ファッション

上質な素材とモダンなデザインが売りのサステナブルブランド「バイト ストゥディオズ」

 ファッションブランドにとってサステナビリティへの配慮が当たり前になりつつある昨今、まだ規模の小さな若手ブランドにおいてもそれぞれのスタンスで取り組みを行う例が増えている。2016年にスウェーデンのストックホルムとイギリスのロンドンを拠点に設立された「バイト ストゥディオズ(BITE STUDIOS)」もその一つだ。

 “By Independent Thinkers for Environmental Progress”の頭文字から名付けられた同ブランドが掲げる使命は、妥協することなくサステナブルでありながら洗練されたデザインのウエアを提案すること。それを実現するため、ウィリアム・ルンドグレン(William Lundgren)最高経営責任者(CEO)をはじめ、4人のメンバーが集まり立ち上げた。もともとアートやファッションも好きで「ずっと自分の信念を形にできることを探していた」と振り返るルンドグレンCEOは、大学でビジネスを学んだ後、社会問題解決に取り組むNGOで活動。ビジネスパートナーであるヴェロニカ・カント(Veronika Kant)最高執行責任者(COO)は、自動車メーカーのボルボ(VOLVO)でキャリアを積んだ。一方、コレクションのデザインを担当するのは、「イエンス ラウガセン(JENS LAUGESEN)」などで経験を積んだ後、自身のブランドを手掛けてきたエリオット・アトキンソン(Elliot Atkinson)=クリエイティブ・ディレクター。そして、フォトグラファーとして活動するスザンヌ・エルヴィ(Suzanne Elvi)=クリエイティブ・ディレクターがビジュアル面を監修している。

 「クリエイションは常に素材選びからスタートする」とアトキンソン=クリエイティブ・ディレクターが語るように、「バイト ストゥディオズ」にとって素材は重要だ。現在は全体の95%が環境負荷の低い素材で、オーガニックのシルクやコットン、ウール、リネンに加え、リサイクルポリエステル、パイナップルの葉やトウモロコシを原料にしたレザーのような生地も使用。「私たち独自の基準を満たしたものしか採用しないため、『プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION)』(パリで開かれる世界最高峰のファッション素材見本市)などで上質かつ可能な限りサステナブルな素材を調達するだけでなく、オリジナル素材の開発にも力を入れている」。

 一方、デザインする上でイメージするのは、「贅沢で美しいものに価値を見出し、自分の選択にこだわりを持つインターナショナルな女性。メレット・オッペンハイム(Meret Oppenheim)やサラ・ルーカス(Sarah Lucas)、ジリアン・ウェアリング(Gillian Wearing)、ドロテア・タニング(Dorothea Tanning)といった女性アーティストたちから影響を受けている。そして、絵画や彫刻からデザインをふくらませることが多い」という。そんな美学に基づき生み出されるコレクションには、シャープなテーラリングを生かしたオーバーサイズジャケットやワイドパンツ、トレンチコートを筆頭に、柔らかなシルクシャツやドレス、肌触りのいいニットやトップスなど、ワードローブの定番になるようなミニマルでモダンなアイテムがそろう。スタイルにアクセントを加える天然染料を用いたプリントやハンドメードのアクセサリーは、同じような考えを共有するアーティストや職人とのコラボレーションによるものだ。「大切にしているのは、自然に優しいだけでなく、着る人の体や肌にも優しい服を作るということ。だから、有害な染色や加工は用いていない。地球に負担をかけることなく美しい服を生み出すことができると信じている」。

 価格帯はジャケット680〜1200ポンド(約8万1600〜14万4000円)、コート790〜1300ポンド(約9万4800〜15万6000円)、ドレス350〜990ポンド(約4万2000〜11万8800円)、トップス180〜690ポンド(約2万1600〜8万2800円)、パンツ380〜520ポンド(約4万5600〜6万2400円)、スカート490〜690ポンド(約5万8800〜8万2800円)など。アイテムはポルトガルのポルトで生産している。

 新たな取り組みとして、19年9月には着古された同ブランドのアイテムを定価の20%で買い取り、修復やデザインし直した後、再度販売する取り組みをスタートさせた。これについて、ルンドグレンCEOは「商品を売った後にもブランドには責任があると考えている。買い戻すことは商品の循環の一部であり、顧客との関係を築いていくことにもつながる。私たちのコレクションはもともと長く着用してもらうことを念頭に作っているが、一度役目を終えた服にも新たな命を与えたい」と語る。ただ、ブランドの歴史が浅いのでまだアイテムを収集している段階。準備が整い次第、公式オンラインショップを通じて販売するという。

 販路はこれまで「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」と公式オンランショップのEC展開のみだったが、20年春夏シーズンからはロンドンの老舗百貨店リバティ(LIBERTY)での取り扱いも決まった。「ゴールは、No.1のサステナブルなデザイナーズブランドになること。私たちと同じような美学を持ったブランドは他になく、ユニークなポジションを築いていると考えている。現在、フランスやイギリスの有力店とも交渉を進めているが、店舗を絞りながら販売していきたい」。

 同ブランドは設立から3年にして、サステナブルなモノ作りで知られるスウェーデンのデニムブランド「ヌーディジーンズ(NUDIE JEANS)」をはじめ4社から出資を受けている。また、ヨーロッパでは「ヴォーグ(VOGUE)」や「ハーパーズ バザー(Harper’s BAZAAR)」「ファイナンシャル・タイムズ(Financial Times)」「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」といったメディアにも度々取り上げられており、今後さらに注目を集めそうだ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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