ファッション

米国屈指のESG先進企業ティンバーランドに聞く「サプライチェーンの透明性を実現するカギ」


 いま、企業にとってビジネスを行う上で極めて重要になっているのが“透明性”だ。その透明性が高い企業として評価されているのが米国のティバーランド(TIMBERLAND)だ。ファッション企業の透明性を評価してその通信簿的な役割を担っている「ファッション トランスペアレンシー インデックス(Fashion Transparency Index 以下、FTI)」でも、同社は上位にランクイン。FTIは英国のNPO団体ファッションレボリューション(Fashion Revolution以下、FR)が、220の指標についてファッション企業が開示しているかどうかを調査してスコア化しているものだ。

 ティンバーランドが初めてCSRリポートを発表したのは2000年のこと。08年からは四半期ごとにCSRリポートでサプライヤーの社名や所在地を完全に開示している。その後親会社のVFコーポレーション(11年に傘下入り)もこれを導入し、現在は全ての傘下ブランドで実施している。ティンバーランドは数年前から、代表的なアイテムや商品を追跡できるトレーサビリティーマップも公開し、追跡可能な商品は毎年増えている。コリーン・ヴィエン(Colleen Vien)=サステナビリティ・ディレクターに同社の取り組みを聞く。

WWD:ファッションレボリューション(FR)のFTIで上位にランクインした。FTIはどのような影響があるのか?

コリーン・ヴェイン=サステナビリティ・ディレクター(以下、ヴェイン):透明性はティンバーランドにとって新しいコンセプトではなく、この分野ですでに業界をけん引するリーダーであることを誇らしく思っています。FRの評価や、ブランドのサステナビリティに関する取り組みをランク付けするさまざまな指標は、ステークホルダーの期待に応えるためにどこを改善するべきなのかを知るために有用であることに加えて、消費者を啓発したり、ほかのアパレル企業やブランドにもサステナビリティに取り組むよう促したりするために役立つという意味でも重要なものです。

WWD:FTIの評価の中でも多くの企業はトレーサビリティー(追跡可能性)のスコアが低く苦戦している。ティンバーランドは評価が高かった。

ヴェイン:ティンバーランドは、世界中にいる25万人以上の従業員のために公平で安全、かつ差別的でない職場を確保するための取り組みを長きにわたって行っていて、1994年にはサプライヤーに対する行動規範を設けました。当社は2011年のVFコープの傘下入りを機に、VFコープが定める契約条件やコンプライアンス原則に則るようになりました。VFコープは生産に関わる全ての施設をモニタリングしており、これにはタナリー(皮なめし工場)、織物工場、カッティングや縫製工場、スクリーン印刷会社、刺しゅうアトリエ、製品洗い工場、梱包施設、完成品の生産工場などが含まれています。当ブランドの工場開示リストには、こうした全てのサプライヤーが記載されています。

WWD:サプライヤーとはどのようなコミュニケーションを取っているのか。

ヴェイン:当社と取引をする際には、この工場開示リストに情報を掲載することが絶対条件となっていて、例外はありません。労働条件や労働者の権利、職場環境、環境保護などに関して当社の基準を満たしている会社とのみ提携しています。最初の取引に先立ってこうした条件がクリアできているかどうかを確認し、その後も少なくとも年に1回は確認しています。こうして共に仕事をしているサプライチェーンの各社を誇らしく思っているし、彼らが責任ある製造会社として認知されることを願っています。また工場の情報を開示して協業すれば、共通の基準を設け、ソリューションの共有もできるはず。結果として、当ブランドと関わりのある世界中の全ての工場で人権がさらに尊重されるようになると確信しています。

WWD:二酸化炭素排出量に関しても早くから削減に取り組んでいる。

ヴェイン:二酸化炭素排出量は、グループ全体にわたって包括的に追跡しています。当社では、自社および運営している施設における温室効果ガスの排出量を06年の50%にするという目標を掲げていましたが、これを15年に達成しました。また15年までに再生可能エネルギーの使用率を30%にすること、そして25年までにはこれをVFコープと共に100%にするという目標も掲げています。素材や個別の商品における二酸化炭素排出量は、以前から「グリーンインデックス」という自社開発の指標で格付けしていましたが、アパレル業界のさまざまなブランドがこれを導入できるようにするため、アウトドア産業協会(Outdoor Industry Association)とサステナブル・アパレル連合(Sustainable Apparel Coalition)に提供しました。

WWD:サステナブルなプロダクトに関する戦略として“グリーンマテリアル”を掲げている。素材に関してのアプローチを教えてほしい。

ヴェイン:現在はリサイクル素材、オーガニック素材、再生可能素材の利用、そして有害な素材の廃止に注力しています。今後は再生可能資源を由来とする自然素材も使用していく予定です。今秋には、再生可能なレザーと再生レザーを使用した初めての商品を発表します。当社は、環境への影響を最小限にするだけではなく、人々や地球にプラスとなる“責任ある素材”を開発するために、ベンダーと協業して尽力しています。例えば、「ティンバーランド」のハイチ産コットンに関する取り組みは、環境的にも社会的にもポジティブな影響をもたらす責任ある素材を新たに作り出すことを支援しています。(編集部注:同社はハイチでコットン栽培のノウハウや物資の提供を行い、30年前に廃れたコットン産業を復活させて地元経済の復活にも貢献した)

レザーに関しては08年から、LWG(レザーワーキンググループ)環境監査においてシルバーもしくはゴールドと認定されたタナリーからのみ調達しています。当初、これはフットウエアのレザーにのみ適用していましたが、15年からはアパレルやアクセサリーも含めた全ての商品に適用しています。フットウエアに使用するレザーについては、その99.6%をシルバーもしくはゴールドと認定されたタナリーから調達しています。

全商品で見ると、同じく96%以上のレザーがシルバーもしくはゴールドと認定されたタナリーのもの。ライセンス製品やアクセサリーのパートナーに対しても、より多くのレザーをLWG認定されたタナリーで調達するよう働きかけています。少量しか使用しない場合や価格の問題で難しいこともありますが、当社とライセンス契約を結んでいる会社は責任ある素材をより多く使用することの重要性をよく理解していて、私たちの要求にできる限り応えようと努力してくれています。

コットンに関しては以前から、オーガニックコットンの使用量を毎年増やしていくという目標を掲げています。20年の目標は、アパレル、アクセサリー、ライセンス製品で使用するコットンの100%を、従来よりもサステナブルな方法で栽培されたコットンにすること。これには有機認証を受けたコットンのほか、再生されたもの、フェアトレードのもの、米国産のもの、もしくは非営利団体ベター・コットン・イニシアチブ(Better Cotton Initiative)を通じて調達したものが含まれます。19年には、当社のアパレル、アクセサリー、ライセンス製品で使用したコットンのおよそ80%がサステナブルなものでした。またライセンス品でないアパレルに限れば、99%のコットンがサステナブルなものでした。アクセサリーのライセンス契約先の中には、責任あるコットンを調達するのに苦労している会社もありますが、私たちと共に頑張っています。時間はかかるかもしれませんが、そうした会社も私たちの価値観やガイドラインに沿った商品を作ろうと努力しています。

WWD:社員を巻き込んだ社会貢献活動「パス・オブ・サービス(社会貢献への道)」を1992年から始めている。

ヴェイン:社会貢献は「ティンバーランド」のDNAに組み込まれています。コミュニティーを改善しよう、変革しようと努力する人々のパワーを信じることは、私たちの重要な価値観の一つです。世界をよりよい場所にするべく、一歩を踏み出して外に出ることや協力し合うことを促し、そうした人々が必要とする装備を提供することが私たちの目的です。このため、クリエイティブで勤勉、かつ献身的な従業員たちが社会貢献できるさまざまな方法を提供しています。「パス・オブ・サービス」では、地域コミュニティーでのボランティア活動ができるように、正社員には年間40時間、パートタイムの従業員には同20時間の有給休暇を認めています。こうしたボランティア活動の多くは、従業員だけではなく取引先や顧客、VFコープの従業員、そしてコミュニティーの人々も参加できるようになっています。19年には世界中で500以上のイベントを開催し、全従業員の70%が参加しました。これは時間にして延べ7万2000時間のボランティア活動を行ったことになります。これまでの累計では、およそ140万時間です。

WWD:とくに砂漠緑化活動に熱心だ。

ヴェイン:ティンバーランドは、“よりグリーンな未来がよりよい未来だ”という信念を持っています。これを実現する方法の一つとして、世界でも砂漠化が進む地域や都市部に木を植える活動をしていて、現在までに1080万本以上を植樹しました。19年の秋にはこの活動を拡大することを発表し、25年までにさらに5000万本の木を植えることを約束しました。

植樹に当たっては7つの組織と提携していますが、木を植えるだけではなく、空気の清浄化やコミュニティーの強化、そして経済的な機会の創出にも貢献して、希望、雇用、きれいな空気、人々の連帯を生み出しています。この植樹で世界をよりよい場所にしようという「プラント・ザ・チェンジ(Plant the Change)」活動に、消費者の皆さんにもぜひ参加してもらいたいと思っています。

また私たちは、9月1日にサステナビリティに関する大胆な目標を発表する予定です。これは当社の全ての商品に影響するもので、ビジネスの方法にも大きな変化があるでしょう。

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