「私たち『ブレモン(BREMONT)』は、『ネクスト・スタンダード・ラグジュアリー・ウオッチ』として、イギリス時計の魅力を世界に発信する」ーー。
こう語るのは、時計専門店「ベスト販売」(東京·新宿)の表参道店で日本での販売が始まった時計ブランド「ブレモン」のダビド・チェラート(Davide Cerrato)最高経営責任者だ。
「ブレモン」は、ロイヤル・エアフォース(RAF イギリス空軍)のパイロットで航空工学の博士号を持つ人物を父に持ち、ロンドンの金融街で働いていたニック・イングリッシュ(Nick English)とジャイルズ・イングリッシュ(Giles English)兄弟が2002年に創立した。父は1995年3月、ヴィンテージ航空機の飛行練習中に墜落して即死。同乗していたニック氏も生死の境をさまよい、この事故で「人生は短い」と悟った2人が「本当にやりたいこと」としてスタートした。メード・イン・イングランドの時計としてイギリス国内で圧倒的な人気を獲得したが23年には、巨額の投資資金を受け入れた。国際的な時計ブランドに成長するというミッションを託されたのが、チェラートCEOだ。ちなみに兄弟は25年で取締役を退任。現在は創業者としてブランドアンバサダーを務めつつ、「ヤード・オ・レッド(YARD・O・LED)」というイギリスの筆記具ブランドに情熱を注いでいるという。
「『パネライ』『チューダー』『モンブラン』
で働いてきた私でも、高級時計は高すぎる」
チェラートCEOは、「私は『パネライ(PANERAI)』のコミュニケーション担当を皮切りに、『チューダー(TUDOR)』のリローンチ・プロジェクトのリーダー、『モンブラン(MONTBLANC)』の時計部門のマネージング・ディレクター、さらにマイクロメゾン『HYT』のCEOと、さまざまなブランドを経験してきた。そんな経験から個人的にも、今の高級時計の価格はあまりに高過ぎる。名門ブランドのスタンダードモデルはどんどん値上がりし、“安くてそれなり”な時計との2極化が極端に進み、高級ブランドのエントリー時計はなくなってしまった。これは、時計の未来にとって望ましいことではない」と話す。そこで冒頭の「ネクスト・スタンダード・ラグジュアリー」というわけだ。チェラートCEOは、「ラグジュアリーウオッチのエントリーポジションに立って、(2極化して生まれた)空白を埋めたい。そのために必須なのは、価格をはるかに超えた価値と品質。購入後もずっと満足できる、愛着を持って使い続けられるデザインだ」と続ける。
新型コロナウイルスのパンデミックで起きた外出制限や渡航制限、そして冷え込む経済活動への救済措置として行われた各国政府による異次元の金融緩和の結果、21年から24年は世界中の富裕層がリベンジ消費を謳歌した。そして起きたのが、“コロナバブル”とも呼ばれる世界的なラグジュアリーブーム。しかし残念ながら、ブームは今、完全に去った。そこで時計業界では今、30万円以上~100万円以下の「アフォーダブル(頑張れば手が届く)ウオッチ」が注目されている。その主役は、高級時計ブームの中、真面目な時計作りを行いながらも努力が評価されずに低迷していた中堅ブランドたちだ。「ブレモン」も、この市場に狙いを定めている。その価格帯は、50万~120万円だ。
「若いビジネスパーソンが、少し
背伸びして買った時計も高くなり過ぎた」
今回「ブレモン」の正規輸入代理店として日本導入を決断したベスト販売の石田充孝(いしだ みつたか)社長は、「かつて若いビジネスパーソンが少し背伸びをして購入していた有名ブランドの時計は高くなり過ぎた。それに代わる魅力的な選択肢が必要だ。身近な価格ながら高品質で、しかもスイス時計とは異なる歴史や文化的背景、独自の物語がある『ブレモン』は、間違いなく最良の選択肢のひとつだ」と導入の理由を語る。
実際チェラートCEOは、「私たち『ブレモン』は、第一にイギリスの時計ブランド。第二にイギリス陸軍やロイヤル・ネイビー、ロイヤル・エアフォースと提携する、リアルミリタリーなツール&スポーツウオッチ。第三に、ムーブメントはスイス製ながら、時計の開発·製造をイギリスの自社で行うマニュファクチュール。そして第四に他社にはない独自のデザインや品質を備えている」と歴史や背景、物語を列挙する。
第四の「他社にはない独自のデザインや品質」とは、具体的にはアイコンモデルである航空クロノグラフ“アルティテュード”に採用されている「トリップ・ティック」と呼ばれる3ピース構造のケースや、一般的な「316L」ステンレススチールよりも優れた耐食·耐傷性、そして独特の美しい輝きをもたらす「904L」や「グレード2チタン」のケース素材への採用、さらに戦闘機のコックピットからの緊急脱出を可能にする射出座席メーカーのマーティン・ベイカー(MARTIN-BAKER)社と提携する加速度テストなどの過酷な試験を意味する。
製品ラインナップはSEA(海)、LAND(陸)、AIR(空)という3つのカテゴリー。これに加えて、アメリカのアストロラボ社が進めるローバー(月面車)による月面探査計画「Moon Mission I(ムーン・ミッション1)」 の公式パートナーになったことをきっかけに、SPACE(宇宙)も加えた。
「ムーン・ミッション1では、私たちが開発した新しいクロノグラフウオッチ“スーパーノヴァ”を、月面ローバーの車体に直接ボルトで固定して月面で耐久性をテスト。さらにテスト終了後も『月面に永住する初のイギリス製時計』として月面に残ることになっている」とチェラートCEOは話す。