ポーラ・オルビスグループで研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、東北大学が設立したイノベーション拠点「ZERO INSTITUTE」の第1号スポンサーとして参画した。従来の企業と大学が1対1で行う共同研究とは異なり、複数の企業・研究者が横断的に関わる「N対N型」の連携を通じて、有望な研究テーマへの早期関与と事業化検証を進め、R&Dの変革につながるイノベーション創出を加速させる。
「N対N型」で進める産学連携の新モデル
「ZERO INSTITUTE」は、東北大学が2025年7月に設立し、同年9月に本格始動した若手研究者のためのイノベーション拠点。世界で活躍する若手研究者を受け入れ、産業界との共創や社会実装、スタートアップ創出までを一体的に推進するプラットフォームとして位置付ける。
背景には、東北大学が24年12月に「国際卓越研究大学」第1号として認定されたことがある。同制度は、日本発で世界最高水準の研究力を育成するために設けられた枠組みで、大学の研究力強化と産学連携の高度化が求められている。
同拠点では、28年度までに100人規模の研究者集積を目標としている。渡邊拓ZERO INSTITUTE 副インスティテュート長によれば、「達成はほぼ確実な見通し」だという。こうした体制の下、企業は多様な研究プロジェクトへ横断的にアクセス可能となる。単一テーマの共同研究にとどまらず、異分野融合による新たな研究シーズ(テーマ)の探索や、事業化を見据えた検証を同時並行で進められる点が特徴だ。欧米のトップ大学における研究者のスタートアップ起業率は、起業が盛んな大学で約20〜30%とされるが、「ZERO INSTITUTE」は社会実装環境を整えることで、それに比肩する水準を目指す。
研究ネットワーク活用で新領域開拓へ
ポーラ化成工業は今回の参画により、こうした複数領域の研究ネットワークにアクセスし、研究開発の高度化を図る。同社の島貫智匡 執行役員 研究担当は、参画の背景について「29年の創業100周年を見据え、化粧品領域に加えて新たな価値創出が求められる中、次の一手を模索していた」と説明する。
ポーラ化成工業は、化粧品事業を母体としながら、今後はウェルビーイングや社会課題の解決にも事業ポートフォリオを拡大する方針だ。島貫執行役員は、「優秀な人材との出会いをいかに増やすかは、従来から大きな課題と捉えてきた。今回の参画は、その最適解になるのではないかと考えている」と話す。短期的には、化粧品とも親和性の高い健康・長寿やニューロサイエンスといった領域における新たな研究テーマの創出や技術シーズの獲得に期待を寄せる。中長期的には、「ZERO INSTITUTE」のグローバルネットワークを活用し、まだ顕在化していない課題にもアプローチしていく考えだ。
同社はこれまでも東北大学との連携を進めており、25年には同大学の国際放射光イノベーション・スマート研究センター内に「境界の融和」共創研究所を設立。化粧品製剤と肌・環境の相互作用を分子レベルで解明する研究に取り組んできた。
今回の「ZERO INSTITUTE」参画では、こうした設備・技術ベースの共同研究に加え、「知と知の掛け合わせ」による新たな価値創出に期待を寄せる。同氏は、「自身の母校でもある東北大学が国際卓越研究大学第1号に認定されたことを、非常に名誉に感じている」と語る。その上で、「ポーラ化成工業の参画が『ZERO INSTITUTE』の成功事例の第1号となり、その輪を広げていきたい」と意欲を示した。