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写真家RKに聞く“BMW M4”撮影記 亡き父との記憶から“実在しない景色”まで

PROFILE: RK(小菅亮輔)/フォトグラファー

RK(小菅亮輔)/フォトグラファー
PROFILE: RK(小菅亮輔)/フォトグラファーPROFILE: 1982年、茨城県古河市生まれ。2013年にiPhoneのみで撮影・編集を行い、Instagramを中心に活動を開始。17年にグラフィックデザイン会社を退社し、フォトグラファーとして独立。ストリート、建築、自然などジャンルを問わず独自の視点で撮影し、国内外から注目を集める。これまで村上隆、KAWS、TYGA、Naomi、Daniel Arshamらを撮影したほか、「ナイキ」「アディダス」「プーマ」「ニューバランス」などのブランドワークも手掛ける。Instagram https://www.instagram.com/rkrkrk/ PHOTO:RK

写真家RKが、“BMW M4”を東京の街で撮り下ろした。夜から朝まで、丸一日かけて街を走り、長時間露光や並走撮影、Photoshopによる大胆な加工まで駆使して生み出した作品群は、10月14日まで、麻布台ヒルズの「フロイデ・バイ・ビーエムダブリュー(FREUDE by BMW)」で展示されている。RKにとってBMWは、単なる被写体ではない。亡き父が生前最後に乗っていたのがBMW 7シリーズ(大型セダン)だったからだ。子どものころには理解できなかった父の「見栄」も、ファッションや表現の世界に身を置くようになった今なら、少し分かるという。今回の撮影について、父との記憶から、東京というロケーション、写真を加工して“実在しない世界”を作る理由、さらには広告写真とSNSの距離感まで話を聞いた。

親父も愛したBMW

──今回、“BMW M4”を撮影しましたが、RKさんにとってBMWはもともと思い入れのあるブランドなんですよね。

RK:親父が最後に乗っていたのがBMWの7シリーズなんです。その前も外車に乗っていて、オカンはずっと「外車なんてやめろ」って言っていました。壊れたら修理費が何十万円とかかるし、「うちの家計は火の車だ」って。それなのに親父はBMWの7シリーズを買いやがって(笑)。それで夫婦ゲンカが勃発したことは何度もありましたね。

──意外と、いい思い出ではない(笑)。

RK:正直に言うと、あんまりいい思い出じゃない(笑)。僕も子どものころは、お父さんって普通は、大型ワゴンなんかに乗って、家族でキャンプに行くものだと思っていたんです。「なんでセダンなんか乗ってるんだ」って、不満でした。

──その感覚が変わったのはいつごろですか?

RK:高校生ぐらいになると、親父がやっていたことが少しずつ分かるようになりました。かっこいい車に乗って、かっこつけることも大事なんだなって。僕自身、小学校高学年くらいからファッションに興味を持ち始めたので、そういう感覚が少しずつ分かるようになったのかもしれないです。

──お父さんは、なぜ7シリーズを選んだんでしょう。

RK:見栄を張りたかったんじゃないですか(笑)。茨城(RKの地元)の田んぼの中で、一番高くて、一番でかい車を買って。親父は農協で働いていたんですけど、会社にはBMWでブイブイ言わせて行っていたくせに、その後、旅行会社で個人で動くようになって、誰にも見られなくなったら軽自動車で行くようになるんですよ(笑)。子どものころは「そんな見栄張らなくてもいいのに」って思っていたけど、今はその見栄も分かる。男は見栄を張らなきゃいけない時もあるな、みたいな。ただ、いまだに「ど田舎でやってもしょうがなくない?」とは思いますけど(笑)。

──今でも7シリーズを見ると、お父さんを思い出しますか?

RK:思い出しますね。「あ、親父と同じ色だ」とか。だから今回、BMWと仕事ができたこと自体は、やっぱり思い入れがあります。

東京を丸一日走って撮影

──今回、“M4”を東京で撮影しています。自然の中ではなく、街を選んだ理由は?

RK:Mシリーズは都会に似合うと思ったんです。自然の中を走らせても、どうなのかなって。本当は銀座の歩行者天国でも撮りたかったんですが、事情があって実現できなくて。そこから「ここがいいんじゃないか」「あそこがいいんじゃないか」といろいろ考えて、東京中を走りながら撮りました。

──撮影は夜から始めたそうですね。

RK:夜から始めて、結局、丸一日ぐらい撮っていました。高速道路にも乗ったし、BMWのオープンカーも貸してもらって、僕らがそこに乗って“M4”を追いかけながら撮ったり。アシスタントに運転してもらって、向こうの車とも通話しながら「もっと近づいて」「こうして、ああして」って。

──かなりライブ感のある撮影ですね。

RK:そうですね。もちろん事前に「ここで撮りたい」という場所は決めていたんですけど、移動中にも「あ、ここいけるんじゃない?」って見つけて、そのまま撮ったり。朝日でレインボーブリッジを撮りたいというのもあったので、それに合わせて時間を計算しながらずっと動いていました。

──少し雨も降っていますが、それも作品に生きています。

RK:車を撮る時は雨っていいんですよ。路面も車体もテカるから。今回、朝方に少し雨が降ったんですけど、「降ってくれてよかった」と思いました。

RKが作り出す“実在しない世界”

──展示されている中で、特に気に入っている写真は?

RK:高速道路がメデューサみたいに見える写真ですね。あの場所は他の撮影でも何回か使っているんですけど、今回は“M4”とバッチリはまったと思います。

──今回の作品では、撮った写真をかなり加工していますよね。

RK:そうですね。例えば、両側にトラックが並んでいる写真があるんですけど、実際には左側にしかトラックはいなかったんですよ。右側は普通の道路でした。でも、そこで長時間露光をしたら面白いと思って。さらにそれを強調するにはどうしたらいいか考えて、左側を反転させて右側にも置いたんです。

──つまり、実際には存在しない景色。

RK:完全に実在しないです。でも、それはアート作品として見てもらえればいいかなと思っています。リアルな景色をそのまま使っているものもあるし、世界そのものを作ったものもある。

──RKさんにとって、写真は「撮ったものをそのまま見せる」という感覚ではない?

RK:全然ないですね。今回も、展示する場所によって写真のサイズが違うし、すごく縦長のスペースもある。「こんな縦長、どうしたらええねん」って(笑)。でも、車って基本的に横長じゃないですか。それを縦長で見せること自体が、アウトプットとして面白いと思ったんです。

──展示空間に合わせて、写真そのものを再構築している。

RK:そうです。どこに何を飾るか、どういうサイズで見せるかによって、選ぶ写真も変わります。それにInstagramにも載せるし、展示用にも印刷する。だからまず元の画角で全部を完成させて、そこからそれぞれのフォーマットに合わせてトリミングする必要があります。

──かなり細かい作業ですね。

RK:めちゃくちゃ大変です(笑)。

──RKさんの作品は、色の出方も特徴的です。普段の展示ではアクリルパネルを使うことが多いそうですね。

RK:僕のエディットって結構特殊で、Instagramとかスマートフォンで写真を見る時の見え方を意識しているんです。スマホって画面自体が発光しているじゃないですか。バックライトがあるからこそ、よく見える写真もある。それをリアルな展示でどう表現するか考えた結果、アクリルパネルにたどり着きました。紙にプリントした写真の上に透明なアクリルを重ねて、後ろから照明を当てています。

──デジタルで見る写真の感覚を、リアルな展示に持ち込んでいるんですね。

RK:そうです。今回はマット紙だったので、最初はちょっと心配だったんですけど、結果的にはいい感じに仕上がったと思います。

広告写真の先に撮りたいもの

──今後、写真家として改めて撮りたいものはありますか?

RK:最近は広告の仕事が増えて、スタジオで撮ることも多いんです。でも、結局僕の出自ってどこだろうと考えると、シティスケープだったり、ランドスケープだったり、いろいろな景色を撮ることなんですよね。だから、そういうものをもう一度ちゃんとやりたいなと思っています。

──広告の仕事と、自分の作品には違いがありますか?

RK:広告って難しいんですよ。僕はInstagramから出てきた人間なので、自分のアカウントを伸ばすことを考えると、完成した写真だけを載せても、今はなかなか伸びない。むしろ、その写真が出来上がるまでの過程の方が面白いと思うんです。「この広告はこうやって作られている」「ここまでやって、この一枚になっている」というところまで見せられたら面白い。

──ただ、広告ではそれが難しい。

RK:難しいですね。クライアントがいて、制作がいて、演者がいる。いろいろな人の承認を取らなきゃいけないので。結果だけなら見せられるけど、過程は簡単には見せられない。

──見る側は、むしろその“生々しさ”を求めているのかもしれませんね。

RK:そう思います。だからフィルムとか、ストリートっぽい写真が今も支持されるんだと思う。「あ、この感じいいね」っていう、生っぽいもの。広告のフィルターを通すと、どうしてもきれいに整っていくじゃないですか。商品がきれいに見えて、演者の顔がきれいに見えて。もちろん、それが広告として正しい部分もあるんですけど、SNSではそれだけだと届かないこともある。だから僕は、完成した一枚だけじゃなくて、その一枚に至るまでの過程も含めて写真を見せられたら面白いと思っています。

──最後に、村上隆さんとも長く仕事をしていますが、アートについて村上さんから学んだことはありますか?

RK:イケイケ、ゴーゴー(笑)。敵を作ろうが何をしようが、自分の信念を曲げない。でも、それ以上にすごいのは、とにかく勉強していることだと思います。アートの歴史や文脈も全部知っていて、「これはこういう歴史があって、こうだから、この価値になる」というところまで話す。いろいろなアーティストが周りにいますけど、どんな人よりも勉強しているんじゃないかなと思います。大御所になっても、一生勉強している。それでいて自分のやりたいことをアウトプットして、ずっと戦っている。敵とも戦うし、自分とも戦う。

──RKさん自身も、ずっと自分と戦っているように見えます。

RK:いや、僕なんか全然ですよ(笑)

■RKによるBMW M4の写真作品展示
会期:2026年9月16日(水)〜10月14日(水)
会場:FREUDE by BMW
住所:東京都港区麻布台1-3-1 麻布台ヒルズ タワープラザ1F/2F
営業時間:11:00〜21:00
入場料:無料
展示車両:BMW M4 Competition M xDrive クーペ(パープルシルク)

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