすりと笑えるユーモアも存在するブランドらしさも光っていました。個人的には、背中にスカーフを縫い付けたTシャツが秀逸!アレさえあれば、来年の春夏以降は突発的なZoomミーティングもコワくないね。部屋が片付いていなくても、背中のスカーフを広げればバレない(笑)。

大杉:とても欲しいです!(笑)。おまけにドレスに早変わりする椅子のカバーまでありましたね。

ハリウッドで撮影した「モスキーノ」のパペットショー

大杉:「モスキーノ(MOSCHINO)」はドールハウスのランウエイを作り、ミニチュアサイズのコレクションを人形に着せてショーを披露しました。デザイナーのジェレミー・スコット(Jeremy Scott)はアメリカ・ロサンゼルス在住ということもあり、ハリウッドで撮影を行ったそうです。業界おなじみの米「ヴォーグ(VOGUE)」のアナ・ウィンター(Anna Wintour)編集長やヘイミッシュ・ボウルズ(Hamish Bowles)インターナショナル・エディター・アット・ラージ、英「ヴォーグ」のエドワード・エニンフル(Edward Enninful)編集長らもミニチュアサイズになってフロントローに座っていましたね。

村上:この週末のBEST 2です。ジェレミーが「パペットショーじゃないよ!ファッションショーだよ!」って言っていたけど、全編パペットショー。コレ、サンプルの生地代が抑えられて、サステナブルだね(笑)。確かに、デジタル上の洋服は、もはやモデルが着られる等身大じゃなくていいのかも。大きなリボンと内臓コルセットが特徴のドレスは、いつもの「モスキーノ」よりずっとエレガント。ブロケードの素材をたっぷり(と言っても人形サイズだから、たぶん20cm四方あれば1着作れそうだけれど)使って、いつも以上にタイムレスな美しさを追求したのかな?ジェレミー・スコットは、実物よりスマートでした(笑)。

大杉:1950年代のクチュールに着想を得たドレス群で、とてもクラシカルでしたね。従来はウエアにファンタジーの要素を詰め込んでいますが、今季は人形自体がファンタジーだったので、バランスが取れていたような気がします。過去にはバービーの洋服を原寸大にするコレクションがありましたが、その逆パターンというちょっとしたストーリー性も感じました。

シンプル・イズ・ベストの「ジョルジオ アルマーニ」

村上:ムービーで迷走しているブランドは、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」で学んでいただきたい!「変に頑張るなら、シンプルに見せろ!!」「シンプルに見せられるくらい、いいものを作れ!!」――そんなアルマーニ御大の声が聞こえてきそうです。アルマーニファンなら誰もが欲しいライトグレーのセットアップで始まったコレクションは、シンプルにランウエイを見せるだけ。でもそれが、柔らかく揺れる布の生地感、刹那的な描写では判別しがたい繊細な模様、そして、「買おうか、買うまいか?」と悩むアクセサリーをじっくりチェックするにはちょうどいい。シンプル・イズ・ベストを再認識させてくれました。今シーズンは、今まで以上に着心地のよさそうな洋服がいっぱいだね。

大杉:まさに無観客ショーのお手本ですね。クレーンカメラで上から撮影するなど、多角的なアングルで服を見ることができ、テンポのいい画面の切り替えも見やすかったです。ウエアは目に優しいニュートラルなカラーパレットと柔らかい素材感で、上品なリラックス感がありました。

村上:ちょっぴりオーバーサイズのジャケットやカシュクール風のトップスなど、新しい提案も。ウィメンズに比べると登場回数が少なかった、メンズのガウチョパンツルックは、ちょっとかわいらしかった。終盤のセージ色のドレスルックは、ただただ美しかったね。オーガンジーのブラウスに葉っぱモチーフをプリントして、布の重なりで色の陰影を楽しむスタイルは、もはや癒しでした。最後にアルマーニさんが出てこなかったのは、ちょっと残念!

深海の「ヴェルサーチェ」神殿(!?)

村上:深海の「ヴェルサーチェ(VERSACE)」神殿(!?)のセットだけを映す冒頭が1分以上に及んだのはナゾですが、その後はめくるめく「ヴェルサーチェ」ワールドでしたね。トロピカルを思わせる極彩色のカラーパレット、ヒトデのモチーフ、ネオプレンの素材使い、ミニ丈のワンピやブラトップ、ホットパンツ!!深海の宮殿じゃなくて、地上の楽園を舞台にした方が、気分的には盛り上がったけれど。いつもはボディコン路線だけれど、今シーズンは伸縮するプリーツやネオプレン使いが多く、いつもより着心地もよさそう。このブランドもプラスサイズモデルを起用するなんて、時代はすっかり変わったんだと実感しました。

大杉:モデルの人数も従来のショーと変わらず大勢いて、ウォーキングもパワフルで力強かったです。去年はジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)が登場するなど、セレブモデルの印象が強いですが、さすがに今回はビッグネームのモデルはいませんでしたね。ウエットスーツ風のドレスはヘルシーでセクシー。マルチストライプのリゾート着や、原色の水着など、次の夏が待ち遠しくなるワクワク感のあるウエアがそろっていました。

サスペンス調の「サルヴァトーレ フェラガモ」

村上:「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」は世界中がストレスを感じている今、サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)の作品にインスピレーション源を得るなんて大丈夫?と思ったけど、杞憂でした。暗めのBGMの代わりに、洋服はスカイブルーやクリームイエロー、ラベンダーなど、明るめの色使い。ポール・アンドリュー(Paul Andrew)はここ最近、シンプルに徹することで、いつでも、どこでも、誰でも着られる洋服を生み出して着た印象だけど、今回もラペルのないジャケット、デザイン的要素はスリットだけのレザースカートなど、汎用性の高い洋服がいっぱいです。サスペンス調だと、足元のクローズアップも違和感がないね(笑)。キトゥンヒールのサンダル、ポインテッドトウのバレエシューズ“ヴァラ(VARA)”の変形版とも言えるメリージェーン、柔らかなレザーを使ったブーティが、とにかく歩きまくるモデルたちの足元を彩っていました。

大杉:映像は、映画「Call Me By Your Name(君の名前で僕を呼んで)」などでファンの多いルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino)監督によるもので、ロケーションや構図にも強いこだわりを感じました。遠くから人を眺めたり、怪しい行動を追いかけたりと、ミステリアスで魅力的な人に惹かれる心理をうまく表現していましたね。このようなサスペンス調にしたのは、不透明な時代に生きる人々をヒロインにしてエールを送るというメッセージが込められているそうです。明るい色使いからもエネルギーをもらえますね。

村上:それにしても、このドラマ仕立てムービーは、モデルの演技力が問われますね。みんなメイクが若干濃いめでしたが、なかなかの演技力でした。バッグ開けたら、アイコンモチーフ“ガンチーニ”をあしらった財布やカードケースがどっさり!!「え!?10分間のサスペンスは、殺人事件じゃなくて、万引きの話!?」ってズッコケました(笑)。

和のテイストを強めるも、「アツシ ナカシマ」らしさって何だっけ?

村上:メガブランドのショーの直前だったり、新型コロナウイルスに伴うロックダウンだったりで、ミラノ・コレクションを取材しつつも、なかなか見る機会に恵まれなかったのが「アツシ ナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)」。「あれ~、こんなにニッポンだったっけ!?」というのが率直な印象です。イロイロ思うところがあったのかな?とはいえ、「これまでのシーズンとの連動性は?」とか「ここまでニッポンにしちゃうと、海外でどうなんだろう?」など思うこともありますが、長年見続けてきた大杉さんは、どう思う?

大杉:今回は日本で見せるということもあったのか、和のテイストを強く出してきましたね。ブランドのコンセプトは「モダンとクラシックの融合」だったと思うんですが、ここ数シーズンは毎回テイストがガラッと変わるので「アツシ ナカシマ」らしさって何だっけ?と分からなくなっている部分もあります。今回は東京都港区の大本山増上寺で無観客ショーを行い、モデルにはAMIAYAやノア(Noah)とタイキ(Taiki)らを起用。中には、ファッションプロデューサーのMBとのコラボウエアが含まれていて、さらに、初のビューティアイテムとしてアイライナーまで作ったそう。話題はたくさんあるのですが、「アツシ ナカシマ」の世界観とブランドイメージを今一度固めてほしいと思います。

最新号紹介

WWD JAPAN

デジタルコマース特集2020 コロナで変わったもの/残すべきもの

「WWDジャパン」10月26日号は、デジタルコマース特集です。コロナ禍でデジタルシフトが加速し、多くの企業やブランドがさまざまなデジタル施策に注力していますが、帰るべきものと残すべきものの選別など、課題が多いのが現状です。今年はそんな各社の課題解決の糸口を探りました。巻頭では、デジタルストアをオープンしたことで話題の「シロ(SHIRO)」の福永敬弘=専務取締役やメディアECの先駆け的存在「北欧、暮…

詳細/購入はこちら