ファッション

アシックス、個人投資家向けの体験型イベント 足型測定や走り方レッスンも

アシックスは、個人投資家向けの体験型IR説明会を神戸のANAクラウンプラザホテルで9月12日に開いた。廣田康人会長CEOが同社の歴史と業績を説明した後、スペシャルゲストとしてアテネ五輪ハンマー投げ金メダリストで前スポーツ庁長官の室伏広治氏が特別講演を行った。

説明会は2025年3月の沖縄を皮切りに全国各地で行われ、今回が13回目。今回の神戸では会場参加者が431人、オンライン参加者が800人となった。過去12回の累計動員は3325人に上った。こうした草の根活動と好業績が重なって、個人株主数は23年末に比べて約2.5倍に増加した。

廣田会長CEOは「株主はすでにユーザーでもある。製品を身近に感じてもらう機会を提供したい」と述べる。会長、社長だけでなくIR担当以外の役員も各会場に赴く体制を取り、「現場で株主、顧客と直接触れることが役員にとって非常に重要な学びになる」と語った。
 

Cプロジェクトの成果アピール

廣田会長CEOは、まず創業者・鬼塚喜八郎の物語から話し始めた。戦後の神戸で青少年が非行に走る姿を目にした鬼塚が「スポーツを通じた青少年の健全育成」を志して鬼塚商会を設立した経緯や、1966年に神戸港の波から着想を得てアシックスストライプが誕生した歴史、そして社名がラテン語「Anima Sana In Corpore Sano(健全な身体に健全な精神があれかし)」の頭文字に由来することを紹介。事業説明ではとりわけ「Cプロジェクト(頂上作戦)」の成果をアピールした。

 2012年ロンドン五輪ではマラソン表彰台にアシックスの製品を着用した選手が1人もおらず、箱根駅伝のシェアも2021年にゼロにまで落ちた。「競合するナイキの厚底シューズに完全に遅れを取った」と廣田会長は振り返る。

そこで契約選手の声を徹底的に聞き直し、走法別に設計した2モデルを開発。世界陸上マラソンでのシェアはリオ大会の4%から昨年東京開催の大会では約40%まで回復し、箱根駅伝でも約30%まで戻した。「2024年パリ五輪では男子マラソンで銀メダルを獲得し、表彰台に戻ってきた。次の目標は男女マラソンで金、銀、銅をアシックス着用選手が占めること。2028年ロサンゼルス五輪に注目してほしい」と力強く語った。

業績面では、26年12月期の売上高が1兆円を超える見通しを示した。海外売上比率は80%超で、スポーツスタイルとオニツカタイガーは前年同期比40%以上の成長を記録。8月には通期業績予想を上方修正した。株主還元については、44円の配当を予定するとともに、9月9日には700億円の自己株式取得を発表。「配当利回りだけでなく、株価上昇を含むTSR(株主総利回り)で評価してほしい」と訴えた。株価に関する施策発表後は、長期保有を重視する機関投資家からおおむね好意的な反応を得たといい、SNS上でも「日本企業の姿勢が変わってきた一例」として取り上げられたと明かした。

室伏広治氏「高い目標こそが原動力」

 
特別講演では、アシックスのブランドアンバサダーを務め、昨年10月には同社とアドバイザー契約を締結した東京科学大学副学長の室伏氏が、アシックスのロゴ入りTシャツ姿でステージに立った。「廣田会長のプレゼンに大変感銘を受けた。アスリートも、ちょっと届かないかもしれない高い目標を掲げるからこそ、それが原動力になる。まさにそういった精神ではないか」と切り出した。

現在、東京科学大学でゲンテン研究センター長も兼務する室伏氏は「Sound Mind, Sound Body」をテーマに身体機能の維持、向上の重要性を説いた。研究によれば運動器機能は49.1歳頃から急激に低下する傾向があるが、「これは統計的な傾向に過ぎない。運動を始めるのに遅すぎることは決してない」と、実験結果を交えて説明した。講演後半では、参加者全員が配られた紙風船を使い、誰でもどこでもできる軽い運動で「Sound Mind, Sound Body」を実践した。

室伏氏はアシックスについて「長年にわたり、日本および世界のトップアスリートを支えてきた。支援対象は走る人、観る人、ボランティア、地域コミュニティにも及ぶ。競技力強化は一朝一夕には実現しないため、継続的な支援が不可欠」と強調した。

参加者との対話重視

ステージプログラムでは、参加者からさまざまな質問が寄せられた。「神戸マラソンに株主向け優先出走枠を」との提案が上がると、廣田会長は「主催者との調整が必要だが、ぜひ検討したい」と応じた。子ども向けシューズ「スクスク」についてオンラインストアの在庫を増やしてほしいという改善要望に対しては、「来年からグローバル展開を進め、ラインナップを充実させていきたい」と述べた。

会場では、足型計測や歩行姿勢測定、ランニングシューズやウォーキングシューズの試し履き、VR・3D シューズビューアーなどのデジタル体験、ランニングコーチによるワンポイントレッスンのブースを用意。人気のオニツカタイガーのコーナーも充実し、ライトアップされた台座にシューズやバッグ、香水が展示された。

抽選で室伏氏の著書「ゾーンの入り方」が当たった大阪在住の男性は「海外でのオニツカタイガーの人気と、アシックスのシューズが自分の足に一番フィットしたので株を購入した。今日初めて社名の由来を知り、ものづくりへの思いや地元愛が感じられた。デザインと機能性を両立しているアシックスを長く応援していきたい」と語った。

子どもの靴選びをきっかけに約4年前にアシックスの株を購入したという大阪在住の女性は「夫が神戸出身というのもあり、夫婦でアシックスの話をするようになった。最近は、底が厚めで可愛いデザインのシューズを買い、気に入っている」と笑顔を見せた。

かつてアシックス株を保有し、株価上昇のタイミングで売却したという41歳の男性は「海外売上が8割という数字が改めて印象に残った。人口減少が続く日本でグローバル戦略を推進しているのは正しい方向だと思う。株価水準を見極めながら再購入を検討したい」と述べた。

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