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ヘアサロンの在り方が変わる 「アッシュ」吉原会長が提言「美容室は医療関連に次ぐ“第2フェーズ”である自覚を持つべき」

 大手ヘアサロンの中には、当初緊急事態宣言が解除される予定だった5月7日から営業を再開したサロンも多い。「アッシュ(ASH)」など300店舗超の多様な美容サロンを国内外に展開するアルテ サロン ホールディングスも、新型コロナ対策に細心の注意を払ったオペレーションを構築したうえで、全店(一部商業施設内の店舗を除く)で営業を再開した。しかし、全てがもと通りというわけではなく、予約のとり方や提供するメニューは限定的だ。徐々にもとに戻していく予定ではあるものの、吉原直樹アルテ サロン ホールディングス会長は、「これを機にヘアサロンの在り方は変わる、変えるべきだ」と話す。その言葉の真意を探ってみた。

WWD:営業再開を5月7日にした理由は?

吉原直樹(以下、吉原):理由というか、当初の計画通りに進めているだけです。そもそも美容室は休業要請の対象に入らず、「日常生活で必要」とされた業種。それでも感染のピークの時期を避ける形で、当社では4月9日から全店で休業をしてきました。ここ最近の感染者数の推移や、徹底した衛生管理を組み込んだ独自のオペレーションが完成したこと、それにお客さまの身だしなみを整える責任など、総合的に考えて再開を決めました。

WWD:美容室に休業要請を出すか否かで行政の判断は遅かった。

吉原:もたついていましたね。今も疑問に思うことは多いです。行政は美容業を公衆衛生の業種に位置づけているのだから、行政が衛生管理の指針を示すべきで、企業や個人に委ねるべきではないと思っています。そもそも美容所における衛生管理の要領は、戦後に結核などの伝染を防ぐために設けられたもので、ある意味今のような状況を想定したものといえます。そのことを組合あたりが適切にアナウンスしてくれたら、もっとスムーズに営業のお墨付きをもらえたとも考えらますね。

WWD:要綱には消毒なども規定されている?

吉原:店舗面積や美容器具の消毒などが規定されています。しかし伝染病がなくなるにつれ、次第に消毒の必要性の認識は薄れていきました。美容室にはファッションや技術といったクリエイティブな側面と、その土台となる公衆衛生という2つの側面がある。近年はファッションの側面のみがフィーチャーされ、公衆衛生の側面が置き去りにされてきました。批判するわけではありませんが、シャンプーをしない専門サロンが登場したことはその一例だと思います。髪はよく手で触るのでウイルスが付着しますが、シャンプーの界面活性剤によって大半のウイルスは流れるんです。われわれは今一度原点に立ち返り、美容室の在り方を変え、両側面のプロであることを自覚する必要があります。

WWD:たしかに、衛生に関して美容学校では勉強するけれど、就職すると技術の習得が優先になる傾向が否めない。

吉原:美容師は国家資格で、学科試験には衛生法に関する問題もあり、試験内容の3分の1程度は看護師の試験と同じなんです。そのレベルの国家試験を受けているということに立ち返らないといけない。今、看護師は命を懸けて新型コロナと闘い、社会的に称賛されています。そうした医療関連が第1フェーズだとすれば、美容室は第2フェーズなんです。さすがに“命を懸けて”は大げさですが、それでも感染していて症状のないお客さまが来店される可能性は十分あります。でもわれわれには、髪をさっぱりさせて衛生的になっていく気持ち良さ、きれいになっていく喜び、身だしなみを整えて心機一転する機会をお客さまに提供する義務があります。実際、“自粛が解除されてまず行きたい場所”に美容室を挙げる人も大勢います。そうした思いに対して、衛生面で完璧なオペレーションで応えることができれば、美容室の社会的地位が上がるターニングポイントにもなると思います。

WWD:使うたびにハサミやガウンを消毒するなど、完璧なオペレーションにはコストもかかるが。

吉原:だからこそ美容室には適正価格があり、闇雲な安売りはできないんです。公衆衛生に関する業種で営業するからには、公衆衛生の面で責任を持たなくてはいけない。そのために保健所から営業許可証をもらい、経営者が責任をとるようになっているんです。そこで1つ気がかりなのが業務委託サロンなどの形態では、1施設の中で責任をとれるのは1人だけであるにも関わらず、技術者個人が何人も集まって仕事をしているので、責任の所在があいまいな部分があると思います。個々のお店のスタッフ皆が一丸となって衛生面を徹底させ、お客さまに安心してもらえるシステムを作ることが、今は一番大切なのではないでしょうか。

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