ファッション

5年で売上高2倍、パリ発ジュエリー「シャルロット シェネ」の旗艦店が青山に  デザイナーに聞く成長の軌跡とこれから

PROFILE: シャルロット・シェネ / 「シャルロット シェネ」デザイナー

シャルロット・シェネ / 「シャルロット シェネ」デザイナー
PROFILE: フランス・パリのスタジオ・ベルソーを卒業後、ニコラ・ジェスキエールが率いる「バレンシアガ」でアシスタントデザイナーを9年間務め、ジュエリーコレクションの立ち上げに参画。15年に自身のブランド「シャルロット シェネ」を設立。同年にフランス国立モード芸術開発協会主催の「ANDAMファッション・アワード」のアクセサリー部門でグランプリを受賞。現在パリに直営店が4店舗、青山に1店舗、世界で約80店舗で販売 PHOTO:SHUHEI SHINE

フランス発のジュエリーブランド「シャルロット シェネ(CHARLOTTE CHESNAIS)」は、日本初となる旗艦店を東京・青山にオープンした。デザイナーのシャルロット・シェネが自身のブランドを設立して11年。現在ではパリに直営店4店舗を構えるまでに成長した。日本では起業時からパートナーや顧客に恵まれ、卸中心に展開してきたが、パリの次の旗艦店の場所に東京を選んだ。来日したシェネに、旗艦店出店までの道のりと、これからについて聞いた。

コロナ禍で確信した日本への出店

シェネは、「日本は重要な市場。文化や人々にも強い魅力を感じるし、ブランドとしてのポテンシャルもある。コロナ禍でも売上高が落ちず、出店への確信に変わった」と語る。彼女自身、大の親日家で何度も来日しており、日本の文化や人々に対する関心も高い。「東京で顧客との関係を築く場として旗艦店を開くのは自然な流れだった」とシェネ。とはいえ、言語や商習慣が異なる東京で独立系ブランドが出店するのは容易なことではない。彼女は「まず、日本法人の設立に半年以上を費やした。弁護士や会計士などを通して膨大な量の書類手続きが必要だった」と話す。そして、約2年前に日本法人を設立。東京で物件を探し始めるが、なかなかいい物件はなく、その難しさを実感していた。青山の空き物件について不動産屋から連絡があったのは法人設立した年の12月。「全てをリモートで物事を進めるには限界がある。オンラインで物件を見た途端、直感的に“現地に見に行くべきだ”と感じた」とシェネ。すぐに空港へ行き、その物件を見るために東京へ飛んだという。「正に理想的な物件で、クリスマス前日に契約した」と当時を振り返る。

直島から着想を得た自然と共存し表情を変える旗艦店

青山の旗艦店は、ミニマルでモダンな3層。店内には、シェネによるオブジェが置かれ、まるでアートギャラリーのようだ。彼女は、「パリの店舗の延長線上にありながらも、東京らしさをプラスしたつもり。ジュエリーが宙に浮かんでいるような、有機的で流動的な空間を目指した」と話す。ファサードや天井、什器など店舗全体にガラスを多用することで、浮遊感のある空間に仕上げている。壁には、ジュエリーに施すヴェルメイユ(シルバーに18金をコーティングする技法)を施した。独特のタッチで塗られたゴールドの壁は、自然光とともにうつろいながら店内を柔らかに照らすだけでなく、時間と共に酸化が進み、表情が変わっていくという。シェネは、「この空間は、直島への旅が着想源。アートが自然と共存し、時間と共に変化する様子に心を動かされた。その感覚を旗艦店で表現したかった」と話す。日本独自の施工方法や規制に適応する必要があったが、制約があることで新しいアイデアが生まれ、進化させることができたという。

青山の旗艦店をアジア市場のゲートウェイに

ビジネスは、過去5年間で売上高が2倍に成長した。現在、グローバルではパリの直営店4店舗と青山店に加え、約80店舗へ卸販売しており、そのうち60店舗は日本だ。ヴェルメイユ加工を施したシルバージュエリーを中心に展開してきたが、25年にはファインジュエリーもスタート。シェネ特有の有機的なラインのアルファベットのジュエリーやアイコニックなイヤカフなどが、既存顧客および新客から支持されている。まだ始めて間もないが、ファインジュエリーは既に売上高の約3割以上を占めており、予想以上の反響に驚いている。「ブランドを知ってもらうきっかけになったのがヴェルメイユジュエリー。価格面もそうだが、ボリューム感など表現に幅を持たせるために継続する」と話す。ファインジュエリーを強化する一方で、ヴェルメイユの展開も継続し、ビジネスの割合を半々にしていきたいという。フランスと日本を軸に展開する中で、「東京には世界各国から多くの人が訪れる。表参道店をアジア市場のハブとし、成長につなげたい」と話す。日本では既にブランドの認知度もありビジネスも好調だが、アジアはまだまだ。「中国や韓国、アジア圏への拡大も視野に入れている。表参道店をきっかけに、ブランドの認知と理解を深めていきたい」。

“イット・ガール”のブランドではない価値を提供

シェネが「バレンシアガ(BALENCIAGA)」時代、ファッションデザイン手掛ける中で出合ったジュエリーは、彼女自身を表現するための“母国語”になった。彼女の中に湧き上がるクリエイティビティを体現しているのが自身のブランドだ。ブランドを始めた当時、今でいうインフルエンサー的な“イット・ガール”によるジュエリーブランドが多く登場。シェネは、「"イット・ガール”のブランドとは全く違うアプローチでブランドを始めた。力強いデザインとクラフツマンシップを軸に、長く支持されるブランドにしたい」と話す。

彼女は、高級ジュエラーから独立系ブランドまで、あらゆるブランドに対して興味津々だ。「素材となる宝石をはじめ、長く愛されるデザイン、技術面、ブランディングなどあらゆる面でまだまだ勉強中だ」と謙虚な姿勢を見せる。現在は地金とダイヤモンド中心の展開だが、これからは、色石などのさまざまな素材のジュエリー展開が増えていく可能性もあるという。金相場の高騰については、制約であると同時に学びの機会だと捉えている。「価格が上昇すればするほど、いかに他のブランドと違う価値を提供できるかが問われる。このような制約がある中でこそクリエイティビティーが磨かれる」。クリエイションおよびビジネスにおいて、シェネの挑戦は確実に次のステージへとつながっている。

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