ファッション

幸福度No1.フィンランドのデザイン最前線に触れる「ヘルシンキ・デザイン・ウイーク」

「ムーミン」で知られるフィンランドは、人口約560万人という北欧の小さな国だ。しかし、国民の幸福度を示す「世界幸福度報告書」では今年9年連続で首位となり、ジェンダーギャップ指数でも2位を獲得するなど、国際的な評価が高い。社会保障が充実し、女性の経営者も多く、ワーク・ライフ・バランスに優れた国としても注目されている。日本では、ヘルシンキを舞台にした映画「かもめ食堂」を通じて、サウナやコーヒー、シナモンロールを楽しむフィンランドのライフスタイルが広く知られるようになった。シンプルな機能美を好むフィンランド人の国民性は、控えめで謙虚。そうした点が日本人と親和性が高く、「マリメッコ(MARIMEKKO)」をはじめ、インテリアの「アルテック(ARTEK)」やテーブルウエアの「イッタラ(IITTALA)」など、フィンランドブランドは日本でも非常に人気が高い。ここでは、9月初旬に開催された「ヘルシンキ・デザイン・ウィーク(HDW)」で触れた、フィンランドデザインとライフスタイルを紹介する。

時代を超えるフィンランドデザイン

「ヘルシンキ・デザイン・ウィーク(HDW)」では、市内各所でデザイン関連のイベントや展示が行われた。カイサニエミ植物園には、1960年代のUFO型住宅「フトゥロ」が登場。住宅内の内装を「マリメッコ」が手掛け、ビビッドカラーのテキスタイルが彩るポップな近未来的空間に仕上げた。港には、「イッタラ」による「アアルト 90 パビリオン」が登場。今年90周年を迎えたアアルト ベースを再生アルミニウムで再現し、会場内では写真家アルノ・ラファエル・ミンキネンの作品を展示した。巨大な花瓶の中に迷い込んだような感覚に陥るダイナミックなインスタレーションで90年愛され続ける作品へオマージュを寄せた。いずれも、自然とレトロフューチャーな建築物が融合した展示で、フィンランドデザインの普遍性を感じさせるものだ。

国民的ジュエリーブランド「カレワラ」が90周年イベントを開催

「HDW」の目玉は、現在改装中のフィンランド国立博物館で行われた「カレワラ(KALEVALA)」の90周年記念イベントだ。フィンランド人にとって「カレワラ」は、おなじみのジュエリーブランド。自然から着想を得た彫刻的なデザインが特徴で、多くの家庭で祖母から母、子どもへと受け継がれている。その「カレワラ」の原点ともいえるのが国立博物館だ。国立博物館に収蔵されていたブローチが、ファーストコレクションの着想源になったからだ。現在、国立博物館は改装中だが、「カレワラ」のために特別に公開された。新築の建物と旧建築物をつなぐアトリウムで開催されたイベントでは、職人たちがジュエリー制作を披露したほか、ファッションショーも開催。ヘルシンキのファッション業界関係者やアーティスト、モデルなど、さまざまな人が集う華やかなイベントとなった。「カレワラ」は、来年迎える90周年に向けて、日本でもさまざまなイベントを予定しているという。

”ビンテージ=プレラブド”をこよなく愛するフィンランド人

ヘルシンキにはデザイン・ディストリクトがあり、ビンテージ家具やセカンドハンド品を販売する「アルテック セカンド サイクル」をはじめ、ビンテージショップが数多く存在する。販売されているのは家具やテーブルウエア、雑貨、ファッションまでさまざまだ。これだけ多くのビンテージショップがあるのは、フィンランド人がモノを大切にする証し。また、フィンランドデザインがタイムレスであることの裏付けでもある。半世紀以上にわたり愛され続けているアアルト ベースや、「マリメッコ」のウニッコ柄などが代表的だが、ビンテージショップで出合うアイテムの多くが、自然と今の空気になじむものが多い。平日でもヘルシンキ市内のビンテージショップは、幻の名品やレアアイテムを探し求める人でにぎわっている。また「カレワラ」や「マリメッコ」では、使用された自社製品を買い取りメンテナンスして"プレラブド(愛されたもの)”として直営店で販売。このようなブランドの取り組みにより、フィンランドでは、ビンテージの代わりに”プレラブド”という表現が広がりつつある。

フィンランド人にとって欠かせない森

フィンランドのデザインを語る上で欠かせないのが「森」だ。自然を愛するフィンランド人は、夏は森の中のサマーハウスで過ごし、秋には森へキノコ狩りに出かけるという。サマーハウスをはじめ、家具や雑貨にも木材を使うことが多く、「アルテック」の白木のスツールはその象徴ともいえる。「HDW」と同時に開催された家具・インテリアの見本市「ハビターレ(HABITARE)」でも、木材を使った空間や家具、雑貨などの展示が多く見られた。木そのものの温もりや風合いを生かしたシンプルな機能美が、フィンランドデザインの特徴だ。

「HDW」のプログラムの一環で訪れたアーティスト、ビョルン・ヴェクストロームの自邸兼アトリエも森の中にある。自宅や庭には、彼が手掛けた数々の彫刻やジュエリー作品が飾られ、邸宅というよりも美術館のような趣だ。ヴェクストロームは、1977年公開の映画「スターウォーズ(STAR WARS)」で、レイア姫が着用したジュエリーをデザインした人物。91歳の現在も、水辺のアトリエで制作を続け、自ら自宅の案内も行う。フューチャリスティックな彼の作風と、豊かな自然とのコントラストが興味深かった。健康でクリエイティブであり続ける秘訣は、自然に囲まれたシンプルな暮らしにあるのかもしれない。

「HDW」会期中、街の目抜き通りには、秋の到来を告げるキノコを使った料理を提供する「ワイルド マッシュルーム バー」が登場し、シェフのサミ・トールバーグが腕を振るった。森で採れるのはキノコだけではない。ブルーベリーやラズベリー、リンゴンベリーといったベリー類も豊富で、森で採ったものが家庭の食卓に並ぶという。自然を愛するフィンランド人にとって、森は身近な存在であり、生活の一部になっている。

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