
一般社団法人日本文化発信機構は、日本文化の新たな価値を国内外に発信する「プレミアム ジャパン アワード(PREMIUM JAPAN AWARD)2026」の授賞式を9月29日にギンザシックスの観世能楽堂で開催した。
初開催となる今回は、伝統芸術や現代文化、食文化など幅広い領域から、日本らしさを体現し文化の継承や革新に取り組む個人・団体、プロジェクトなどを選出。大賞にはNPO法人日本料理アカデミーが監修する「日本料理大全」が輝いた。ファッション領域では「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)」や「スズサン(SUZUSAN)」などが受賞した。
「プレミアム ジャパン アワード」は、伝統芸術、現代文化、食文化などの領域で日本らしさを体現し、顕著な貢献をした個人・団体、プロデューサー・キュレーター、特定プロジェクトを表彰するアワード。クオリティーや国際的な視点、革新性、継続性・将来性、日本らしさなどを審査基準とし、「プレミアム ジャパン(PREMIUM JAPAN)」編集部を中心に審査、日本文化発信機構理事会の承認を経て受賞者を決定した。
日本文化を“背景”まで世界へ
日本文化発信機構が運営
「プレミアム ジャパン アワード」を企画、運営するのは、2024年11月に設立された一般社団法人日本文化発信機構(以下、JCCO)。訪日旅行者が増え、日本への関心が高まる一方、日本文化について海外に伝わる情報が表面的なものにとどまっているとの課題意識から、日本の伝統文化や現代文化、文化産業について、その背景にあるストーリーまで含めて国内外へ発信することを目的に設立された。アワードの運営に加え、調査・研究、情報発信、セミナー、人材育成、企業間の事業連携などにも取り組む。
代表理事を務めるのは、エルメスジャポン社長、エルメス本社副社長を歴任した経歴を持つ齋藤峰明シーナリーインターナショナル代表。専務理事には、オンラインメディア「プレミアム ジャパン」を運営する島村美緒プレミアムジャパン代表取締役兼編集長が就く。
さらに、村田吉弘菊乃井社長、前田育男マツダ シニアフェロー ブランドデザイン、市川篤志・三井住友信託銀行顧問、臼井重雄パナソニック ホールディングス グループCCO兼ブランド・コミュニケーション戦略グループ長、庭崎紀代子・和光社長、方健太郎エクサ イノベーション スタジオ代表、福永浩貴ザ・リョカン・コレクション代表、尾上菊之丞・尾上流 三代目家元ら、錚々たるメンバーが理事として名を連ねる。
大賞を受賞した「日本料理大全」は、日本料理の技法や歴史、文化を体系化し、次世代や世界へ伝えるプロジェクト。料理人に加え、科学者や歴史学者らが参画し、包丁技術や出汁などの調理技法から、日本の自然や風土、歴史、美意識、年中行事との関係までを多角的にまとめている。料理人の経験や感覚によって継承されてきた暗黙知を科学的な視点から検証・体系化し、技術だけでなく背景にある歴史や文化、精神性まで記録している点が評価された。
特定プロジェクト賞に「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ」
宮前義之が登壇
ファッション領域では、宮前義之率いるエンジニアリングチーム「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ」が特定プロジェクト賞を受賞した。同ブランドは、「A-POC(A Piece Of Cloth)=一枚の布」の思想を受け継ぎながら、素材や技術、製造方法を研究し、衣服の新たな可能性を追求している。
企業や研究者、クリエイターなど異分野との協業を通して、受け継いだ技術や思想を現代のテクノロジーや新たな発想と結び付けてきた点などが評価された。
宮前は受賞について、「このような特別な賞をいただき、とても光栄です。私たちは、三宅一生が長年ものづくりで貫いてきた精神を継承しながら、未来へ発展させていきたいという思いで活動しています。日本には、長い時間をかけて培われてきた素晴らしい技術や人々の知恵があります。デザイナーの役割は、人と技術をつなぎながら、まだない美しいものを作っていくことだと考えています。今回、そうした活動を評価していただけたことを非常にうれしく思います。チームや、ものづくりを支えてくださる職人の方々と、この喜びを分かち合いたいです」とコメントした。
有松鳴海絞りを世界へ発信
「スズサン」も受賞
個人・団体賞には「スズサン」が選出。同ブランドは400年以上の歴史を持つ有松鳴海絞りの技術を、カシミヤやシルクなどの素材に応用。CEO兼クリエイティブディレクターの村瀬弘行は、守るべきものを「技術」と捉えながら現代的なデザインへと昇華し、現在は29カ国80都市へ展開している。
伝統技法を海外へ発信するだけでなく、若い作り手が有松に集まる環境を生み出すなど産地再生にも取り組む。さらに、各産地の経験や知見を共有する「from local, to local」という構想を掲げ、技術を産業として次代へつなぐ活動が評価された。
日本料理から工芸、歌舞伎、ウイスキー、日本酒など
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個人・団体賞にはこのほか、宮城県丸森町の「伊達冠石」をアートやデザイン、建築へと展開する「大蔵山スタジオ」、山口県・長門湯本温泉の老舗旅館「大谷山荘」、歌舞伎俳優の中村隼人、彫刻家の樂雅臣が選ばれた。
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特定プロジェクト賞には「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ」に加え、富山県砺波市でウイスキー造りを行う「三郎丸蒸留所」、海藻の栽培技術の研究から新たな食文化の創造までを手掛ける「シーベジタブル」、歌舞伎俳優・坂東玉三郎の舞台衣裳を紹介する「坂東玉三郎衣裳展」が選出。
プロデューサー/キュレーター賞には、青山和平が主宰する東京・表参道の現代美術ギャラリー「A Light House Called Kanata」が選ばれた。日本の現代作家を発掘し、海外のコレクターや美術館、アートマーケットへ紹介してきたキュレーション力やプロデュース力が評価された。
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また、スポンサーによる特別賞では、ひらまつ賞に「御昆布司奥井海生堂」、星野リゾート賞に「喜如嘉芭蕉布協同組合」、ルミネ賞に越前和紙問屋「杉原商店」、SAKE HUNDRED賞に東京・神楽坂の日本料理店「ふしきの」、和光賞には、28年間「ドン ペリニヨン(DOM PERIGNON)」で醸造最高責任者を務めたリシャール・ジョフロワ(Richard Geoffroy)が手掛ける日本酒「イワ(IWA)」の「白岩」が選出された。
授賞式では、日本舞踊家の尾上菊之丞と能楽師狂言方の茂山逸平による「逸青会」が「三番三」を披露した。「三番三」は式楽「翁」の中で狂言方が勤める五穀豊穣を寿ぐ舞で、今回は両者による「逸青会版」を上演した。

齋藤峰明シーナリーインターナショナル代表
「日本文化を未来へつなげる力に」
JCCOの齋藤峰明代表理事は、同機構とアワード設立の背景について、次のように語る。「今、伝統工芸や和食、芸能、デザイン、地域文化など、日本人の暮らしの中で長い年月をかけて育まれ、受け継がれてきた文化に世界中から熱い視線が注がれています。一方で、日本人にとってあまりにも身近だからこそ見過ごされている美しいものや、当たり前のように受け継がれてきたために注目されていない貴重なものも、まだ数多くあるのではないでしょうか。
世界が日本に注目する今だからこそ、そうした本質的かつ普遍的な価値を国内外へしっかり伝えることが、日本文化を未来へつなげる力になると考えています。JCCOでは、日本文化の価値を発見し、国内外へ発信するとともに、その価値を体現する優れた人や技、活動に光を当てていきます。文化を通じて人と人、企業と社会、そして日本と世界が出会う機会を生み出し、日本文化の新しい可能性と未来をつくっていきたいと考えています」。