サステナビリティ

世界最大級のサステナビリティの祭典GFAの重点は「CFO」 シンフラックスが大賞獲得

東京発のシンフラックス(Synflux)が、世界最大級のサステナビリティの祭典「グローバル・ファッション・サミット」のトレイルブレイザー・プログラム2026で大賞に輝いた。主催は非営利団体グローバル・ファッション・アジェンダ(GFA)。5月5〜7日にコペンハーゲンで開催された同サミットには、世界中から1000人超のブランド、小売り関係者、政策立案者、イノベーターが集った。そして、シンフラックスの受賞と同じ舞台で発表されたのが、今回のサミットで最も注目を集めた報告書「ファッションCFOアジェンダ2026:サステナビリティを通じた財務的レジリエンスの構築」だ。GFAとボストン コンサルティング グループ(BCG)の共同制作によるもので、業界構造の転換を示唆する内容となっている。

CFOはサステナビリティを「無視できる」のか?

GFAはこれまで、取締役会の最高位にあるCEOに向けた「CEOアジェンダ」を発信してきた。今回はもうひとつのキープレイヤーであるCFO(最高財務責任者)に焦点を当てた。

報告書は「サステナビリティがもたらす財務的影響はもはや無視できない」と主張する。気候関連の混乱はコットンやウールといった主要原材料の価格を最大2倍にまで押し上げ、迫り来る繊維分野の「拡大生産者責任(EPR、生産者に製品の廃棄段階まで責任を負わせる仕組み)制度」は、2030年までに大手マスファッションプレイヤーの純利益を約4%削り取る可能性があるからだ。

加えて、温室効果ガスの排出に価格をつける「カーボンプライシング」は対象範囲を広げ、財務に関わる実務者にとって避けて通れないテーマになっている。「サステナビリティは成熟しつつあり、小規模な持続可能素材への投資から、本格的な持続可能素材戦略へと移行している」と語るのは、報告書共著者でGFAのジャスティン・パリアグ=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(PVHコープ出身)だ。「サステナビリティ部門主導の取り組みでCFOがステークホルダーの一人に過ぎなかった段階から、財務部門の意思決定そのものが起点となる段階へと移行している」。

「重要性は増しているのに、注目度は減っている」逆説

ただし、コーポレートコミュニケーションでは興味深い変化も起きていると報告書は強調する。ファッション企業の決算説明会における「サステナビリティ」への言及は、2022年以降、約3分の1まで減少しているというのだ。一方で、AI、業績変動、貿易関連トピックへの言及は増えている。

パリアグCSOが「重要性は増しているのに、注目度は減っている」と表現するこの逆説的な現象の背景には、複数の要因がある。中東情勢による物流の混乱と原油価格の乱高下、社会的公正への配慮を示す「ウォーク(woke)」な企業姿勢に冷淡な米国大統領、そして目まぐるしく変動する関税政策などだ。

「我々の調査では、回答者の大多数がサステナビリティを事業の最重要課題と一貫して評価した。しかし続く質問で『サステナビリティは財務システムに完全に組み込まれているか』と尋ねると、そこには大きなギャップがあった」とパリアグCSO。成長鈍化もこの傾向を悪化させる。報告書によれば、アパレル市場の予測成長率は23〜28年で年率2〜4%にとどまり、コロナ禍後の回復期に見られた7〜14%から急減する見通し。一方、150ブランドの決算説明会における「貿易規制」への言及は、22年から25年の間で約5倍増加した。経営層はより目先の予算圧迫に意識を集中させざるを得ない状況だ。

この「静かな時期(quiet phase)」は、サステナビリティが宣伝の文句から経営の必須項目へと移行している兆しとも読める。だが同時に、注目度の低下がモメンタムの緩やかな後退を招くリスクもある。だからこそCFOの役割が重要になる、とパリアグCSOは説く。「CFOには非常に独自な役割がある。長期的な価値を組織に埋め込みながら、同時に事業の財務的健全性を守る立場だからだ。サステナビリティの視点から出てくるビジョンの多くを、実際の運用に落とし込む役回りでもある」。

報告書共著者でBCGのカタリーナ・マルティネス・パルド=マネージング・ディレクター&パートナーは次のように語る。「リーダーたちは複数のプレッシャーをやりくりしているが、サステナビリティはすでに業界の経済構造を作り変えつつある。予算が厳しい時こそ、CFOは投資の優先順位付けにおいて重要な役割を果たし、財務的リターンとサステナビリティ・インパクトの両方を生む取り組みを支えなければならない」。

受賞したシンフラックスが現地で実感した潮流

冒頭のシンフラックス受賞は、まさにこの潮流を体現する出来事だ。同社が提唱する「アルゴリズミック・クチュール」は、機械学習と3Dシミュレーションを統合し、デザイン段階から生地廃棄を最大3分の1削減、素材コストを最大15%削減する独自システムだ。「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」、「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)」といった日本発を含む複数ブランドとの協業実績を持ち、商業的なスケーラビリティが評価されてのグランプリ獲得となった。同社はPDSベンチャーズから最大20万米ドル(約3200万円)の投資を受ける。

川崎和也シンフラックスCEOは、最終プレゼンテーション後、審査委員長を務めたケリングのマリー=クレール・ダヴー チーフ・サステナビリティ&インスティテューショナル・アフェアーズ・オフィサーとPDSグループのファイザ・セス共同創業者から評価ポイントを直接伝えられたという。挙げられたのは「サステナビリティへの具体的な貢献」「ビジネスのスケール可能性」「インパクトの定量可能性」の3点。「AIがサステナビリティにもたらす新たなインパクトという観点でも、私たちのアプローチが注目を集めることができたと感じている」。

サミット全体のテーマである「Building Resilient Futures(レジリエントな未来を築く)」についてはこう続ける。「サステナビリティの概念がより強固なものになるには『レジリエンス=再生力』が不可欠だという認識が、登壇者たちの間で繰り返し共有されていた。CFOアジェンダに象徴されるように、サステナビリティとファイナンスの言語を統合し、実装へと落とし込んでいく必要性も強調されていた。定性的な取り組みにとどまらず、定量的に示せる成果と、実装可能なスケールを持つソリューションこそが、これからの時代に求められているのだと思う」。

デザイナー支援プログラム、初代受賞は「マータン」

なお今回のサミットでGFAは、ReHubsと共同で「2030サーキュラリティ・ブループリント」を発表した。EUの繊維エコシステム転換と繊維リサイクル推進を目指す枠組みだ。また、Visaと共催する若手デザイナー支援プログラム「ヴィザ・ヤング・クリエイターズ:リサイクル・ザ・ランウェイ」のグランプリには、アムステルダム拠点で高級ホテルの廃棄リネンをハイエンドのレディトゥウエアに転換する「マータン(MARTAN)」が選ばれた。

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