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異色のシューズブランド「オールバーズ」が投資家からも支持される理由

 「地球にやさしい」「サステナブルな〇〇」――こうしたキャッチフレーズを目にすることが増え、多くの企業が環境や社会に配慮した製品を提案するようになってきている。しかし生活者の視点でなるべくサステナブルな製品を選ぼうとすると、それらの表現が意味するところは極めてあいまいだ。そもそもサステナビリティの解釈は十人十色で正解はなく、数値化することも難しい。しかし、企業はその曖昧さを少しでもわかりやすく、そして顧客をはじめとするステークホルダーとどうコミュニケーションするか、その方法も問われ始めていると言えるだろう。

 そんな中で、明確なメッセージを発信し、わかりやすい形で示して支持を集める企業がある。サンフランシスコ発のシューズ企業オールバーズ(ALLBIRDS)だ。2020年4月から全製品にカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)を表示し、“カーボンニュートラルを目指す”と宣言。オールバーズは、サッカーの元ニュージーランド代表のティム・ブラウン(Tim Brown)とバイオテクノロジーの専門家ジョーイ・ズウィリンジャー(Joey Zwillinger)という異色のタッグが2016年に創業し、「カーボンフットプリントを抑えながら、自然由来の原料を用いたモノ作り」を推進する。スニーカーから始まり、20年6月にはアンダーウエアの販売を開始。今後もカテゴリーを広げるという。これまで累計1億4000万ドル以上(約148億円)の資金を調達し、現在、世界主要都市に直営の20店舗を展開するまでに成長した。20年5月にはアディダス(ADIDAS)とカーボンフットプリントの低いスポーツシューズ開発のためのパートナーシップを結んだことでも話題になった。

科学的にも学術的にも証明できる方法

 カーボンフットプリントの削減には創業当時から取り組んで計測してきたというが、その数値の公開を始めたのは19年のこと。「企業として責任を持つために公開を決めた。加えて、業界内でカーボンフットプリントの対話を推し進めたいという思いもあった」と、ハナ・カジムラ(Hana Kajimura)=サステナビリティ・マネジャーは公開に至った経緯を語る。彼女は28歳の若さで同社の核となるサステナビリティ分野のマネジャーを務める。同社には“カロリー表示のように地球のためにカーボンフットプリントを知る”ことを当たり前にしたいという考えがあった。近年、食品でのカーボンフットプリントの表示は少しずつ増えてきたいるが、ファッションアイテムでは極めて少ない。

 カーボンフットプリントを重視したのは「気候変動対策が地球で生きていくために最も大きな要素だから」だ。「カーボン排出の削減 で寄与することが一番わかりやすく、感覚的にではなく、科学的にも学術的にも証明できると考えた」と説明する。

 現在、企業に“透明性”を求める動きが加速しているが、透明性の考え方についてはどう考えるのか。「アカウンタビリティー(説明責任)の要素が大きい。つまり、ステートメントや企業方針、進捗状況などを顧客と共有することだとも言える。私たちは環境における透明性から着手した。加えて、*Bコープを取得し、その基準に沿って取り組んでいる」。サプライヤーの選定に関してもBコープの基準に照らし合わせて選んでいるという。「私たちは顧客や株主だけでなく、サプライチェーンの人々や従業員を含めて、われわれのビジネスに関与するあらゆる数値を計測・公開することで透明性を担保している」。

*Benefit Corporationの略で、米非営利団体B Lubが運営する認証制度。環境、社会に配慮した事業活動を行っているかや、アカウンタビリティー、透明性などから評価される。具体的にはガバナンス、従業員、コミュニティー、環境、顧客の観点からなる200点満点の認証試験において80点を獲得することが条件

 カーボンフットプリントを抑えるために、例えば再生エネルギーを用いているサプライヤーを選んでいるのかというとそうではない。「目標はもちろん再生エネルギーを用いて環境基準を満たしている相手だけれど、今組んでいるパートナーとは日常会話レベルで改善を目指して取り組んでいる」という。「製造業におけるサステナビリティは比較的新しいコンセプトでしょう?だからサプライヤーの中には当初戸惑う人も少なくなかった。でも日々対話を重ねることで理解してもらえるようになり、今ではサプライヤーからアイデアが来るようになった。皆がサステナブルな思考になってくれたのが本当にうれしい」とハナは笑顔で話す。今では「廃棄物の削減やリサイクルを推進したり。環境負荷が低い素材の提案もしてくれている」という。

環境負荷の低い素材開発にも取り組む

 オールバーズでは、すでにある環境に配慮した素材を用いることはもちろん、自社開発にも取り組む。「靴底のフォームはもともと石油由来が多かったが、ブラジルでパートナーを見つけてサトウキビ由来の原料で作ることができるようになり、今では業界全体に供給できるようになった」。もちろん100%サトウキビ由来は難しいが、「機能性とのバランスを大切にしている。これからさらにサトウキビ由来の比率を高めるように改善していく」。機能性と環境への負荷とのバランスは非常に難しいとされていることに関しては、「アートと科学のバランスのようなところはあるわね。ブランドコンセプトとして、自然由来の素材とリサイクル素材の利用を重視しながら、カーボンフットプリントゼロを目指していく。どうやってゼロを目指していくのか、その過程も公開することこそ私たちの透明性への取り組みよ」。