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オールユアーズが考える「ZOOM接客がポストコロナに秘める可能性」

 オンライン接客が、コロナ禍での店舗休業中の対応策として普及している。中でもZOOMを用いた接客手法の可能性を追求しているのが、アパレルメーカーの「オールユアーズ(ALLYOURS)」だ。同社は3月26日に東京・池尻大橋に構える店舗を休業し、4月の半ばには木村昌史代表による「プライベートZOOM接客」(1人当たり40分~)をスタート。同時期に始めた「かんたん!質問箱」や昨年から実施している「自宅試着サービス」などと組み合わせ、オンライン上での接客を推進している。ZOOMをはじめとする、ビデオ会議・通話サービスによる接客にはどのような可能性があるのか。木村代表に話を聞いた。

WWD:「プライベートZOOM接客」と「かんたん!質問箱」を始めた経緯は?

木村昌史オールユアーズ代表(以下、木村):店舗を休業にして「これからどんなサービスを始めればいいんだろう?」と考えた時にまず、僕たちのお客さんのタイプを3パターンに洗い出してみました。1パターン目が商品を買うことはほぼ決まっているけれど、店舗で接客を受けて納得してから買いたい人。2パターン目はSNSなどで積極的にコミュニケーションを取りながら、オンラインストアで買える人。そして3パターン目が店舗には来るけれど、コミュニケーションはあまりしたがらない人。2パターン目の方は今までも質問やメッセージを随時受け付けていたので、その手法を継続しつつ、SNSで「いつでも聞いてください」と定期的に発信して対応しています。

問題は残りの2パターンで、ZOOM接客は1パターン目の方に向けて、質問箱は3パターン目の方に向けて始めました。質問箱に関しては、ある種チャットボット的な形式ですが、本格的なシステムを導入する資金がない点と、人員的な理由から、24時間以内に質問を返すような形にしています。

WWD:「自宅試着サービス」はどのように活用している?

木村:試着と購買の意思決定の場として考えています。先ほど話したオンライン接客の手法は、「自宅試着サービス」があるからこそできるんです。店舗での購入プロセスを考えると、最初にスタッフとのコミュニケーションがあり、そして商品を選定し、商品の説明を受けて試着に進む。後は試着をしながら購買の意思決定をしていく。一方で、オンライン接客は試着の手前までしかできず、なかなか購買の意思決定にまでつながらない。試着を気軽にできる制度を整えることで、オンライン接客でも気軽に最後の決済ができるようになると考えています。

WWD:ZOOM接客を受けているのは、普段は店舗に来られないような、遠方のユーザーが多いのか?

木村:都内や関東近郊の方と遠方の方、それぞれ半々くらいですね。都内の方は「『オールユアーズ』のことはメディアやイベントなどを通じて知っていて、製品のことをもう少し知りたい」という新規のお客さんが多いです。一方で遠方の方は既に商品をオンラインで何回か購入していて、店舗に行ってみたかったけど、都合がなかなか合わない人です。一番遠い所でサウジアラビアから、といった人もいました(笑)。ただ、ほとんどのお客さんが、ある程度オンラインストアの情報を読み込んでくれています。そのため接客の際、商品の説明は最低限にするか、オンラインストアには載っていない情報を伝える程度で、後はライフスタイルや趣味嗜好など、お互いのパーソナルなことを話すようにしています。僕らとしても商品を長く着続けてもらいたいという思いがあるので、接客の中である程度信頼してもらいつつ、お客さんの個性に合った商品を提案したいと考えています。

WWD:現在、ZOOM接客は木村代表が1人で担当しているが、その理由は?

木村:まずは間口を僕1人に絞り、お客さんにどういったことを聞かれやすいかや、どういう質問をするとベストなサイズを提案できるのかといった傾向を調べるためです。予約状況的にも、現状は1日に多くて5件程度なので1人で対応できます。ただ、ゆくゆくは販売スタッフにも任せていきたいと考えています。

オンライン接客は
「お客さんの家にお邪魔する感覚」

WWD:オンライン上での接客だからこそできるポイントは?

木村:僕がお客さんの家にお邪魔している感覚になれることは大きいですね。店舗だと、自分以外のお客さんが入ってくる可能性があるので体型の話やサイズの話がしづらかったり、ほかのお客さんに遠慮して満足のいく接客が受けられなかったりする。オンライン接客は自分のプライベートゾーンで話せるので、お客さんも最初からけっこう自己開示をしてくれ、深いところまで会話ができます。僕らはあまり意識していないのですが、お客さん的には特別扱いをしてもらっているような感覚になれるみたいです。後は接客を受けてすぐに購買の意思決定をする必要がなく、冷静に商品を試着・購入できたり、画面共有で商品のオーダーの仕方などを一緒に確認しながら案内できたりといった点もオンライン接客ならではかな、と。

WWD:ZOOMをはじめとするビデオ会議・通話サービスを用いた接客は、ほかのアパレル企業・ブランドも取り組むべきか?

木村:規模によって異なりますが、僕らを含め中小規模の企業・ブランドにはこのスタイルが合っていると思います。特に店舗が開けられない状況下での販売員のリソース活用という面では有効です。また、販売員が話したいセールスポイントは、お客さんが知りたいことでもあり、そういった内容がオンラインストアに載っていない状態を改善できるという側面もあります。ただ一方で、ある程度の規模も認知もあるような企業・ブランドでは、チャット接客などの方が効率がいい場合もあります。オンライン接客は美容室のような商売形態で接客人数が限られ、運用効率という観点では良くないので。

WWD:ZOOM接客は、新型コロナウイルスの収束後も続けていくつもりか?

木村:「オールユアーズ」としては今のところ、緊急事態宣言が解除されても、しばらくは店舗を開けないつもりです。オンライン接客の可能性をもっと追求していきたいですね。地方のお客さんのニーズがあることを考えると、コロナ収束後もリアル店舗と併用にするのが効果的だとも考えています。店舗を予約制でオープンするのもいいかもしれません。オンライン接客は、リアル店舗に来ることの価値をさらに上げる側面もあると思っていて。わざわざ移動コストをかけて来てもらったお客さんに「来てよかったな」と思ってもらえるような店舗にするためには、どのような設計にすれば良いのかを最近は考えています。

WWD:コロナ禍の下で、接客方法を含めさまざまな分野でデジタル化が進んでいるが、この状況をどのように見ている?

木村:変化に対応することも重要ですが、そもそもお客さんが何を求めているかを考える必要があると思います。オンライン接客も、方法だけ見ると新しく感じるかもしれませんが、接客におけるお客さんの「背中を押して欲しい」というニーズは変わらない。自分たちのお客さんの中に元からあるニーズをオンラインで60%でも70%でも満たすにはどうしたらいいのかを考えると、新しい方法が生まれてくるんだと思います。例えば、ファストファッション的なブランドは、時間をかけてオンライン接客をするよりも、時間をかけずにお客さんの疑問を解決し、商品を迅速に届ける方が良いはず。重要なのは「自分たちのお客さんがちゃんと見えているのか」だと思います。