
ユナイテッドアローズは11月7日付で子会社のコーエン(COEN)の全株式を、ジーイエット(旧マックハウス)に売却する基本合意を締結したと発表した。同日の決算会見で松崎善則社長執行役員CEOは、「2億〜3億円規模の赤字であれば今度こそ収益化できるはずだと、ここ数年もがいてきた。今もあと少し続ければ、という思いは正直ある。しかし当社としてはいまリソースの『選択と集中』を図るタイミングだと判断した」と述べ、苦渋の決断であることをにじませた。
「コーエン」は、ユナイテッドアローズのブランドエッセンスを携えながらもトレンドカジュアルをより手頃に提供することを目的に2008年に始動した。この年は「H&M」が日本に上陸し、ファストファッションが社会現象になった時期だった。同社にとっては郊外立地、低価格、小ロット・短納期といった新しい挑戦だった。9月にはリーマン・ショックが起こり、深刻な景気低迷に陥った。ファッション市場のデフレが加速する中で「コーエン」はデビューした。
一定の成長期はあったものの、コロナ禍を機に苦戦が続いていた。2025年1月期の売上高は104億円。松崎社長は「立ち上げ当初から多くの期待をいただき好調な期間も長く続いたが、小品番、大ロットのグローバルチェーンも含め競合と比較すると、ニッチになってしまっていたことで活路を見出せなくなっていった。また市場がよりクリーンモードやビジネスカジュアルへと変化する中でブランドとしての強みが商品面でも発揮できなかった」と要因を語った。
譲渡先にジーイエットを選んだ理由については、「親会社のジーエフホールディングスは物流を母体とした企業。当社では難しかったサプライチェーンのコスト面でシナジーが出せると判断した」と説明した。株式譲渡契約日は12月25日、株式譲渡日は2026年1月31日を予定する。
2025年4〜9月期の連結売上高は737億円"高感度”に手応え
同社の2025年4〜9月期の連結売上高は前年同期比8.0%増の737億円、うちユナイテッドアローズ単体は同9.0%増の683億円と好調な業績を維持している。上期はプロパー販売期間を長く設定した影響で8月にセール需要が膨らみ、売上総利益率は同0.4ポイント減の52.1%となったものの、既存店は客数・客単価ともに伸長した。
中価格帯のミッドトレンド領域では、主力の「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING)」に加えて、21年に始動した「シテン(CITEN)」も新たな柱として着実に成長している。
海外事業では、1月に中国本土初の直営店として開店した「ユナイテッドアローズ 静安嘉里中心店」の売上高が計画比30%増で推移した。「ユナイテッドアローズ」に加え、「エイチ ビューティー&ユース(H BEAUTY&YOUTH)」や「ロエフ(LOEFF)」など高感度ラインが、同エリアの富裕層から支持を得ている。今年9月には越境ECも開始した。店舗のない米国や韓国からの購入割合が高いことも踏まえ、「今後の出店や卸展開の可能性を感じている」という。